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定期的に安全対策や災害対策の見直しを-進出日系企業向けに実務セミナー開催-

(インドネシア)

アジア大洋州課

2018年02月14日

インドネシアでは近年、大型のテロ事件が少ないため、安全上の脅威を感じていない企業関係者も多い。しかし、直近でも爆発事件は起こっており、一般犯罪では日本人の強盗被害や殺人事件も起きている。近年のインドネシアでのリスクと安全対策について、専門家の講演などを基に報告する。

大都市は一般犯罪のリスクが高い

ジェトロは1月16日、進出日系企業向けの実務セミナーをインドネシアの東ジャワ州スラバヤ市で開催した。同セミナーで、総合セキュリティー会社CMSS(東京都千代田区)の齋藤芳リスクコンサルタントは、インドネシアの治安情勢と企業の安全対策について解説した。齋藤氏は2017年に、インドネシアの74カ所で安全状況の調査を実施し、その経験から「日本人駐在員にとってのインドネシアでの安全上のリスクは、被害に遭う可能性が高い順に、交通事故、一般犯罪、自然災害、テロなどがある」と語った。

まず、交通事故対策では、地場最大のブルーバードグループなど信頼できるタクシー会社の車に乗り、バイクタクシーや三輪タクシーは控えた方がよい。また、一般犯罪では、「ジャカルタやバンドンなどが危ない」(齋藤氏)とのことだ(表1参照)。大都市では強盗が多く、日本人の被害も多い。2018年1月20日にも、ジャカルタ特別州の州営バス車内で日本人男性がインドネシア人男性5人に刃物で脅され、財布を強奪される事件が発生した。タクシーなどに乗車した際に強盗に遭うケースも多く、特に「女性1人での乗車はリスクが高い」(齋藤氏)という。また、地方空港では無認可タクシー(白タク)も多いため、乗車は避けたい。

表1 インドネシアにおける一般犯罪の傾向
項目 大都市
(ジャカルタ、バンドンなど)
地方都市
(メダン、マカッサルなど)
島しょ部、開発途上地域
(鉱業・リゾート開発地など)
犯罪傾向
  • 強盗(タクシー強盗、パンク強盗、おのを使った強盗)
  • ひったくり
  • 置き引き
  • 集団犯罪
  • 車上荒らし
  • 薬物犯罪
  • スキミング
  • 大都市と共通の犯罪(ひったくり、パンク強盗、薬物犯罪)発生件数は少ない
  • 暴走族による襲撃(夜間)
  • 侵入犯(ドアや窓を破る、使用人による手引き)
  • ぼったくりタクシー
  • 人目に触れないところへの連れ去り(短期誘拐)
  • 置き引き
  • ひったくり
  • 薬物犯罪
その他の問題
  • 住宅街内での火災や停電
  • 交通事故
  • デモ、暴動(賃上げ要求、地方政治への抗議)
  • スピード超過による死亡事故
  • デモ、暴動(土地利権をめぐる開発への反対デモ)
  • 悪い衛生状態
  • マラリアなどの発生

(出所)CMSSの齋藤氏の講演資料

他の強盗の手口では、自動車をわざとパンクさせ、修理している間に車内から金品を盗むパンク強盗、自動車の窓ガラスをおのでたたき割るおの強盗、歩道橋を渡る際に刃物を突き付けて脅迫するケースなどがある。路上では常に前方を確認して注意し、「危ない場所や不審者には近づかないように心掛けるべきだ」と齋藤氏は話す。また、歩きスマホをしていた日本人がひったくりに遭うケースがスラバヤで2017年に発生している。

侵入犯罪では、使用人や警備員が手引きする事件が発生している。使用人や従業員による窃盗被害は比較的多い。2015年9月には日系企業に勤める日本人女性が、強盗目的で侵入してきたアパートの警備員に殺害された事件がジャカルタで発生した。ジェトロによる日系企業への聞き取り調査では、同事件などを受けて、アパートの警備体制を見直したり、運転手や警備員は委託せず、自社で雇用するといった対策を取る企業もあった。

避難訓練を実施し、避難バッグの用意を

自然災害については、日頃からの備えが重要だ。インドネシアは火山が多いため、噴火、地震、津波などが発生する。直近では2017年11月に、バリ島のアグン山が噴火した。洪水も雨期の11月から3月にかけて発生することがある。日系企業においては、避難訓練を定期的に実施し、避難経路を確認しておきたい。「訓練できていないことは、実際に起こった際に実行できない」と齋藤氏は警鐘を鳴らす。インドネシアは貧富の差が激しいため、災害が発生すると暴動や略奪に派生することもある。数日間の食料品の備蓄や、災害用のグッズをまとめた避難バッグを用意しておきたいところだ。

火災対策も必要だ。施設によっては、火災報知機を切ってあったり、消火器がさび付いていたり、クモの巣が張っていたりすることもある。「初期消火は3分以内に実施する必要がある」(齋藤氏)ため、消火器は使用期限内のものを常備し、ビルなどの場合は施設のオーナーに設置を要求する必要がある。

ジャカルタやバリ島、ロンボク島ではテロの発生リスク

インドネシアで近年発生したテロには、素人がイスラム国(IS)などのやり方をまねて実行する一匹おおかみ型のテロと、2016年1月にジャカルタ特別州の中心部(サリナデパート前)で起こったような組織型テロの2タイプがある(表2参照)。「見極めが大切」(齋藤氏)で、組織型テロの場合には、主に爆弾が使われ、被害が甚大になる傾向にあるとする。

表2 インドネシアにおけるテロの事例(2016~2017年)
時期 場所 事件概要
2016年1月 ジャカルタ サリナデパート付近(スターバックス前)で自爆テロと銃撃。7人死亡。
2016年3月 パプア州プンチャック・ジャヤ 銃乱射事件が発生。少なくとも4人が死亡。
2016年8月 メダン 少年がカトリック教会を襲撃、神父を刺傷。
2016年10月 バンテン州タンゲラン 男が警察官3人を刺傷。
2016年10月 ソロ 警察本部前で自爆テロ。警官1人が負傷。
2016年11月 東カリマンタン州サマリンダ キリスト教会に火炎瓶が投げられ、2歳女児が死亡し、3人が負傷。
2017年2月 バンドン 鍋爆弾が爆発。その後、警察との銃撃戦で犯人が射殺された。
2017年4月 東ジャワ州トゥバン 交通警察襲撃事件。実行犯6人が射殺され、1人が拘束された。
2017年5月 ジャカルタ バス停で自爆テロ。警察官3人が死亡し、10人以上負傷。
2017年6月 メダン 警察本部にテロ容疑者が侵入。警察官1人を刺殺。

(出所)CMSSの齋藤氏の講演資料

サリナのテロでは、ISILインドネシアが犯行声明を出している。イラクとシリアのISには110カ国から4万人以上が参加していたが、国別ではインドネシアからの参加人数が最も多く、2017年前半時点においても400人前後が戦線に加わっていた。220人がISに参加しようとして、トルコなどから本国送還されたという統計もある。ISが崩壊したことにより、戦線にいた過激派のテロリストがインドネシアに戻ってくる可能性も高い。

齋藤氏によると、過去にテロが発生したジャカルタやバリ島は「テロ発生リスクが高い」という。また現在、観光開発が進んでいるロンボク島は過激派が多いため、リスクが高いとにらむ。

インドネシアのテロの標的は、政府要人、警察庁舎・関係者、欧米系のホテルや飲食店などで、日本人が狙われるケースは少ないが、巻き込まれないように注意したい。齋藤氏は「うわさや情報は非常に大事で、日本人のほか、インドネシア人の話も常日頃から聞いておくべきだ」と指摘する。

齋藤氏の講演や日系企業への聞き取り調査の内容をまとめると、インドネシアで実行すべき対策は表3のようになる。日系企業においては、しっかりとした体制を組んでいる企業も多いものの、各企業によって危機意識にバラつきがあり、全く対策を施していないケースもある。問題や事件が表面化する前に、定期的に見直しをした方がよさそうだ。

表3 インドネシアで実行したい安全対策
対策 項目
一般犯罪、交通事故対策 バイクタクシー、三輪タクシーは使用しない。
信用できるタクシー会社を利用する(特に夜間)。
乗車中は全ドアのロックをする。
乗車中は外から荷物が見えないようにする。
乗車中はスマホの照明が目立たないようにする。
危険だと感じる地区や場所に近づかない。
住居では、ドアや窓の戸締まりに常に注意を払う。
自然災害、火災対策 避難訓練の実施。避難経路の確認。
津波に備えて、高台があるか確認。
家族との連絡手段の確保。
緊急時の連絡体制の整備。緊急時マニュアルの作成と更新。
食料(3日分)の備蓄。避難バッグを常備。
火災報知機、消火器の動作をチェック。
テロ対策 うわさや情報を収集する。現地人の話を日頃から聞いておく。
工場など施設の入り口では車止めを付ける。門は常に閉じておく。
工場など施設に監視カメラ、警備員を付ける。
工場など施設の入り口では自動車下部をアンダーミラーでチェックする。
窓に防爆フィルムを貼る。
標的となり得る施設(警察施設、欧米系ホテルなど)に近づかない。
ホテルは車止め、金属探知機、CCTV(監視カメラ)の有無を確認。上層階を選ぶ。
飲食店は路面店を避ける。

(出所)齋藤氏の講演内容や日系企業への聞き取り調査を基に作成

(北見創)

(インドネシア)

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