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サブサハラに物流網、ECの可能性も探る-アフリカ経営トップインタビュー-

(モロッコ)

ラバト発

2018年01月16日

モロッコ運輸・物流公社(SNTL)グループは、同国最大の物流・ロジスティクス会社で、サブサハラアフリカへの物流網を幅広く構築している。さらに、タンジェを国際物流のハブとして機能させることや、アフリカにおける電子商取引(EC)の可能性を探るなど、将来を見据えたビジネスを展開している。グループの中核SNTLサプライチェーンのフアッド・クティブ副社長に活動の状況や今後の展望などについて聞いた(2017年10月12日)。

公社を民営化して設立された物流会社

モロッコの首都ラバトと経済の中心地カサブランカを結ぶ高速道路を走っていると「SNTL」と大きく書かれた物流倉庫が目に飛び込んでくる。モロッコ運輸・物流公社(SNTL)グループはモロッコ人なら誰もが知る大企業だ。2007年に運輸公社に民間資本を導入して設立され、公社時代を含め80年にわたり国内外の運輸・ロジスティクスの中心的役割を担ってきた。グループが力を入れているのがサブサハラアフリカ地域へのサービス拡大だ。グループのビジネスは、船舶管理、保険・金融、インフラ・都市開発、技術面の研究開発など多岐にわたるが、今回は、グループの中核として国内外のサプライチェーンを担うSNTLサプライチェーンに話を聞いた。

SNTLサプライチェーンは、モロッコで物流の担い手としての地位を確立しており、国内に計21万平方メートルの物流倉庫を持ち、約300社の顧客と600社の事業パートナーを抱え、30の拠点を構えている。クティブ氏は同社がモロッコで唯一、川上から川下まで一貫した物流チェーンを担える企業だと自負する。国内では、カサブランカ近郊のゼナータとジブラルタル海峡に接する北部のタンジェに大型物流倉庫を構え、顧客にはルノー、トヨタ、矢崎総業、イケア、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、マルジャン(モロッコ最大手食品スーパー)など大手企業が多い。

治安や決済面などがサブサハラ進出の障壁

アフリカ大陸では20カ国に代理店を持ち、17カ国18のパートナーと提携、サブサハラアフリカ地域の半数以上の国をカバーしている。同地域には、イスラム圏に属する国が多いという文化的親和性や、モロッコの大手銀行・保険会社がサブサハラアフリカに広く進出しており金融インフラが整っていることが進出を手助けしているという。

サブサハラアフリカでのビジネス活動の難しさを聞くと、まず挙がったのは治安面と決済面だ。治安面は言うまでもないが、決済面においてはビジネス取引における決済方法の確立が課題だという。取引を開始できても、支払いの遅延などによる想定外の負債を抱える可能性は多分に残るという。この問題に対して、SNTLサプライチェーンは進出しているモロッコの銀行や保険会社とパートナーシップを結び、事業に臨んでいる。

次に挙げられたのは、インフラの整備状況だ。空路は主に国営ロイヤル・エア・モロッコのネットワークを利用するので問題はないが、陸路は高速道路の未整備や道路の質の悪さなど、物流企業にとって大きな問題が立ちはだかっている。この問題に対しては、長期的な視野の下、イスラム開発銀行グループのITFC(International Islamic Trade Finance Corporation)と協力し、インフラ開発の支援に取り組んでいる。

また、鉱業、土木建築、金融などの分野が発展している西アフリカ地域にも注目しており、現在11カ国において物流プラットフォームの設置に向けた可能性調査を実施している。物流でしばしば問題となるコールドチェーンの整備は、まだこれからだ。モロッコ国内では冷蔵・冷凍品の輸送サービスの整備を進めているが、依然として適切な温度で管理できるトラックが不足していることや現場での取り扱いなど課題が多いという。モロッコよりも物流インフラの整備が遅れているサブサハラ地域では、コールドチェーンの整備は優先事項ではなく、物流ビジネスそのものの構築から始めている状況だ。例えば、セネガルではジャガイモの取り扱いがメインで、包装技術の質的向上が当面の課題だという。

目指すは大陸を越えた物流のハブ

SNTLグループが目指すのは、モロッコ北部のタンジェに物流ハブを作ることだ。地中海のコンテナ物流の約8割が通過するタンジェ港は、欧州に近いという利点を生かし、欧州向け物流の玄関口として重要な地位にある。今後はアフリカ大陸を含む各大陸向け貨物の取り扱いを増やしたいという。2016年に、タンジェのフリーゾーンであるタンジェ・メッド港を基点に各大陸間の物流サービスを強化すると表明したところ、フランスのスポーツ用品製造・販売大手デカトロンは、海外から調達する自社商品のグローバル物流拠点を同港に設置し、フランス本国およびロシア、セネガル、コートジボワール、南アフリカ共和国、コロンビアなどに向けて、約650万点の商品供給をスタートしている。クティブ氏は日本企業に対して、デカトロンのようにタンジェの地理的優位性やフリーゾーンという優遇制度を生かし、ヨーロッパ大陸のみならずアフリカ大陸、さらにはアメリカ大陸向けの国際物流ハブを模索してほしいと語った。

このほか、中国とアフリカをECでつなぐプロジェクトを構想中だ。今後同分野が伸びていくと見込み、西アフリカ地域をはじめ、エジプトやジブチでこうした新たな物流サービスの実現に向けた調査を実施しているという。

サブサハラアフリカはビジネス活動を行う上で障壁が多いことは確かだが、SNTLグループはモロッコのアフリカ政策の一翼を担い、他国企業に先駆けてアフリカ市場に切り込んでいる。物流は金融と並び「経済の血脈」と例えられるが、SNTLグループのような物流企業の発展は、アフリカ進出日系企業のビジネスの手助けとなり得るだろう。

SNTLサプライチェーンのフアッド・クティブ副社長(同社提供)

(井上尚貴)

(モロッコ)

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