併催と合わせ130カ国12万人超の関係者が参加-世界最大の医療機器見本市「メディカ」開催(1)-

(ドイツ)

ヘルスケア産業課、デュッセルドルフ発

2018年01月17日

世界最大の医療機器見本市「メディカ(MEDICA)」が2017年11月13~16日、ドイツ・デュッセルドルフで開催された。展示会の様子を2回に分けて報告する。前編は展示会の特徴や変化するEUの医療機器規制の動向について。

併催の医療機器・部品見本市と合計で約6,000社が出展

11月13日から16日にかけて、ドイツ西部のデュッセルドルフで世界最大の医療機器見本市「メディカ(MEDICA)」が開催された。主催はメッセ・デュッセルドルフ(注1)。診断や治療に使用する医療機器のほか、病院設備、医療情報通信技術(ICT)、介護やスポーツ用品など、医療・健康に関わる幅広い製品や技術が紹介された。併催された医療機器技術・部品見本市「コンパメッド(COMPAMED)」と合わせて約6,000社が出展し、130カ国から12万3,500人の代理店や医療関係者らが訪れた(注2)。

出展企業数は、1位がドイツ(1,244社)、2位が中国(877社)、3位が米国(524社)。これらに、イタリア(407社)やフランス(296社)、英国(252社)、韓国(224社)が続く。日本は過去最多の178社出展で9位。世界中の国・地域から出展者と来場者が集まるのが、この展示会の特徴だ。

日本の製品・技術に世界中の代理店などが関心

ジェトロが設けたジャパンパビリオンには、日本各地から過去最多の26の中小医療機器メーカーなどが出展し、耐久性や安全性の高さ、患者負担の軽減、使いやすさ、精度の高さなどにおいて世界的に定評のある日本の製品・技術が幅広く紹介された。一般家庭でも使える血流を改善する寝具や排せつ予知デバイスなど、世界的に関心が高まっている生活習慣病や介護関連製品に注目が集まり、世界中の代理店や医療関係者が関心を寄せた。

ジャパンパビリオンには主に、日本製品の取り扱いを希望する各国の代理店や病院関係者らが訪れ、4日間で2,000以上の具体的な商談が行われた。ジャパンパビリオン出展者の報告を集計したところ、来場者の出身国・地域をみると、全体の4割近くが欧州、2割が中東、東アジアと南アジアがそれぞれ1割程度となった。そのほか、ASEAN、ロシア、中南米などからも来場した。欧州市場を目指す企業はもとより、まだターゲット市場を絞れていないが、さまざまな国の反応を見たい企業にとって、メディカへの出展は有効だ。

写真 来場者でにぎわうジャパンパビリオン(ジェトロ撮影)

新規代理店の発掘や最新市場動向の把握、製品の評価確認の場

メディカには3つの重要な機能がある。まずは世界各地の新規代理店発掘の場としての機能だ。出展した日本企業は「まだ開拓できていない市場の有力な代理店候補企業と多く出会えた」「中小企業単独では日本からコンタクトが難しい国の代理店と、直接商談ができた」と振り返る。

第2に、世界医療市場の最新動向を把握する場としての機能がある。各社は「競合他社の動向や、市場での評価に関する情報を得た」「出展することで医療を取り巻く世界市場の大きさを肌で感じ、日本にいるだけでは分からないニーズを把握できた」とメディカを評価する。

最後に、来場者である世界中の医療専門家からの評価を通して自社製品の市場における立ち位置を確認する場としての機能がある。「世界中の人から、当社製品のフィードバックを得ることができ、製品の強みや弱点が分かった。製品の改良につなげたい」「海外市場の反応を見て、製品の新たな可能性を見いだすことができた」と、各社は出展での手応えを感じたようだ。

なお、次回のメディカは2018年11月12~15日、同じくデュッセルドルフで開催の予定だ。

過渡期にある欧州の医療機器規制

医療機器をEUやトルコで流通させるには、欧州の医療機器指令への適合宣言をし、製品にCEマークを表示(CEマーキング)しなければならない。また近年、新興国を中心に、現地の法律上の要件として定められていなくても、CEマーキングの有無を実態として要求される傾向がある。新興国では、CEマーキングが製品の安全性・有効性の証しとして捉えられるからだ。

こうしたことからメディカでも、商談相手が欧州の企業であろうとなかろうと、効率的に商談を行うためには、CEマーキングが完了していることが重要になる。未対応の場合でも、近々その手続きを行う旨を説明することが望ましい。CEマーキング未対応で、将来においても対応する意思がないと、素晴らしい製品を持っていたとしても代理店はついてこない。

CEマーキングの手続きは現在過渡期にある。医療機器を欧州経済領域(EEA:EU28カ国とノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランド)で流通させる際に、順守が求められる新たな医療機器規則(Medical Device Regulation:MDR)が2017年5月26日に発効した。適用範囲となる医療機器が拡大するほか、メーカーへの要求事項が増え、特に市販後の安全管理や臨床試験、臨床評価が強化される。

MDRに基づく審査体制がまだ整備されていないため、新規則に基づく申請を行うにはもう少し時間がかかる。移行期間中、欧州に医療機器を出荷しようと考える企業は、以前からある医療機器指令(Medical Device Directive:MDD)と、新たなMDRのどちらに基づいても認証が可能だ。しかし、医療機器メーカーは2020年5月26日以降、従来のMDDに基づく第三者認証を受けられなくなる点に留意が必要だ。2020年5月25日までにMDDに基づく認証を完了していれば、当面は欧州市場への出荷が可能だ(注3)。

医療機器認証に詳しい専門家によると、MDRの具体的なガイダンスや適合規格がまだ十分でないことから、近々新製品を欧州に出荷したい場合には「当面はMDDで早めに手続きを完了させるか、あるいは、時間がかかる場合にはMDRの下でのルールが整うまで認証手続きを様子見にすることが多いようだ」と話す。

世界各国では、保健当局による医療機器の販売に先立つ登録規制を強化する動きが加速している。現地代理店との密接な情報交換やセミナーへの参加などを通じて、常に現地への製品展開に要する最新の情報を入手することが重要だ。

(注1)日本国内の窓口はメッセ・デュッセルドルフ・ジャパン。

(注2)メディカには66カ国の5,100社の医療機器メーカーなどが出展し、コンパメッドには35カ国の部材メーカーなど約800社が出展。会場総面積は26万2,700平方メートル、使用ホール数は19。

(注3)MDDに基づくCEマーキングのための認証書類の有効期限、欧州市場での販売、製品使用期限は以下のとおり。詳細は医療機器規則〔REGULATION(EU)2017/745〕外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

1.MDDに基づくCEマーキングのための認証書類の有効期限(MDDに基づく適合宣言で、欧州市場への製品出荷が可能な期限)

(1)2017年5月25日より前のMDDに基づく製品に対する認証は、認証期限いっぱいまで有効。ただし、MDDの付属書4に基づく「EC検証」と呼ばれる適合手続きを用いた認証の有効期限は、最長でも2022年5月26日までとなる。

(2)2020年5月25日までの3年間を移行期間とし、この期間中にMDDに基づきCEマーキングが完了した製品の認証は最長5年有効。ただし、有効期限は最長で2024年5月26日までとなる。

2.MDD認証に基づく欧州市場での販売、使用期限:MDD認証に基づき市場へ出荷された製品は、最長2025年5月27日まで市場での販売、使用が可能。

(宮崎アナスタシア、一二三達哉)

(ドイツ)

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