最低賃金を平均5.5%引き上げ-労組はビジネスコスト増加が解雇につながる可能性を指摘-

(パナマ)

メキシコ発

2018年01月31日

政府は2017年12月26日、最低賃金について大企業で6.5%、中小企業で4.5%、総平均5.5%の引き上げを行うことを発表し、2018年1月1日から適用した。これに対し労働組合側は、雇用者側のビジネスコストの増加による労働者解雇と失業率の上昇や、インフォーマル就労の増加の可能性を指摘している。

最低賃金は大企業で6.5%、中小企業4.5%の上昇

政府は12月26日、最低賃金の改定を発表した。大企業で6.5%、中小企業で4.5%の引き上げとなった。2017年1~9月の実質GDP成長率が5.6%となったパナマの経済成長や、パナマ運河の通行料の値上げに伴う消費者物価指数の上昇を根拠としている。パナマの最低賃金は、パナマ労働法により2年に1度改定されると定められており、今回の改定の対象期間は2019年12月31日までとなる。

最低賃金の決定に当たっては、実業界、労働者、政府それぞれの代表から成る最低賃金委員会が設けられ、そこで政府代表が調整役となり実業界と労働者の代表者間で交渉が行われるが、この委員会で新たな最低賃金が合意されることは近年なく、政府が最終的に新最低賃金を決めるのが通例となっている。今回の改定については、2017年8月16日に委員会が設置され交渉が開始されたが、例年にたがわず実業界と労働者間で合意に至らず、最終的に12月26日の閣議で大統領令第75号が承認された。

最低賃金は地域、業種、企業の規模別に定められる。地域は、パナマ市やコロン市などの主要地域が「地域1」、「地域2」は「地域1」以外で、ダリエン州と先住民自治区が当たる。業種別では、地域1で20業種、地域2で13業種の合わせて33業種に対し最低賃金が定められる。一方、企業の規模別では、農業と牧畜関連企業、サービス業または小売業では社員数が10人未満、製造業では社員数が15人未満、そして農産品加工業では社員数が20人未満の会社が中小企業と区分され、これを超える会社が大企業と区分される。主な新最低賃金は表のとおり。

表 主な業種の最低賃金(月給)(単位:バルボア)
職種 地域1 地域2
大企業 中小企業 大企業 中小企業
小売業販売員 530.40 429.00 434.85 358.80
ウエイター 555.75 429.00 456.30 360.75
農業季節労働者 364.65 298.35 364.65 298.35
ホテルの接客業務 530.40 440.70 434.85 364.65
カジノ従業員 651.29 ― 651.29 ―
医療技術者 612.30 ― 612.30 ―
国内バス運転手 612.30 ― 612.30 ―
倉庫、配送業など 530.40 ― 434.85 ―
コロン・フリーゾーン内労働者 612.30 ― ― ―

(注)月45時間労働した際の給与。1バルボア=1ドルの固定レート。
(出所)パナマ労働開発省

失業率の増加、インフォーマルセクター拡大を懸念する声

今回の最低賃金上昇に関しては、逆に労働者を苦しめることになるとの指摘もある。パナマ産業労働者組合は、ビジネスコストの増加などの経済状況を無視した賃上げは企業の競争力をそぎ、人員の削減や失業率の上昇、インフォーマル就労者の増加をもたらす可能性があると指摘している(「パナマ・アメリカ」電子版2017年12月27日)。パナマ会計検査院の年次報告書によると、2017年のインフレ率は前年比0.9%程度にとどまっている。その中での平均5.5%の賃上げは企業にとっては大きな負担になるとみられる。

会計検査院の年次報告書によると、過去5年間におけるパナマのインフォーマル就労率は右肩上がりを続け、2016年では40.2%に達した。また、フォーマルセクターに属する一般企業の社員でも、社会保険などに加入していないインフォーマル社員は2016年では8万7,736人に上る。パナマ主要紙「ラ・プレンサ」(2016年12月22日)によると、大型のインフラプロジェクトなど正規の業務が終了した後、業務の減少によって正規社員でも季節労働者化してしまうことが、インフォーマル就労の増加要因だと指摘している。

(岩田理)

(パナマ)

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