上海市、2017年の高等教育機関卒業者の初任給は7.9%増

(中国)

上海発

2018年01月17日

上海市人力資源・社会保障局の発表によると、上海市の2017年の高等教育機関卒業者(高専・短大・大学卒以上)の初任給(月収ベース)は前年比7.9%増の5,386元(約9万1,562円、1元=約17円)となった。キャリア志向の強い1990年以降に生まれた「90後」の離職率が引き続き高く、企業には優秀な人材を確保するための新たな対策が求められている。

新卒の就職率は96.9%に上昇

上海市人力資源・社会保障局(以下、人社局)は12月、上海市学生事務センターと共同で2017年の上海市高等教育機関卒業者の就職状況を発表した。新卒17万4,000人の就職率は96.9%と、前年より0.4ポイント上昇した(表参照)。

表 上海市高等教育機関卒業者の賃金水準(単位:万人、元、%)
卒業年 卒業者数 就職率 給与(月額)
初任給 前年比 1年後 前年比
2015年 16.7 94.7 4,672 5,659 21.1
2016年 17.1 96.5 4,990 6.8 6,236 25.0
2017年 17.4 96.9 5,386 7.9

(出所)上海市人力資源・社会保障局の発表

進学や出国、他省市での就職を除き、上海市で就職した約9万人の新卒者を対象に行ったサンプル調査によると、初任給は前年比7.9%増の5,386元で、うち、高専卒が4,068元、学部卒が4,793元、大学院卒が8,001元だった。初任給は2015年の調査開始以降、2年連続で増加した。

「就職活動の際、何を基準に会社を選んだか(複数選択)」の質問に対しては、「キャリアを伸ばせる」(62.8%)の回答が最も高く、次に「報酬・福利厚生」(62.6%)となった。他方、「企業規模」や「企業知名度」などに対する関心は低く、ともに10%を下回った。

「就職活動において最も困難だったこと(複数選択)」については、「ビジネス経験が乏しい」(48.8%)が最も多く、2番目の「企業が求める能力を備えていない」(29.8%)を大きく上回った。即戦力を求める中国企業は、新卒者に対しても、インターンシップなどによって少しでもビジネス経験を持つ人材を優先的に採用する慣習があるためだ。人社局はその対策として、条件を満たす大学生を対象とした職業訓練や、職業体験への補助金支給などの支援策を行っている。

就職1年後の賃金上昇率は25%

人社局が2017年7月に発表した2016年の上海市高等教育機関卒業者に対する調査によると、2016年の新卒者の就職1年後の平均月収は6,236元と、初任給の4,990元に比べて25.0%増加した。業種別でみると、金融業が34.2%増の8,216元で最も高く、次いで教育業が57.0%増の7,908元だった。

一方、若者のキャリア志向は、人材の流動性の高さの1つの要因となっている。2016年新卒者の1年以内の離職率は21.1%と、前年より2.6ポイント上昇した。離職の最大の理由は「昇進、昇給の余地」で全体の38.8%を占めた。前述の「就職活動の際、何を基準に会社を選んだか」との問いに対する回答として最も多かったのは「キャリアを伸ばせる」だった。企業として、優秀な人材をつなぎとめておくために、明確なキャリアパスを提供することが必要になっている。

(劉元森)

(中国)

ビジネス短信 66e3e233d1803f2c