化粧品などへのマイクロプラスチックの使用を禁止-政府が今後25年間の環境計画を発表-

(英国)

ロンドン発

2018年01月26日

英国政府は1月11日、環境保護に関する今後25年間の環境計画を発表した。同計画には、レジ袋有料化の対象範囲拡大や、英国のEU離脱(ブレグジット)後の環境政策を監視するための独立機関の設立などが盛り込まれた。政府は同計画の発表前に、海洋汚染の原因となるマイクロプラスチックの、化粧品などへの使用禁止を発表している。

レジ袋有料化は大きな手応え

政府は1月11日、今後25年間の環境計画を発表した。テレーザ・メイ首相は同計画について、「次の世代のために環境を保護し、自然の恵みを享受する包括的かつ長期的な取り組み」とし、ブレグジットに関して「数十年にもわたって環境政策の最も重要な手段を管理してきたEUを離脱するに際し、われわれが自然環境を保護し、維持する取り組みを強化する良い機会だ」と述べた。マイケル・ゴーブ環境・食糧・農村地域相は「われわれの環境計画は今後25年間で、海洋や河川を窒息させる廃棄物を大幅に削減し、汚染物質が漂う空気を浄化し、最も貴重な野生動物が繁栄する新しい生息地をつくり出す方法を示している」と説明した。加えて、「この計画を通じて、誰もが享受できる環境をつくり、次世代の繁栄を支援し、(英国は)環境保護の世界的リーダーとしての評価を確立する」と同計画の位置付けを述べた。

同計画は、政府が今後の25年間で、プラスチックの使用抑制、野生動物繁栄のための生息地確保、環境保護の世界的リーダーとなること、EU離脱後に英国独自の環境保護の政策を構築する「グリーンブレグジット」、住宅開発に当たって事業者の負担を増やすことなく環境保護を進めること、自然に親しむ学校の創設と国立公園の管理体制や運営の評価といった取り組みを実施するとしている。今回の計画で大きく取り上げられているプラスチックの使用抑制では、レジ袋の有料化の適用対象を拡大する。2015年10月から実施されたスーパーマーケットのレジ袋を1枚当たり5ペンスとする有料化は、従業員250人未満の小売店が適用除外となっていたが、今回の計画ではそのような比較的小規模な小売店にも有料化の適用が見込まれる。政府は、2015年のレジ袋有料化後、英国でのレジ袋の利用数を85%削減できたと手応えを感じ、今回の拡大に踏み切った。

野生動物繁栄の実現については、50万ヘクタールを新しい生息地として確保し、イングランド北部に5,000万本以上を植林する「ノーザン・フォレスト」プロジェクトに570万ポンド(約8億8,350万円、1ポンド=約155円)が拠出される予定だ。

また政府は、ブレグジットを、EUの監督から離れて新しい環境政策を作成する機会と捉えている。そこで、ブレグジット後の環境政策に関して、政府や自治体へ助言や監視を行う独立機関を新しく創設することなどを通して、離脱後も環境保護を維持、さらには増進させるグリーンブレグジットの実施を図る。

マイクロプラスチックの販売禁止は2018年後半の見込み

政府は、同計画発表の2日前にマイクロプラスチックを含む製品の生産禁止を発表し、同計画でも触れている。マイクロプラスチックは、5ミリ以下のプラスチックの粒子で、歯磨き粉や化粧品、洗顔料に含まれ研磨剤として広く利用されている。一方で、その粒子の小ささのため下水処理の段階で取り除くことが難しく、海洋に流出し、海洋生物の体内に蓄積して海洋環境を破壊することが問題視されている。英国下院が2016年に公開した「マイクロプラスチックの環境への影響」によると、15兆~51兆個のマイクロプラスチックが海洋中に漂っており、毎年8万~21万9,000トンが欧州から海へ流出している。政府は、マイクロプラスチックは天然由来の物質で代替可能としており、マイクロプラスチックを含む製品は2018年後半には販売禁止になる見込みだ。

環境・産業団体は同計画を歓迎

英国環境サービス協会(ESA)のジェイコブ・ヘイラー会長は、同計画を歓迎した。ただし、「対策の多くは消費者に集中し過ぎている。リサイクル材料の大きな需要がある時のみ、真の循環型経済が実現できる」とし、英国のリサイクル材料市場を発展させるためには、政府の断固とした行動が必要だとした。

エナジーUKのローレンス・スレイド最高責任者は「われわれは、環境と持続可能な未来への政府の取り組みを歓迎する」とし、「われわれの産業は、低コストで、よりクリーンな発電をする上で大きな進歩を遂げており、さらなる進歩のためには、政府が変化をうまく乗り越えるための支援を継続しなければならない」とした。

また、マイクロプラスチックの生産禁止については、英国の化粧品事業者団体CTPAのクリス・フラワー会長が政府の禁止発表前に支援を表明している。「プラスチックの海洋汚染は深刻だが、化粧品産業が寄与するプラスチックによる汚染への影響は0.29%と非常に小さく、政府の計画が残り99.7%に対処することを歓迎する。海洋環境のマイクロプラスチックを低減させるためには、個人・産業の双方が、プラスチックによる汚染の主要な原因に対処し、プラスチックの使用と再利用の仕方を見直す必要がある」として、マイクロプラスチックだけでなく、プラスチック資源全体への取り組みの必要性を訴えた。

(鵜澤聡)

(英国)

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