EEUの関税基本法が1月1日に発効-電子化で通関手続きの効率化を目指す-

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

欧州ロシアCIS課

2018年01月09日

1月1日、ユーラシア経済連合(EEU)域内で関税基本法が発効した。通関手続きを電子化することで効率化を図るとともに、ヒューマンエラーなどを抑制する。

ヒューマンエラーなども抑制

EEU加盟国であるキルギスのソオロンバイ・ジェエンベコフ大統領は2017年12月30日、EEU関税基本法の国内批准に関する法律に署名した。既に他の加盟国(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア)は国内批准手続きを終了しており、キルギスの手続き完了を受けて、2018年1月1日に同法がEEU域内で発効した。

関税基本法の導入で大きく変わるのは通関手続きの電子化だ。今後、外国貿易の関係者は通関手続き関連の文書について、税関に対して紙形式での提出を拒むことができる。通関申告者はインターネットを経由し税関のシステムに直接データ入力を行う。電子署名の登録により申告から貨物の引き渡しまで大部分の手続きがネット上でできるようになるほか、輸出入時の検査対象貨物はリスク管理システム(RCS)により任意に選定される。EEUの事務局であるユーラシア経済委員会は、電子化を進め、作業の効率化とヒューマンエラーや税関職員の恣意(しい)的な判断を少なくする、と説明する。

税関のシステムに入力された情報は必要に応じ関連政府機関やEEU加盟国税関と共有されるため、同じ情報を複数の機関へ別途提出する必要がなくなり、関連機関による個別審査が並行して行われる。貨物の引き渡し許可もRCSが検査不要と判断した場合は、通関申請登録が行われた時点から4時間以内に許可を出さなければならないと規定している。また、これまで輸入者と輸出者のみが対象となっていた認定事業者(AEO、注1)が、輸送業者、倉庫業者、通関業者などに拡大された。このほか、HSコード、貨物の課税標準価格の事前決定制度の導入、税関へ提出した書類のRCS審査前までの修正、知的財産権保護を目的とした統一税関登記簿の導入などが認められた(注2)。

関係者の関税基本法への理解を深め、導入直後の混乱を避けるため、ロシア税関は2017年第4四半期に各地方税関で同法に関する説明会を開催した。また、各税関に「ホットライン」を開設し、関係者からの問い合わせに対応する体制を取っている。

EEU域内からは経済効果を期待する声

関税基本法の発効により、プラスの経済効果を期待する声が多い。ベラルーシ商工会議所のウラジミル・ウラホビチ会頭は「(EEU域内)市場内での通関障壁が下がることによって、輸出企業を中心にビジネスに新しい可能性が生まれる」と述べたほか、キルギス商工会議所輸出物流委員会のクバト・ラヒモフ委員長は、同基本法の施行により中国からの模倣品流入への対策が強化され、地場企業の競争力が向上するだろうとコメントしている。

在ロシアの日系企業にとっても、通関手続きの簡素化は大きな関心事項の1つだ。2017年10~11月にジェトロが実施した「ロシア進出日系企業実態調査」(回答企業92社)によると、「通関などの諸手続きが煩雑」と答えた企業は51.1%、「通関に時間を要する」と答えた企業が35.9%となっている。また、「ロシア当局の通関制度改善に関する取り組みの過去1年の状況」について、日系企業の半数近くが「変わらない」と回答している。新たな関税基本法の導入により手続きの簡素化が着実に進めば、日系企業のロシアでのビジネス環境の改善につながると期待される。

(注1)Authorized Economic Operatorの略。セキュリティー管理とコンプライアンスの体制が整備された者として、税関の承認を受けた事業者を指す。

(注2)関税基本法の概要については、ジェトロのウェブサイトPDFファイル(445KB)に掲載している。

(高橋淳)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

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