2020年10月までに国内線搭乗では無効に-カリフォルニアなど23州の運転免許証や身分証-
(米国)
サンフランシスコ発
2018年01月10日
カリフォルニア州をはじめ23州が発行している運転免許証や身分証が、2020年10月までに米国内線の航空機に搭乗する際の身分証として認められなくなる。ニューヨーク州などでは2018年1月22日からになる可能性もあり、カリフォルニア州陸運局では、同日から連邦基準の身分証「リアルID(運転免許証・ID)」の申請を受け付ける。
カリフォルニア州は連邦基準のリアルID発行へ
9.11同時多発テロを受けて、安全対策強化の目的で成立した「正当な身分証明法(リアルID法)」は、連邦統一基準での運転免許証や身分証(ID)の発行を各州に義務付けている。同法は2005年に成立したものの、個人情報漏えいの恐れや財政負担を理由に導入に反対する州政府もあり、施行が延期され続けてきた。国土安全保障省(DHS)は施行に向けて段階的に取り組みを進めてきており、最終施行期限を2020年9月30日と定めている。
2017年12月28日現在、全米の28州でリアルID法に準拠した対応が完了しているものの、同法に準拠した運転免許証やID(リアルID)を発行していない州では施行に向け対応に追われており、カリフォルニア州では1月22日からリアルIDの申請を受け付ける。
現在、カリフォルニア州を含む12州(注1)と首都ワシントンでは、不法移民にも運転免許証が発行されているが、リアルIDの発行対象者は米国市民や永住権を持つ移民、各種ビザを持つ合法的な外国人居住者で、不法移民は対象外となる。また、国内線航空機の搭乗以外に、米軍基地や連邦政府施設、原子力発電所に出入りする際にもリアルIDの提示が求められる。
2020年を待たずに必要となるケースも
DHSは2020年9月30日を最終的な施行期限としているため、いずれの州においても18歳以上の成人は同年10月1日以降、国内線航空機への搭乗に際してはリアルIDか、運輸保安局(TSA)が認める身分証(表1参照)が必要になる。
身分証 | 備考 |
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各州発行のリアルID | リアルID法に準拠していない州またはDHSによって施行延期申請が認められていない州が発行する運転免許証やIDは2018年1月22日から国内線の搭乗時の身分証として使用不可。カリフォルニア州は1月22日からリアルIDの受付を開始するが通常の運転免許証・IDも引き続き発行する方針。他方、リアルIDしか発行しない州もある。 |
米国パスポート | なし |
米国パスポートカード | カナダ、メキシコ、カリブ諸島、バミューダ諸島と米国間陸路・海路でのみ利用可能な旅券。財布に入るカードサイズ。 |
DHS認定トラベラーカード (グローバルエントリー、ネクサス、セントリ、ファスト) |
事前申請・審査を経てカード(有料)を取得した場合、国境や空港における保安検査場や税関検査を優先して通過できる。 グローバルエントリー:国際間 ネクサス:米国カナダ間 セントリ:米国メキシコ間 ファスト:米国カナダ間、米国メキシコ間を運転する商業トラックドライバー向け |
永住者カード(グリーンカード) | なし |
DHS指定エンハンスド・ドライバーズ・ライセンス(Enhanced Drivers Licenses) | 運転免許に加え、カナダ、メキシコ、カリブ諸島から米国に入国(陸路・海路)するための米国市民用身分証。2009年に導入されたが、無線自動識別チップが埋め込まれているためプライバシー保護の観点から反対する声も。カリフォルニア州では2015年に導入法が成立したが、ブラウン州知事が拒否権を発動、発行されていない。現在発行している州はワシントン州、ニューヨーク州など。 |
外国政府発行のパスポート | なし |
(出所)国土安全保障省(DHS)ウェブサイト、カリフォルニア州立法情報ウェブサイト
ただし、2018年1月22日から、TSAが認める身分証のうちリアルID法に準拠していない州またはDHSによって施行延期申請が認められていない州が発行する運転免許証とIDは、国内線の搭乗時の身分証として使用できなくなる。このため、現在、施行延期申請が審査中のニューヨーク州などでは、1月22日までに延期申請の許可が下りなければ、同州などの住民は同日から国内線航空機の搭乗時にリアルIDかTSAが認める身分証が必要になる。
現在、カリフォルニア州においては施行延期が2018年10月10日まで認められている。住民への影響なども考え、最終施行期限の2020年10月まで延期申請を引き続き行っていくとみられるものの、同州が延期申請をしない、あるいは申請をしても認められなかった場合は、最後に認められた期限以降は、リアルIDまたはTSAが認める身分証の提示が求められることになる。
「申請は任意」とカリフォルニア州は強調
リアルIDの発行開始後は、従来の免許証・IDを発行しなくなる州もある一方で、カリフォルニア州では引き続き発行する予定だ。リアルIDがなくてもパスポートやグリーンカードなどTSAが認める身分証を携行すれば国内線航空機の搭乗は可能で、また、運転免許証や社会保障を受ける際の身分証としてリアルIDは必要ない。同州陸運局はウェブサイト上で「リアルID申請はあくまで任意」と明記している。
また表1にあるように、2009年に国務省とDHSが導入し、ニューヨーク州など(注2)が発行する「エンハンスド・ドライバーズ・ライセンス」があれば国内線搭乗時にリアルIDは必要ない。
頻繁に飛行機を利用する人や搭乗のたびにパスポートなどを携行したくない人にとっては、リアルIDに切り替える利点はある。なお、申請する場合は、州によって申請開始日や料金などが異なる。カリフォルニア州の申請料金は、従来の免許証・IDと同じだが、モンタナ州では通常の更新期間でなければ高くなり、オクラホマ州のようにリアルIDは免許証・IDより高い州もある。また、カリフォルニア州では従来の運転免許証の更新はオンラインでも行えるが、リアルIDに切り替える場合は陸運局に出向いて申請することが求められている(表2参照)。
証明書類 | 書類の具体例 |
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身分証明となるもの | 米国出生証明書、米国パスポート、労働許可証、永住カード、外国政府発行のパスポートと承認済みI-94(合法な一時滞在を証明する入出国記録) |
社会保障番号(SSN)を証明するもの | SSNカード、W-2(確定申告用の年収・税金明細)、SSNが明記された給与明細 |
カリフォルニア州での居住を証明できるもの | 光熱費の請求書、賃貸契約書、住宅ローン請求書、病院にかかった際の記録など |
氏名変更を証明できるもの(申請する場合のみ) | 婚姻許可証など |
(注)証明書類は原本もしくは認証謄本を提出する必要がある。
(出所)カリフォルニア州陸運局ウェブサイト
(注1)カリフォルニア州、コロラド州、コネティカット州、デラウェア州、ハワイ州、イリノイ州、メリーランド州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ユタ州、バーモント州、ワシントン州。
(注2)ニューヨーク州、バーモント州、ミシガン州、ミネソタ州、ワシントン州。
(田中三保子)
(米国)
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