メルコスール、政府調達協定に調印-EUとのFTA交渉は継続-

(南米南部共同市場<メルコスール>)

サンパウロ発

2018年01月04日

南米南部共同市場(メルコスール)の第51回首脳会合が12月21日に開催され、域内の政府調達に関して域内企業に対する無差別を保障する政府調達協定に調印した。他方、EUとの自由貿易協定(FTA)交渉は12月11~13日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたWTO閣僚会議での合意には至らなかった。対EU交渉は2018年上期の議長国パラグアイを団長とするチームに委ねられる。

政府調達入札で域内企業を差別せず

今回調印された協定は「メルコスール公共契約協定」と呼ばれ、内容はブラジル外務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載されている。協定の正式発効は加盟4カ国での議会批准が必要だが、段階的に「相互主義の原則に基づき」発効するとしている。なおパラグアイについては、発効初年度は他の加盟国より緩やかな条件になるとしている。

協定の目的は、域内各国の政府調達入札について、域内各国の企業に公平に公開し、国内企業と同等の扱いと手続きを確保し、障壁を禁止することにある。ブラジルの複数メディアによると、対象はブラジル通貨換算で50万レアル(約1,700万円、1レアル=約34円)以上の財・サービスと2,000万レアル以上の公共事業で、医薬品や国防関係の調達は例外となるほか、州政府や公営企業の公共調達も対象となっていない。メルコスールはEUとのFTA交渉でも政府調達の交渉を進めており、そのベースとなる域内での政府調達協定の合意を先行させる必要があった。

域内中央政府の調達規模を600億レアルと試算

ブラジル全国工業連盟(CNI)は、地方政府、国営企業を含むメルコスール全体の公共調達規模を年間800億ドルと試算している。またブラジル政府は、メルコスール4カ国の中央政府の調達規模はその4分の1弱の年間600億レアル、うちブラジルが3分の2程度と試算している。

ブラジルなど南米諸国はいずれも、地方政府を含む政府機関などの財・サービスの調達において内国民待遇や無差別待遇を規定したWTOの政府調達協定(GPA)を締結していない。ブラジルでは入札法(1993年法律第8666号)で規定されているが、ルセフ前政権(急進左派の労働者党)は、繊維、履物、医薬・医療品、道路建設、IT技術サービスなどを産業振興策として、国内企業を政府調達で優遇してきた。公共入札では、国内企業は外国企業の応札額より最高で25%高額な応札価格でも落札が可能だ。今回の協定では、中央政府の調達において一部例外分野を除きメルコスール域内企業は同等のメリットを受けることになる。

EUとのFTA農業分野の交渉は2月が山場か

メルコスール首脳会合後の会見でブラジルのテーメル大統領は、パラグアイを議長国とするメルコスールは準備が整っており、22年間停滞していたEUとのFTA合意は2018年上半期に可能だと信じていると強調した。また、欧州委員会のフィル・ホーガン委員(農業・農村開発担当)は12月20日にブリュッセルで開催された会議で、メルコスールとの農業分野の交渉は15の難題を抱えているとしつつ、2018年2月の交渉で合意に至る可能性を示唆している。

ブエノスアイレスで12月に開催されたWTO閣僚会議時にEUとの大筋合意に至らなかった理由の1つは、EU側が提示した牛肉の無関税枠が7万トン、エタノールの無関税枠が60万トンにとどまっていることだ。特に牛肉の無関税枠はフランスやアイルランドの抵抗もあり、EUが2004年に提示した10万トンを下回ることとなり、メルコスール側を失望させた。12月8日のブリュッセルでの最終事前交渉でも新たな提案は示されず、政治的合意は難しい状況となっていた。

(大久保敦)

(南米南部共同市場<メルコスール>)

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