ブレグジットに伴う移行期間は2020年12月末まで-欧州委、EU理事会に勧告-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年12月22日

欧州委員会は12月20日、EU理事会に対し、英国のEU離脱(ブレグジット)に関する今後の交渉に向けた協議に着手することを求める勧告を行った。欧州委は同勧告の中で、移行期間中に英国がEU単一市場(関税同盟)に残留できる前提条件として、EU加盟国と同様の義務を負うが、EUへの発言権は失うことになるとした。その移行期間も、2020年12月末までに限定すべきとした。

交渉第2段階における留意事項を明らかに

欧州委は12月20日、ブレグジット交渉を第2段階に進めるためのガイドラインが欧州理事会(EU首脳会議)で12月15日に採択されたことを踏まえて、EU理事会に対して、今後の交渉に向けた協議に着手するよう勧告を行った。また、欧州委が移行措置(期間)などを含む交渉の第2段階に着手するためには、EU理事会からの追加の交渉権限委任(マンデート)が必要なことから、EU理事会に追加の交渉指令案を送付し、その採択も併せて求めた。

欧州委は、交渉指令案のポイントとして以下の4点を含むとした。

(1)基本原則=「いいとこどり」は認めない

英国は(移行期間中)、「EUの4つの自由」の保障を前提にEU単一市場および関税同盟に残留する。この間、英国はEU法体系をEU加盟国と同様に完全に順守する。(新たな法制度を含めて)EU法体系に変更が生じた場合、これらは自動的に英国にも適用される。

(2)既存秩序への準拠

このほか、EUとしての制度、財政(予算)、司法などの全ての統治機構は英国にも適用され続ける。これにはEU司法裁判所の管轄権も含まれる。

(3)EU加盟国としての権利停止

2019年3月30日午前0時(ブリュッセル時間)をもって、英国はEUにとっての「第三国」になる。これに伴い、英国はEU諸機関、EU専門機関などの関連組織での代表権を失う。

(4)移行期間は2020年12月末まで

移行措置(期間)については明確に定義付けを行い、時間的には限定されたものであるべき。欧州委として移行期間は2020年12月31日で終了すべきと勧告する。

2018年1月のEU一般問題理事会で追加交渉指令を採択へ

今後のEU側での協議は、欧州理事会が採択したガイドラインに基づき、交渉第1段階での合意事項を「離脱協定」に忠実に織り込むことを中心に進むものとみられる。また欧州委は、これまで英国と交渉していない「離脱協定」のガバナンス(国際合意としての運営・管理)の在り方などについても協議すべきとしている。

追加の交渉指令は、2018年1月に開催予定のEU一般問題理事会で採択される見込みだ。

なお、欧州のエレクトロニクス産業を代表するデジタルヨーロッパは12月20日、こうした交渉第2段階に向けたEU側の取り組みを歓迎する声明を発表した。デジタルヨーロッパは2017年3月から欧州自動車工業会(ACEA)や欧州家庭電機機器製造業委員会(CECED)、欧州中小企業連盟(ESBA)、欧州手工業・中小企業連合会(UEAPME)などと共に、「ブレグジットに関わるブリュッセル・非公式ネットワーク」を立ち上げ、ブレグジットに伴うビジネス環境の混乱回避、ソフトランディングを共通課題として、毎月、意見交換・ネットワーキングを行っている。

デジタルヨーロッパとしても、こうした会合を通じて、今後もEU・英国双方の交渉関係者に働き掛けを行うとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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