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人材確保が最大の課題に、日EU・EPAに高まる期待-2017年度欧州進出日系企業実態調査(2)-

(欧州)

欧州ロシアCIS課

2017年12月05日

ジェトロの「2017年度欧州進出日系企業実態調査」では、経営上の最大の課題として「人材の確保」が浮上した。回答企業の6割超を占める英国、ドイツ、オランダ、中・東欧諸国での労働市場の逼迫がその背景とみられる。2016年調査で最大の課題だった「欧州の政治・社会情勢」は、スペイン・カタルーニャ州の独立問題や英国のEU離脱(ブレグジット)交渉の先行き不透明感から、2番目の課題となった。7月に大枠合意した日EU経済連携協定(EPA)について、「メリット大」とした割合は54.3%(前年度比16.5ポイント増)に達し、利用への期待が高まっている。日本からの輸入関税の削減・撤廃を挙げる企業が8割近くあった。連載の後編。

在英日系企業の事業「拡大」比率が低下

今後1~2年の事業展開の方向性について、欧州全体で「拡大」と回答した企業は51.2%、「現状維持」が45.1%、「縮小」が3.1%、「第三国(地域)へ移転・撤退」が0.6%だった。国別にみると、イタリア、ポーランドで「拡大」の割合が前年調査に引き続き70%以上だった。英国では「拡大」(34.7%)の割合は1.8ポイント低下し、スイス(22.2%)に次いで低かった。

英国のEU離脱に向けた動向は、欧州全体の今後1~2年の事業展開の方向性にはまだ大きく影響していないようだ。在英日系企業(特に非製造業)で「拡大」の割合が低下する一方、「縮小」は5.7%と前年からわずかに上昇した。「縮小」の理由として、「ブレグジットの影響により、一部業務の欧州経済領域(EEA)への移転を検討中」といった回答がみられた。

拡大する機能として「地域統括機能」を選択した企業数が多い国順でみると、英国は3位(8社)で、前年(9社)より1社減った。英国は2015年には19社で最多だったが、EU離脱を決定した国民投票が実施された2016年以降、「地域統括機能」を拡大しようとする在英日系企業数は10社を下回っている。

将来の有望な販売先としては、2014年以降、「トルコ」「ロシア」を選択する企業数および比率が低下する一方で、「ドイツ」を筆頭に、西欧、中・東欧の国々の比率が増加傾向にある。EUの対ロシア経済制裁、トルコの政治情勢、欧州の景気回復などを背景に、欧州が販売先として見直される傾向にあるようだ。

「人材の確保」は過半数の企業が課題

経営上の問題としては、2016年調査で2番目だった「人材の確保」が51.7%(前年比3.9ポイント増)を占め最大の課題に浮上した(表参照)。回答企業の65%を占めるドイツや英国、オランダ、中・東欧諸国での労働市場の逼迫が、この項目を最大の経営上の問題に押し上げたようだ。また、国別でみると、「人材の確保」の回答比率が高いハンガリー(85.7%)、デンマーク(83.3%)、チェコ(68.4%)では、製品・サービスの高付加価値化・差別化のために、「技術者の人材育成強化、増員など」に取り組む企業の割合も高く、デンマーク、ポーランド(69.0%)、チェコでは、過去1年間の現地従業員数を「増加」させた企業の割合が高かった。

表 経営上の問題点(上位15位、複数回答可)

2016年調査で最大課題だった「欧州の政治・社会情勢」は48.8%と0.9ポイント上昇したが、「人材の確保」を下回った。2017年は主要国での選挙を乗り越えたものの、個別事情でこの項目の割合が大きく上昇した国もあり、全体の回答比率がわずかに押し上げられた。カタルーニャ州の独立問題で緊張が高まったスペイン(82.9%)、EU離脱交渉が始まった英国(64.7%)では最大の課題となった。

2016年調査で「人材の確保」と同率で2番目の課題だった「不安定な為替変動」は30.9%と16.9ポイント減少した。2016年比で為替の変動幅が縮小したことが背景にある。また、新たに回答の選択肢として設けた「EU一般データ保護規則(GDPR)」は26.3%で、2018年5月からの適用開始を控え、9番目の経営課題として認識され、特に在ベルギー日系企業では最大の課題となった。

中・東欧全体では、「労働コスト上昇率の高さ」(74.7%)が前年比34.9ポイント増で最大の課題となった。2016年の名目賃金上昇率は、ブラチスラバ、ワルシャワ、プラハで前年比3%台、ブダペストやブカレストでは7~9%台だったことが日系企業の経営においても課題として受け止められているようだ。

日EU・EPA最大のメリットは関税削減・撤廃

EUが交渉を進める経済連携協定/自由貿易協定(EPA/FTA)の影響については、7月に大枠合意した日EU・EPAについて「メリット大」とする割合(54.3%)が最も大きく、回答企業数は400社と前年から107社増えた。特に中・東欧では「メリット大」(70.4%)の割合が高く、非製造業に絞ると77.3%に達した。また、「メリット大」を選んだ理由として、「関税削減・撤廃(日本からの輸入)」を挙げる企業が最も多く、303社(78.5%)に達した。

英国のEU離脱後の、将来的な日英EPAの可能性については、「メリット大」の割合は欧州全体で14.3%にとどまった。在英日系企業に絞った場合でもこの割合は26.7%で、日EU・EPA(45.1%)と比較しても低かった。在英日系企業においても、日EU・EPAのメリットの方が日英EPAより高いとの結果が示された。

在EU日系製造業の部品・原材料の調達先(国・地域別)について、各企業の回答(金額ベース)の平均を算出すると、「日本」からの平均調達率は前年比2.2ポイント増の31.2%、非製造業を含めた在EU日系企業の全業種における「日本」からの平均調達率は34.4%(前年比2.2ポイント増)とさらに高い。日EU・EPAの関税削減・撤廃効果が一層期待されるところだ。

在英日系製造業では、「英国」からの平均調達率が25.2%である一方、「英国除くEU」からの調達率も18.4%あり、英国のEU離脱により英国・EU間の取引に関税が課されることになる場合にはその影響が懸念される。

なお、調査結果の詳細については、「欧州進出日系企業実態調査(2017年度調査)PDFファイル(14.2MB)」参照。

(深谷薫、田中晋)

(欧州)

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