米国、アルゼンチン産バイオディーゼルに相殺関税適用-税率は約72%、2018年1月から5年間-
(アルゼンチン、米国)
米州課
2017年12月25日
米国際貿易委員会(USITC)は12月5日、アルゼンチン産バイオディーゼルによる国内業界への被害を最終認定した。これにより2018年1月~2022年12月の期間、約72%の相殺関税が賦課されることになった。アルゼンチン政府は12月13日付官報で政令を公布し、米国政府に「補助金」と見なされた制度を廃止し、2018年1月からバイオディーゼルに8%の輸出税を課すこととした。なお、原料となる大豆および大豆副産物の輸出税は同月から2019年12月まで毎月0.5ポイントずつ削減される予定だ。
米国は「輸出補助金」と見なし課税を決定
12月5日、米国際貿易委員会(USITC)は、アルゼンチンがバイオディーゼル(HS3826.00.10)に「輸出補助金」を出して輸出を進め、米国内のバイオディーゼル産業へ被害を与えていると最終認定した。これにより11月9日に米商務省が最終決定していた相殺関税の賦課が確定した。課税期間は2018年1月~2022年12月の5年間で、エル・ディ・シー・アルヘンティーナに72.28%、ビセンティンには71.45%、その他の輸出者には71.87%の相殺関税が課されることとなった。
米商務省は国内業界団体からの要望を受けて、3月23日付で相殺関税調査を開始した。調査対象は長鎖脂肪酸モノアルキルエステルの100%のもの(B100)および30~99%のもの(B30~B99)。
米国におけるアルゼンチン産バイオディーゼルの輸入額は、2015年の3億3,960万ドルから、2016年には8億570万ドルと増加した(表1参照)。2017年も1~10月期では7億3,860万ドルと、前年のペースを上回っている。シェアも毎年1位となっている。
国 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
輸入額 | シェア | 輸入額 | シェア | 輸入額 | シェア | |
アルゼンチン | 339.6 | 50.5 | 805.7 | 59.3 | 738.6 | 77.2 |
カナダ | 131.5 | 19.5 | 257.9 | 19.0 | 200.4 | 20.9 |
韓国 | 40.5 | 6.0 | 41.9 | 3.1 | 10.1 | 1.1 |
ドイツ | 8.9 | 1.3 | 24.6 | 1.8 | 6.2 | 0.7 |
フランス | 0.1 | 0.0 | 1.4 | 0.1 | 1.3 | 0.1 |
その他 | 152.3 | 22.6 | 227.1 | 16.7 | 0.2 | 0.0 |
合計 | 672.8 | 100.0 | 1,358.8 | 100.0 | 956.9 | 100.0 |
(注)2017年は1~10月の実績。HS3826.00.10。
(出所)グローバル・トレード・アトラス
アルゼンチンは8%の輸出税を課税
米政府に「輸出補助金」と見なされた制度は、国内のバイオディーゼル市場価格のモニタリングと統制を目的に、左派のフェルナンデス前政権時代の2012年9月に創設された(政令1719号/2012)。他方、エネルギー・鉱業省の補助金で価格が抑えられたバイオディーゼルは、同時に輸出競争力を得ることとなり、原料の大豆油を輸出するより有利になることがあった。当初は国内市場価格の統制という目的だったものの、マクリ政権が輸出拡大政策へ転換したこともあり、現行制度が米政府に「輸出補助金」と見なされたかたちだ。これまで恩恵を受けてきた国内業界団体から反対の声もあったが、現政権は現在の国内外の市場環境を反映していないとした。加えて大豆油(大豆副産物)の輸出税率(2017年は27%)との差を縮めるため、2018年1月1日からバイオディーゼルの輸出時に8%の定率輸出税を課すことを決定した(政令1025号/2017)。
米国の代替輸出先としてEUを狙う
アルゼンチンの主なバイオディーゼルの輸出先は米国とEUだったが、EU向けは2013年からアンチダンピング(AD)税が課され、輸出が落ち込んでいた。しかし、WTOの上級委員会で勝訴し、2017年9月からAD税が撤廃されたのを受け、アルゼンチンは米国の代替輸出先として本格的にEUを狙うとしている。AD税を課していた2016年のEUのアルゼンチン産バイオディーゼルの輸入実績はゼロだったが、2017年は10月時点で6,270万ドル(シェア7.9%)の輸入額を記録している(表2参照)。
国 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
輸入額 | シェア | 輸入額 | シェア | 輸入額 | シェア | |
マレーシア | 305.3 | 83.0 | 257.0 | 59.8 | 384.2 | 48.4 |
中国 | 0.5 | 0.1 | 21.6 | 5.0 | 154.7 | 19.5 |
ノルウェー | 2.9 | 0.8 | 31.1 | 7.2 | 68.6 | 8.6 |
アルゼンチン | 4.4 | 1.2 | 0.0 | 0.0 | 62.7 | 7.9 |
ボスニア・ヘルツェゴビナ | 2.7 | 0.7 | 8.5 | 2.0 | 30.8 | 3.9 |
その他 | 52.3 | 14.2 | 111.5 | 26.0 | 92.8 | 11.7 |
合計 | 367.9 | 100.0 | 429.7 | 100.0 | 793.8 | 100.0 |
(注)2017年は1~10月の実績。HS3826.00.10。
(出所)グローバル・トレード・アトラス
ちなみに、2015年12月にマクリ政権が発足し、2017年の大豆と大豆副産物の輸出税はそれぞれ、35%から30%へ、32%から27%へ引き下げられた(表3参照)。この2品目については2018年1月1日から毎月0.5ポイントずつ2019年12月まで段階的に削減され、最終的には18%と15%まで引き下げられる予定となっている。
品目 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年以降 |
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大豆 | 30.0 | 29.5~24.0 | 23.5~18.0 | 18.0 |
大豆副産物 | 27.0 | 26.5~21.0 | 20.5~15.0 | 15.0 |
(注)2018年1月から毎月0.5ポイントずつ2019年12月まで削減。
(出所)アルゼンチン農産業省(政令1343号/2016)
(志賀大祐)
(アルゼンチン、米国)
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