日系医療機器メーカー、衛生監督庁と官民対話-審査平準化と迅速化の取り組みで説明受ける-

(ブラジル、日本)

サンパウロ発

2017年12月13日

12月8日、在ブラジル日系医療機器メーカー5社と日本大使館、ブラジル日本商工会議所、国際協力機構(JICA)およびジェトロは共同で、国家衛生監督庁(ANVISA)と官民合同対話を行った。ANVISAは、港湾における通関審査の平準化と短縮化に向け、認定事業者(AEO)制度との互換性を検討していることや、適正製造規範(GMP)の監査待ちの企業向けに監査が実質不要となる手続きを進めている点について説明した。

メディカル分科会が提言書まとめ協議

ブラジルでは2013年に、ブラジル日本商工会議所の分科会としてメディカル分科会が発足した。これは日系医療機器メーカーが当地でビジネスを展開する上で困っている点を取り上げ、ANVISAと日本の医療業界との協力関係を深めようとするもので、2014年8月に安倍晋三首相が公式訪問した際、日本・ブラジル双方の政府が医療保健分野で協力する旨で合意している。そうした合意などを基に、日本側は厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、ジェトロ、医療関係業界団体などが、ブラジルにおける審査の効率化と迅速化に向けた協力を行ってきた。その成果もあり2014年以降、製品登録にかかる審査手続きは迅速化してきている。

ただ、ブラジルでは第三者認証機関による適正製造規範(GMP)審査が開始されてから1年ほどしか経過しておらず、運用などの面で十分に円滑なものとなっていない。さらに、港湾での審査にばらつきがみられ、審査時間が予測できない、モデルチェンジを行っていない製品でも有効期限を過ぎればレポートの提出を求められるなど、ブラジル独自の煩雑で高コストの手続きが存在する。そこで2016年、メディカル分科会では特に企業から改善要望の高い5つの項目を基に日本の厚労省、経済産業省からも了承を得て提言書のかたちでまとめ、ANVISAと協議を行っている(提言書は添付資料参照)。

提言書の主なポイントは以下のとおり。

(1)医療機器の中で電気電子部品などが内蔵されている製品はINMETRO(注)が指定する電気試験レポートの提出が求められる。同レポートの有効期限は2年で、製造業者はモデルチェンジがない場合であってもその都度テストの再実施が必要。審査に時間を費やすだけでなく、高コスト化につながっているため、モデルチェンジのない製品についてはレポート有効期限の撤廃、モデルチェンジがある場合は変更部分のみのレポート提出を認めるなど、EUなどの基準に合わせてほしい。

(2)港湾におけるインポートライセンス審査にかかる時間が、時期や場所によって大幅に異なる。審査の平準化と迅速化を検討してほしい。

(3)ブラジルは、クラスIIIやIVに分類される製品に対し求められるGMP監査において、審査の順番待ちだけで3年以上かかる。ANVISAが認めた第三者機関による監査は非常に高額。また2015年から2016年にかけて、ブラジルは、オーストラリア、カナダ、米国、日本とともに医療機器単一監査プログラム(MDSAP)パイロットプログラムに参加。同プログラムは2016年末に終了しているが、監査のさらなる簡略化および迅速化に努めてほしい。

(4)事業拡大などに伴い移転する際、ANVISAによる企業活動許認可(AFE)を取得する必要がある。取得には地方自治体などが発行する数種類に及ぶ書類などの取得が必要で、最終的にAFEを得るまでに1年ほどの時間を要することから高コスト化、事業が滞る要因になっている。暫定AFE発効などの検討をお願いしたい。

GMP監査待ち企業への監査はケース・バイ・ケース

ANVISAでマネジャーを務めるデニウソン氏は(1)について、本件について定めた庁令(Portaria)54は施行・運用されてから2018年で2年となるため改定される予定で、その際のパブリックコメントに是非意見を投じてほしい、と話した。また、電気試験レポートの有効期限2年については現段階で改定の予定はないものの、本法律を管轄するINMETRO担当者と直接協議することを勧めるとコメントした。

また、(2)については2017年8月からインポートライセンス審査短縮のための新システムが導入されており〔サービスガイダンス(ポルトガル語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照〕、混雑している港を避け、サンタカタリーナ州フロリアノポリスの港などへ審査が転送されていた。ただ、輸入実績のない他のANIVSA事務所および職員がチェックすることで通常より時間がかかったケースもあり、全体として審査時間は短縮化しているものの、引き続き改善が必要であることを認めた。さらなる平準化と迅速化を目指し、現在ANVISAでは必要提出種類の数を減らしたり、AEO制度との互換性を持たせたりすることを検討しているという。ちなみにブラジルでは、2015年からAEO制度の認定制度がスタートしている。

GMP監査については、監査までの待ち時間に数年を要していることを認めた上で、現在審査待ち状態となっている諸外国に所在する製造設備を含む全ての企業を対象に、2017年10月17日付RDC183外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを活用してほしいと述べた。この法律は既に施行されており、条項(Article)4に記載されている全ての書類およびArticle8に掲載されているI~IVの第三者機関が作成した監査報告書を提出することで実質審査不要となる可能性がある。Article8に掲載されている第三者機関とは、MDSAPの結果を踏まえGMP監査認証機関として認められている9つの機関など〔リスト(ポルトガル語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照〕。なお、これらを提出しても最終的にANVISAが「監査が必要」と判断する可能性がある点に留意が必要だ。同法の有効期限は2017年12月20日で、同日までに全ての必要書類をANVISAに提出する必要がある。なお、書類不備、追加書類が必要な場合は120日以内に再提出する猶予が与えられる。

AFEについては、監査の権限が各州や市に移譲されていることもありANVISA独自で判断することはできないが、将来的にAFEを暫定的に発行することも検討するとの回答が得られた。

(注)国家度量衡・規格・工業品質院。商工サービス省所管の連邦政府機関。

(辻本希世)

(ブラジル、日本)

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