スマートマニュファクチャリングに高い関心-第19回中国国際工業博覧会(2)-

(中国)

上海発

2017年12月11日

上海市で11月7~11日に開かれた第19回中国国際工業博覧会(工博会)では、スマートマニュファクチャリングが重要なテーマとなった。中国企業は産業ロボットの導入で産業構造の高度化を図る一方、産官連携でスマートマニュファクチャリングを推進している。ベンチャー企業のスピンオフに積極的な大学や研究機関も増えている。連載の後編。

産業ロボットの需要が急増

近年、中国の製造業はデジタル化、情報化などスマートマニュファクチャリングにシフトしている。

写真 工業オートメーション(IAS)展の出入口(ジェトロ撮影)

スマートマニュファクチャリングに関連する展示スペースは、産業ロボット(RS)と工業オートメーション(IAS)のそれぞれ2つのホール、情報・通信技術の応用(ICTS)のホールのほか、CNC工作機械やコネクテッドカーなどを含むと全12ホールの約半数を占めた。生産コストの高騰などにより産業高度化の重要性を認識した中国企業が増え、スマートマニュファクチャリングへの関心が高まった結果といえそうだ。

ある外資系ロボットメーカーの担当者は「増産への対応を進めているが、中国企業は調達をまとめて行う慣習があるため、生産が追い付かない状況が頻発している」と需要の急増ぶりを強調した。工博会のガイドブックによると、産業ロボットを出展したのは282社で、前回(227社)に比べて24%増えた。また、ファナック、ドイツKUKA、スイスABB、安川電機はいずれも大きな展示ブースを設けていた。

 写真 ファナックの展示ブース(ジェトロ撮影)

工業情報化部は企業と連携し、スマートマニュファクチャリングを推進するモデルプロジェクトの成果を工博会で展示している。同省はスマートマニュファクチャリング技術を応用して生産ラインを改良する計画を打ち出し、2015~2017年にはそれぞれ46件、63件、97件のプロジェクトを選び、デジタル化、省エネルギー化などによる低コスト・高品質の製品生産を目指している。

大学・研究機関も事業化に積極的

また、産学連携でスマートマニュファクチャリング技術などの事業化に力を入れている大学や研究機関が増えている。工博会の科学・技術革新(STIS)ホールには大学エリアが設置され、上海交通大学をはじめ68校が出展、大阪市立大学や台湾の大学も2校含まれていた。

総合研究と自然科学の最高研究機関である中国科学院は近年、ベンチャー企業のスピンオフに積極的に取り込んでいる。AIチップ開発の寒武紀科技は11月上旬、3年後に中国で高性能プロセッサーのシェア3割獲得を目指すと発表した。起業支援で設立された同社は8月の初融資で1億ドルを調達し、世界のAIプロセッサー分野で初めてのユニコーン企業(時価総額10億ドル以上で非上場のベンチャー)になったという。

写真 出展大学の掲示板(ジェトロ撮影)

(劉元森)

(中国)

ビジネス短信 7591f80f7e988dff