日系企業向けに「リスクマネジメントセミナー」開催

(アフリカ、南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発、中東アフリカ課

2017年12月14日

ジェトロは11月10日に南アフリカ共和国のヨハネスブルクで、アフリカ地域の最新情勢と見通しを進出日系企業向けに解説する「リスクマネジメントセミナー」を、経済産業省の新興国補助金事業の一環として開催した。日系企業を中心に50人強の参加者があった。

アフリカの今後の懸念事項を指摘

セミナーでは2人の専門家が講師となり、今後の課題や見通しなどを解説した。

まず、国際安全保障研究所(ISS)のヤッキー・シリアーズ理事長が「2035年のアフリカに向けた傾向」と題して講演した。同研究所は米国デンバー大学のパルディセンター(PARDEE Center)と連携して、セキュリティーや人材開発などを長期的な視野で調査している。

シリアーズ氏は、今後のアフリカでの懸念事項などを主に6点指摘した。1点目は、人口増加が経済・社会開発を上回るペースで加速することだ。アフリカの人口は2035年までに18億人になると見込まれ、健康や教育などのサービスに対するニーズが急増する可能性がある。2点目は、2035年にかけて貧困人口が増えると予想されることだ。貧困は世界的には減少の方向にあるが、アフリカでは絶対数が増えるとみている。3点目として、アフリカの都市化は必ずしも経済成長に寄与しないことを指摘した。

4点目は、アフリカがグローバルバリューチェーンに参画するのは引き続き難しいこと。5点目として、紛争や暴力は複雑化し、各国で選挙に伴う混乱が散発するとみられることや、テロや組織犯罪も予防が困難で、若者の関与が懸念されることを挙げた。6点目に、民主主義は引き続き主流となるだろうとした。

南部アフリカ地域の見通しとしては、全般に電力アクセス、衛生、水供給などは不足傾向にあるとした。農業生産も需要を下回り、食料事情は天候に左右される状況が続く。

南アの政治については、12月に予定される与党・アフリカ民族会議(ANC)総裁選は、(1)ラマポーザ副大統領の勝利、(2)親ズマ派と反ズマ派の妥協、(3)さらなるポピュリズムの3パターンを予想し、現時点ではラマポーザ副大統領が優勢とした。

写真 講演する国際安全保障研究所(ISS)のヤッキー・シリアーズ理事長(ジェトロ撮影)

セキュリティーリスクの傾向を解説

次いで、TSUインターナショナルのクリス・ビュークス代表が、「アフリカにおける拡大する脅威」と題して講演した。

ビュークス氏は近年のリスク傾向を指摘し、例えば南アでは直接的な脅威は少ないとみられるが、国家横断的なテロが増えつつあり、海賊の動向にも留意が必要とした。また、アフリカへの移民流入に伴い、犯罪は複雑化するだろうとし、政治的安定性や汚職・賄賂も各国で懸念されると述べた。特に南アにおいては、労働争議や黒人の経済力強化(BEE)政策などの問題があり、現地パートナー選びも重要となってくると指摘した。

セキュリティー対策の傾向としては、外資関連企業の進出、訓練や戦略性の欠如などを挙げた。セキュリティー上の予防策として、犯罪組織や個人の分析、情報収集や加工などセキュリティーインテリジェンスの重要性を説き、出張時のセキュリティーツールの活用例として、携帯電話やショートメッセージサービス(SMS)を利用した安全情報の確保などを紹介した。

その上で、脅威と事件への対応能力、意思決定のためのデータ分析、内外のパートナーシップ構築、個々の事情に応じたリスク管理や信用調査の重要性を指摘した。

参加者からはANC総裁選や貧困人口の拡大などについて質問があり、今後の政治・社会情勢に高い関心が示された。

(蓑和希典、小松崎宏之)

(アフリカ、南アフリカ共和国)

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