一部の電機・電子製品の内国税を即時・段階的に撤廃-新ビジネスの創出と産業力強化が目的-
(アルゼンチン)
米州課、ブエノスアイレス発
2017年12月12日
アルゼンチン政府は11月28日、一部の電機・電子製品に対する内国税の即時撤廃および段階的削減・撤廃を発表した。この措置は同国における製造業への優遇と、スマートフォンなどを活用した中小企業やスタートアップ企業の新ビジネス開拓に寄与することを目的に設定された。また、ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンでは内国税を即時撤廃する。本政令は2017年11月15日に施行された。なお、同州政府は競争力維持のため、労働者の賃金上昇率を2年間凍結させる方針。
国内のビジネス開拓へ障壁を取り除く
11月28日、アルゼンチン政府は政令979/2017において、一部の電機・電子製品に対する内国税の即時撤廃および段階的撤廃を発表した。アルゼンチンでは消費財の購入や役務の提供時に、付加価値税(IVA)に加えて内国税(Impuestos Internos)を支払う。同税は法律24674によって定められており、品目によって税率が異なる。対象品目はたばこ(75%)、アルコール飲料(8~20%)、宝石・貴金属類(20%)、自動車(10~20%)、二輪車(0~10%)、電機・電子製品(17%)などだ。高付加価値品に対する税で、奢侈(しゃし)税とも呼ばれている。
本政令では、ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンで製造される財に対しての内国税を、2023年末までの時限付きで現行の6.55%(基本税率17%の38.53%を課税)から0%とする(表1参照)。アルゼンチンのそれ以外の地域での製造の場合は、17%から10.5%に引き下げられ、その後、段階的に削減される。10月31日に大統領府が発表した税制改革案によると、内国税を0%にすると提案されており、2024年には0%になると見込まれる(注)。対象品目は表2のとおり。
場所 |
2017年 11月14日まで |
2017年 11月15日以降 |
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 |
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ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーン | 6.55 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | ― |
上記以外のアルゼンチン国内 | 17.0 | 10.5 | 10.5 | 9.0 | 7.0 | 5.5 | 3.5 | 2.0 | 0.0 |
(注1)政令1234/07はティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンの有効期限を2023年12月31日と定めている。
(注2)対象品目については表2に掲載しているNCMコードを参照。
(出所)官報(政令979/2017)、2017年10月31日付大統領府発表の税制改革案
NCMコード | 品目名称(6桁レベル) |
---|---|
8415.10.11 | エアコン(セパレート型) |
8415.10.19 | エアコン(その他のもの) |
8415.81.10 | 冷却ユニットおよびバルブ(消費電力が3キロワット以下のもの) |
8415.82.10 | その他(冷却ユニットを自蔵し、消費電力が3キロワット以下のもの) |
8415.90.10 | エバポレーター(室内用) |
8415.90.20 | コンデンシングユニット(屋外用) |
8516.50.00 | 電子レンジ(オーブン付き) |
8517.12.21 | 携帯電話(GPS機能付き) |
8517.12.31 | 携帯電話(GPS機能がないもの) |
8418.69.40 | 冷蔵庫(消費電力が3キロワット以下のもの) |
8519.81.90 | 音声再生機器 |
8521.90.90 | DVD・ビデオチューナー |
8527.13.90 | ラジオ(録音再生可能なもの) |
8527.21.10 | 車載用カセット付ラジオ(録音再生可能なもの) |
8527.21.90 | その他の車載用ラジオ(録音再生可能なもの) |
8527.29.00 | 車載用ラジオ(その他のもの) |
8527.91.90 | その他のラジオ(録音再生可能なもの) |
8528.51.20 | モニター(コンピュータ用) |
8528.59.20 | モニター(その他のもの) |
8528.71.11 | 受像器(デジタル信号用) |
8528.71.19 | 受像器(その他のもの) |
8528.72.00 | モニター(受像機能が自蔵されていないもの) |
(注)NCMコードとは南米南部共同市場(メルコスール)内で使用される品目分類番号。基本的にはHSコードに沿う。
(出所)官報(政令898-E/2017)
政令117/2017(2017年2月17日付)ではパソコンとその部品の輸入関税を0%にするなど、これまでもアルゼンチン政府は国内でのビジネス創出のための政策を打ち出してきた。今回の内国税削減についても、中小企業やスタートアップ企業がデジタルエコノミー産業を強く推進し、国内の産業競争力を強化させるのが目的とされている。
ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンには懸念も
ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンは法律19640に基づいて1972年に設置され、政令1234/07によって2023年末まで有効とされている。州内での活動では所得税、付加価値税、関税が免除されているが、内国税は対象外だった。同州内の製造業組合は、アルゼンチン国内の他の地域で製造される電機・電子製品も段階的に内国税が削減されるため、競争力維持の観点から懸念している。これに対し政府は、同州が離島であるという地理的な観点から、海上輸送費や通関手続きに係るコストの削減を通じた競争力の維持を提案した。なお、同州政府は対応策として、フリーゾーン内の労働者の賃金上昇率を2年間凍結させるとしている。
内国税削減対象品目が自動輸入ライセンス対象に
アルゼンチンでは工業生産省決議5/2015に基づき、2015年12月22日から自動輸入ライセンス(LA)と非自動輸入ライセンス(LNA)の取得制度が設けられている。LNAは輸入品へのモニタリングの強化や国内産業への配慮を目的として運用されており、対象は1,600品目以上だ。このLNAの取得対象となっている品目では原則60日以内にライセンスが発行されることになっているが、手続き申請がなかなか終了しない場合もある。電機・電子製品もLNAの取得対象品目となっていたが、工業生産省決議898-E/2017(2017年11月24日付)で、内国税の削減対象品目がLA取得対象品目へと変更された。これにより輸入許可の遅れなどの解消が見込まれ、国内製造業にとっては部品輸入などにかかるリードタイムの計算がしやすくなる。なお、ティエラ・デル・フエゴ州フリーゾーンへの輸入品については、工業生産省決議523-E/2017(2017年7月5日付)により、全品目がLA取得対象品目へ変更されている。
(注)マクリ大統領は2017年10月31日に税制改革案のパッケージを発表した。多品目における内国税を含めた税制を改正するもので、12月中の法案可決を目指している。
(志賀大祐、山木シルビア)
(アルゼンチン)
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