ウーバーは輸送サービスとEU司法裁判所が裁定

(EU)

ブリュッセル発

2017年12月27日

EU司法裁判所は12月20日、米国の配車アプリ大手ウーバー(Uber)が提供するサービスは、輸送サービスに該当すると裁定した。この裁定には、インターネット上のプラットフォームを利用した仲介サービスに、個別分野の規制の順守が求められるか否かをめぐって注目が集まっていた。一部産業団体がこの裁定に対して遺憾の意を表明した一方、労働者団体からは歓迎する声が聞かれた。

配車の仲介は輸送サービスの一部

EU司法裁判所(CJEU)は12月20日、米国のウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)が提供する配車アプリを利用したサービスは、輸送サービスに該当するとの裁定を下した。この判断は、スペインのバルセロナのタクシー運転手の団体が提起したウーバーの同国法人に対する訴訟を受けて、バルセロナ第3商事裁判所がCJEUに要請したものだ。

原告側の団体は、ウーバーおよび車両を運転する本職でないドライバーは、バルセロナのタクシー業務に関する規制に基づく免許の交付や許可を受けておらず、不当行為および不正競争に当たると主張していた。バルセロナ第3商事裁判所は審理に当たって、事前の行政許可手続きの対象となるか否かを判断する上で、ウーバーが提供するサービスが「輸送サービス」か、「情報社会サービス」か、または、それらの組み合わせであるかを決定する必要があると判断。ウーバーに関して、EU法が規定するサービス提供の自由に基づくルールが適用されるか、EUと加盟国が共轄する地域交通に関するルールが適用されるかの判断をCJEUに求めていた。

CJEUは今回の裁定で、ウーバーがスマートフォンのアプリを通じて提供する、乗客とドライバーの仲介サービスは、輸送を主体とするサービス全体の一部を成していると指摘。従って、同社のサービスは輸送サービスに該当し、同分野におけるルールが適用されるとの判断を下した。

デジタル単一市場への「打撃」との声も

通信やインターネットサービス分野の企業が加盟する、コンピューター通信産業協会(CCIA)は、CJEUの裁定を受けて同日に声明を発表した。この裁定が「オンラインの仲介事業者へのEUルールの統一的な適用に対する現実的な脅威となる」として遺憾の意を表明し、「イノベーターには一層、各加盟国や部門ごとのばらばらなルールが適用されることとなる。これは、統一されたデジタル単一市場を構築するというEUの野心への打撃だ」と批判した。

一方、ウーバーなどインターネット上の仲介プラットフォームについて、不安定な雇用の温床となっているとして批判的な向きもある。欧州労働組合連合(ETUC)は、ウーバーが「EU加盟各国で、それぞれの輸送サービス関連規制を認識・順守しなければならない。それは、EU全域で労働者の権利を尊重することも意味する」との声明を発表。輸送サービス部門の労働組合と、ドライバーの賃金や労働条件に関して協議するよう呼び掛けた。

(村岡有)

(EU)

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