「中小企業&イノベーションカンファレンス」をドバイで開催-日・UAE間で一層の協力目指す-

(アラブ首長国連邦、日本)

ドバイ発

2017年12月04日

アラブ首長国連邦(UAE)経済省は11月13日、ドバイで「第8回中小企業&イノベーションカンファレンス」を開催した。本カンファレンスは毎年パートナー国を選定し、当該国との中小企業やイノベーションに関する今後の連携を主題に開催されている。1月に日本とUAEが中小企業・イノベーション分野の協力枠組みを創設するための覚書を締結したことを受け、今回は日本がパートナー国に選ばれ、日本側はジェトロの赤星康副理事長をリーダーとし、在UAE日系企業中心に約70人が参加した。

国を挙げて起業やイノベーションを支援

UAE側からはスルターン・ビン・サイード・アル・マンスーリー経済相、サラ・ビント・ユーセフ・アル・アーミリ高等科学担当国務相のほか、政府関係者や起業家らが参加した。冒頭のスピーチでマンスーリー経済相は、2021年までに中小企業のGDPに占めるシェアを70%にするという目標に基づき、大学など研究機関と連携した起業・イノベーション促進策や、中小企業のビジネス環境整備のための中小企業法の施行、中小企業支援やイノベーション促進に関わる多数のイニシアチブなど、UAE政府の多数の取り組みを紹介し、国として中小企業の起業やイノベーション促進を支援していく姿勢を強調した。

続いて、2017年10月の組閣で新設の高等科学担当国務相に任命され、中小企業振興やイノベーション・研究開発(R&D)の促進などを管轄するアーミリ氏は、同年に発表された「UAE100周年プラン2071」(2017年11月10日記事参照)において、UAEの持続可能な成長を保証するため、高度な科学技術知識を持った世代を育成することが求められているとし、UAEの進歩とイノベーションの牽引役となるべき次世代の科学者を生みだすための戦略を整え、プロジェクトを実行することが重視されると述べた。

UAE側からは、さらに3人が講演した。最初の講演者で、中小企業への資金支援を行っているハリーファ基金のアブドラ・アル・ダーマキ最高経営責任者(CEO)は、日本の中小機構(中小企業基盤整備機構)と連携したハンドクラフト・ビジネス支援事業で16人の若手アーティストが生まれ、日本の専門家による指導を受けたアーティストらが82万6,000ディルハム(約2,561万円、1ディルハム=約31円)以上をこれまでに売り上げたことなど、10年で2万人以上の人々に融資やプロジェクトを通じた支援を行ってきた同基金の実績を紹介し、日本とより連携していきたいと締めくくった。

続いて、ムハンマド・ビン・ラーシド中小企業支援機構のアブドゥル・バシット・アル・ジャーナヒCEOが、2001年の設立以降、起業家への融資やコンサルティング、トレーニングなどの支援を通じ、UAE、特にドバイの自国民の起業やビジネスを支援してきた実績を説明した。

最後に、ムバダラ・エアロスペースのバドル・アル・オラマ部長が、アブダビ・ビジョン2030の目標のうち、a.UAEおよびアブダビでの知識集約型経済の構築、b.民間企業の知識集約型経済への参入支援、c.選択可能でオープンな規制環境の実現、について紹介した。さらに同氏は、ムバダラ・エアロスペースの事業に関連して、アブダビ首長国第2の都市アルアインに25平方キロの規模で展開されている宇宙クラスター「ニブラス(Nibras、教育の社会効果を意味する古いアラビア語」事業について説明した。ニブラスは9フェーズに分けて開発され、第1フェーズの5平方キロは8つのプロジェクトからなる。そこに立地するストラータは世界で3本の指に入る航空機器メーカーになるという目標の下、機体の翼や尾翼の製造に焦点を当てており、航空産業のサプライチェーンに中小企業を取り込むプログラムも進めているという。

日本からも支援政策や連携事例を紹介

日本側からは、ジェトロ、中小企業庁、経済産業研究所、ベンチャー企業、マーケティング支援コンサルタントが参加し、日本の中小企業支援政策やUAEとの連携事例、自らのビジネスモデル、女性経営者の商品開発支援プロジェクトなどを紹介した。日本、UAE双方から視察ミッション派遣の計画が発表されており、今後も両国は中小企業交流やイノベーション分野における一層の協力を目指す。

(山本和美)

(アラブ首長国連邦、日本)

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