TPP11の大筋合意を歓迎、早期の妥結に期待-政府首脳や産業界-

(シンガポール)

シンガポール発

2017年12月01日

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定参加国のうち米国を除く11カ国(TPP11)による「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」が11月10日に大筋合意に至ったことで、シンガポール政府首脳や産業界から歓迎の意が表明された。早期の妥結に向けた期待が示された一方、同じく広域自由貿易協定(FTA)として注目される東アジア包括的経済連携(RCEP)が2017年内合意を断念したことを受け、2018年のASEAN議長国であるシンガポールは交渉を前進させる決意をみせている。

リー首相はこれまでの道のりを総括

リー・シェンロン首相は11月12日、自身のフェイスブックでTPP11カ国がCPTPPの主要な要素に合意したことについて歓迎の意を表した。また、TPPは米国を含めた12カ国で設計されたものであるため、「米国を除く11カ国が原案とほぼ同じ内容で合意することは、容易ではなかった」と語った。リー首相は「長い道のりを歩んできたが、これから最終的な法的文書に署名するため作業を進めていく」と今後を見据える。

産業界や有識者からも、今後の行方に期待が示されている。シンガポール・ビジネス連盟(SBF)最高経営責任者(CEO)のホー・メン・キット氏は英字紙「ストレーツ・タイムズ」(11月12日)に対し、「早期の妥結、再構築された協定の速やかな履行を期待する」とコメントした。また、アジア貿易センターのエグゼクティブディレクターであるデボラ・エルムス氏も同紙で、「CPTPPは、過去20年間で署名された中で最も重要な貿易協定だ」と評価した。その上で企業に対し、「(今回の合意を踏まえ)協定がどのようにビジネスに影響するか、急いで理解する必要があるだろう」と指摘する。

RCEP交渉前進の決意を示すも、難しさを示唆

TPPの動向とともに注目されるRCEPの首脳会合が11月14日、マニラで開催され、2017年内の妥結が見送られた。リー首相は、2018年にシンガポールがASEAN議長国となることを踏まえ、「交渉を前進させるため最大限の努力をしていくことを誓う」と決意を示している(「ストレーツ・タイムズ」紙11月15日)。同首相は、質が高く包括的なRCEPの締結は企業や人々の利益になるだけでなく、「この地域が未来の経済に対する自信を世界に示すことになる」とも語る。

ただ、リー首相は、RCEP交渉が2015年から妥結が見送られてきたことについて、「依然としてやるべき作業が残っており、その課題は複雑だ」と交渉の難しさも指摘した。同首相は、関係国それぞれのセンシティブな課題や政治的制約のバランスを取る必要があるとし、「われわれは共通の着地点を見つけなければならない」と述べた。さらに、同首相は「期待するレベルを現実的なレベルに再設定するため、(RCEP交渉に)委任される事項を再調整する必要がある」と見直しの余地があることも語った。

(小島英太郎)

(シンガポール)

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