クチンスキー大統領の罷免は回避へ-賛成票は可決に必要な87票を下回る-

(ペルー)

リマ発

2017年12月25日

ペドロ・パブロ・クチンスキー大統領は、ブラジル・ゼネコン大手オデブレヒトのペルー支社と自身は一切関係がない旨の文書を国会へ提出していたものの、その後、大統領と関係の深い2社とオデブレヒトとの間に資金の流れがあったことを明らかにした。これを受け、12月21日に国会で同大統領の罷免審議が行われた。同大統領は、国会で潔白を訴えるとともに罷免プロセスが民主的なものとは言い難いと主張し、大統領職を継続する意思を伝えた。同日に行われた罷免投票の結果、罷免の賛成票は78にとどまり、可決に必要な87票を下回ったことで、同大統領の罷免は回避された。

クチンスキー大統領が国会審議で弁明

12月21日に国会で終日続いたクチンスキー大統領の罷免に係る審議が午後11時過ぎに終了し、続いて賛否を問う投票が行われた。投票結果は賛成78、反対19、白票21、棄権11(ほかに欠席1人)と罷免の成立に必要な3分の2の賛成票(87票)を下回り、大統領の罷免は回避されることになった。

クチンスキー大統領は国会において、自身が所有するウェストフィールド・キャピタルがブラジル大手ゼネコンのオデブレヒトから業務委託を受けていたことについて、虚偽報告をしたわけではなく、アレハンドロ・トレド政権時に閣僚を務めていた際に同社の経営を知人であるチリ人企業家に任せていたために、同社からの業務委託の事実を知らされていなかったと弁明した。加えて、同業務委託は合法的な契約に基づくもので、それ自体に違法性はなく汚職には当たらず、このことで大統領の罷免を問われることに正当性があるとは考えられないと訴えた。

また、12月20日夜には、クチンスキー大統領は第1、第2副大統領と共に、テレビ放送を通じて国民に弁解した。その際、ペルーの民主主義の維持のために大統領の任を自らが続けるべきだと訴え、理解を求めるメッセージを伝えていた。また、両副大統領は同様に、クチンスキー大統領が続投すべきとの考えを共有しており、仮に罷免が可決された場合でも、大統領への就任を拒否する意向であることを述べていた。

野党側は大統領の主張を批判

これに対して、最大議席を有する野党フエルサ・ポプラル(FP)党のエクトル・ベセリル議員は、罷免プロセスが民主的とは言い難いとのクチンスキー大統領の主張に対し、「クチンスキー陣営が憲法で定められた副大統領の就任を放棄し、大統領罷免の場合は総選挙へ進むシナリオを意図的にちらつかせており、これこそ国会に対する脅迫的行為であり、民主的な対応とはいえない」とコメントした。また、「大統領自身がラバ・ジャット調査委員会に対し、オデブレヒトとの関与の事実を正しく報告しなかったことが主因であるにもかかわらず、罷免プロセスが民主的か否かの議論へとすり替え、かつ自らを政治的対立の被害者化することを試みたもので、情に訴える手法こそ賛同し得るものではない」とも批判した。今後は、国会に設置されているラバ・ジャット調査委員会における調査が進むことになる。

(藤本雅之)

(ペルー)

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