日米双方の市場の魅力を紹介-アトランタで投資連携フォーラムを開催-

(米国)

ニューヨーク、アトランタ発

2017年11月29日

ジェトロは10月20日、米国商務省とともに、ジョージア州アトランタで日米双方向の投資をテーマとした「日米投資連携フォーラム」を開催した。プログラムは「対米投資」と「対日投資」の2つのセッションに分かれ、日米の企業が各市場の魅力や事業戦略を語った。

米国商務省が日本企業の貢献を称賛

開会あいさつは、フォーラムを共催した米国商務省のトム・ストラウス南部地域ディレクターが行った。ストラウス氏は「在米日系企業は米国で85万6,000人を雇用しており、2015年には米国から757億ドルを輸出している。これは外資系企業による米国からの輸出額全体の21.5%を占める」と述べ、米国経済への日本企業の貢献をたたえた。

次いで開催地を代表して、ジョージア州政府のブライアン・ケンプ州務長官とドゥルー・ファーガソン連邦下院議員(共和党、ジョージア州)が来賓あいさつに立った。ケンプ州務長官は「400もの日本企業がジョージア州に立地しており、その数は年々増加している」と発言した。ファーガソン下院議員も「日本企業は110億ドルもの投資をジョージア州にしており、3万2,000人を雇用している。驚くべき数字で、誇りに思っている」と語った。

基調講演を行った石毛博行ジェトロ理事長は、南東部への日本企業の大型投資が相次いでいることを指摘し、この地域の将来を見通すためのカギはグローバルなサプライチェーンにあると述べた。その上で、「企業は最適な生産地を求めてサプライチェーンをグローバルに広げてきた。それを後押ししたのは自由貿易協定」だとし、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定など多国間自由貿易協定の意義と双方向投資の重要性を訴え掛けた。

フォーラムには、ジョージア州出身で1971~1975年に同州知事も務めたジミー・カーター元大統領からも祝辞が寄せられた。カーター元大統領は「州知事だった時にYKKが進出して以来44年にわたり、ジョージア州と日本のビジネス交流は拡大してきた」とし、経済関係のさらなる強化に期待を示した。

進出日系企業は現地の事業環境を説明

対米投資セッションには、TOTO USAのウィリアム・ストラング社長、リンナイアメリカのフランク・ウインザー最高執行責任者(COO)、日立オートモーティブシステムズアメリカズ・ジョージア州工場のマイケル・シュオーン副社長が登壇した。

TOTO USAのストラング社長は、TOTOが米国市場にイノベーションを持ち込んだことを強調するとともに、「トイレを中国の工場で生産して輸入するよりも、アトランタの工場で生産した方がコストが安い。これがわれわれの北米市場の成功の基盤になっている」と語った。

リンナイアメリカのウインザーCOOは、同社によるアトランタの北米本社拡張とタンクレス給湯器の生産開始(注)について触れ、ジョージア州での拠点拡張を決めた理由として、空港やサバンナ港に近いことや、ジョージア工科大学から優秀な人材の供給を受けられること、アトランタに日系企業が集積していることを挙げた。

日立オートモーティブシステムズアメリカズ・ジョージア州工場のシュオーン副社長からは、ジョージア州の同社拠点が日立グループ全体の自動車関連拠点の中でも一番成長している拠点であることや、同拠点では北米への製品供給だけでなく、日本、中国、ロシアなどへの輸出も実施していることが紹介された。

コカ・コーラは日本をイノベーション拠点に

対日投資セッションには、アトランタに本社を置くコカ・コーラとZnalytics、米国で事業パートナーの発掘を行っているNTTドコモから、それぞれスピーカーが登壇し、日本市場の魅力を紹介した。

コカ・コーラの福江晋二マーケティング・新ビジネス担当副社長は「日本はコカ・コーラにとって最も成功している市場の1つ」とし、「日本市場で成功するためには、日本の消費者のニーズを理解し、日本市場向けに製品やサービスを開発することが重要だ。コカ・コーラは日本拠点に権限移譲をしており、日本人が日本市場向けの製品を開発している」と述べた。また、コカ・コーラは日本をイノベーション拠点として位置付けていると強調した。福江氏によると、コカ・コーラには年間10億ドル以上を売り上げる飲料ブランドが21あり、そのうち4ブランド(ジョージア、アクエリアス、綾鷹、い・ろ・は・す)が日本で生まれている。

電力供給事業者が顧客管理を行うクラウド型のサービスプラットフォームを提供しているZnalyticsは現在、ジェトロの対日投資支援サービスを利用しながら、日本市場での拠点設立と、事業の立ち上げを行っている。同社のジェニファー・ムーア顧客サービス担当副社長は、2016年の電力市場の小売り全面自由化が日本に進出を決めた理由だと明かした。その上で、「日本のエネルギー市場は8,400万人もの電力契約者がおり、3,000万人ものガス契約者がいる。これは米国最大の市場であるテキサス州に匹敵する規模」と日本市場の魅力を語った。

NTTドコモの平山裕介ビジネス開発担当シニア副社長は「NTTドコモは日本国内市場のベンダーと認識されていたが、時代は変わった。最近は新しい事業アイデアをもたらしてくれる米国のパートナーを積極的に探している」と述べた。また、今後数年で日本のIoT市場は大きく拡大すると語った。

そのほか、ジェトロの前川直行対日投資部外資系企業支援課長がジェトロの対日投資支援サービスを紹介した。

フォーラムの閉会あいさつは、在アトランタ日本総領事館の篠塚隆総領事が行った。篠塚総領事は、ファーガソン下院議員とケンプ州務長官のフォーラムへの参加に謝意を示し、ジョージア州や米国政府が日本企業の支援に取り組む意思を示したと述べた。

(注)リンナイアメリカは現在、アトランタの北米本社を拡張中。既存の北米本社ビルを研究開発(R&D)施設に転換し、新社屋を建設する。また、2018年4月からタンクレス給湯器の北米生産を開始する。さらに新工場と倉庫を建設し、2020年後半には新工場での生産を開始する予定。

(森則和、杉山玲子、鈴木敦)

(米国)

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