日EU・EPA大枠合意に関するセミナーを宮崎で開催

(EU、日本)

欧州ロシアCIS課

2017年11月21日

宮崎県は10月20日、九州経済産業局と宮崎県農業法人経営者協会およびジェトロとともに、日EU経済連携協定(EPA)に関する大枠合意(7月6日)の内容と企業への影響をテーマにしたセミナーを宮崎市で開催した。セミナーでは、経済産業省から日EU・EPA交渉の経緯や合意内容の概要について、ジェトロからは新たなビジネス機会への期待について説明した。

工業製品の関税撤廃に大きな成果

初めに、経済産業省通商政策局経済連携課の松田明恭係長が、日EU・EPA交渉の経緯や合意内容の概要を説明した。

松田係長はEUの通商協定の事例として、2015年12月に発効した韓国との自由貿易協定(FTA)や2017年9月に暫定適用を開始したカナダとの包括的経済貿易協定(CETA)を挙げ、例えばFTAによって工業製品にかかる関税が撤廃された韓国と比較し、EUとのFTAがなく工業製品に関税が課される日本の製造業は競争上不利な立場に追い込まれてしまう状況にあり、何とかEUとのFTAを締結したいという思いがあったとした。

同氏は2013年7月からEPA交渉に携わり、日本からEUへの輸出額の7割弱にEUの関税がかかっている一方、EUから日本への輸出では課税品目が3割弱にすぎないこともあり、交渉は難航したと話した。相当苦しい場面もあったものの、英国のEU離脱(ブレグジット)決定など欧州の政治情勢が変わったことで自由貿易促進の機運が高まったこともあり、今般の大枠合意に至ったと述べた。

また、個別の交渉内容を説明した。株主の権利や取締役会の役割などコーポレートガバナンスの部分については、これまで他のFTAではほぼ取り扱いがないが、日本企業に大きな影響を与えることはない見通しだとした。

関税の交渉内容については、工業製品は最終的に100%撤廃となり、日本企業の競争力改善につながるとした。特に、米国(税率2.5%)と比べて高い乗用車の関税(10%)の撤廃、自動車部品の即時撤廃率92.1%もEU韓国FTA90.2%などと比較して高い成果を獲得していると述べた。また、精密機械や伝統工芸品などを含む裾野の広い合意内容で、多くの中小企業にも利益をもたらすとした。

このほか、政府調達やサービス、投資、電子商取引などの交渉内容についても概要を説明した。投資については、日本がこれまでEU加盟国と締結していない投資家保護のルールづくりを行っているとし、投資家と現地政府との紛争解決に関する規定については現在も交渉中と説明した。

欧州進出日系企業にも高まる期待

続いて、ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の田中晋課長は、欧州市場の特徴について、購買力が大きく高付加価値製品が売れる市場だとした。また、欧州市場で認められることは、世界に通用するEUの厳しい基準や規格をクリアしたことの証しでもあるため、ブランド確立という点で有用だとし、ジェトロが欧州で出展支援するさまざまな見本市を通じた、日本企業の欧州市場開拓支援についても紹介した。

日EU・EPAについては、発効すると日本の貿易全体に対するFTAカバー率が10%程度増え34.4%となり、EUでは域外貿易に対する同カバー率が33.8%に高まるとした。また、日本とEUがEPAの効果を期待するそれぞれの貿易主要品目の説明を行った。

日EU・EPAに対する日本企業の期待については、ジェトロが毎年秋に実施している欧州進出日系企業実態調査で、日EU・EPAの「メリットが大きい」との回答比率が2016年調査で前年調査から5ポイント上昇したと述べた。メリットが大きい理由としては、関税引き下げ、市場アクセス改善、そのほかのビジネス機会の拡大などとした。また、日本から原材料や製品を輸入する回答企業の比率をみると、製造業で約3割、非製造業で約4割に上り、関税引き下げの効果は大きいとした。日本からEUへの輸出に関しては、最大の輸出品目である自動車および関連部品の輸出状況や欧州市場の動向を説明するとともに、農産品の輸出額の推移や欧州で伸びている日本の農産品の現状を報告した。また、欧州に輸出を行う中小企業の取り組み事例を紹介した。

(木下裕之)

(EU、日本)

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