米国の動向に懸念も引き続き高い関心-第17回国際産業見本市がテヘランで開催-

(イラン)

テヘラン発

2017年11月01日

第17回国際産業見本市が10月6~9日にテヘランで開催された。国外からの出展企業は535社にとどまったが、ジェトロは4年連続となるジャパンパビリオンを設け15社が出展した。見本市直後の13日に米国の対イラン新戦略の発表が予定されていたなど、先行き不透明の中での開催となったが、出展した日本企業の間では中小企業を中心にイランビジネスに手応えを感じたようだ。

ジャパンパビリオンに15社が出展

今回の国外からの出展企業は535社と、前年の776社を241社下回った。経済制裁解除・緩和後初めての開催で、イラン国外からの注目度が高かった2016年と比べると出展企業は減少したものの、2015年が321社だったことを考えれば、国外からのイラン市場への関心は引き続き高いといえそうだ。

前年に引き続き、8カ国がナショナルパビリオンを設け、中国パビリオンの出展企業数が突出して多かった(表参照)。ジャパンパビリオンは約350平方メートルに15社が出展した。同パビリオンは最もにぎわったブースの1つで、イラン企業の日本製品に対する関心の高さがうかがえた。出展企業は前年から減少したが、現地代理店を介して独自出展した企業もあり、出展者からはイランビジネスへの手応えを感じるとの声が多く聞かれた。7社が出展した中小企業からそうした声が大きかった。既にイランビジネスを手掛けているA社の担当者によると、顧客に対して自社ブランドが日本ブランドであることを効果的に宣伝でき、数十件の成約が見込まれるとのことだった。2年前から出展しているB社も数十件の成約見込みがあったようで、継続出展して自社製品のPRを続けてきたことが成果につながったと話していた。

表 2017年ASEAN経済相関連会合の主要成果(単位:社)
国名 2016年 2017年
日本 26 15
中国 344 250
スイス 16 42
インド 24 35
トルコ 55 34
ドイツ 94 30
台湾 24 21
チェコ 24 17

(出所)IDROインターナショナル・トレーディング

 写真 ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

フランス企業が大型投資、日本の輸出も2倍

2016年1月の経済制裁解除・緩和以降、各国のイランビジネスは進んでおり、EUの2016年の対イラン輸出額は約85億ユーロと前年比27.7%増加した(欧州委員会)。貿易だけでなく、イランへの投資案件も増えている。例えば、2017年7月にフランスのエネルギー大手トタルは中国石油天然気集団(CNPC)とともにイラン国営石油会社(NIOC)と南パルス天然ガス田開発に関する大型契約を結び、8月にはフランス自動車大手ルノーがイラン開発革新公社(IDRO)および地場系ディーラーのパルト・ネギン・ナセ(Parto Negin Naseh)と合弁会社設立を発表している。日本の2016年の対イラン輸出額も約5億9,000万ドルと前年の2倍超に伸びた(財務省貿易統計)。

ジャパンパビリオンでもイランビジネスへの手応えを感じる声が多かった一方で、出展した日本企業からは米国の対イラン政策への懸念も聞かれた。トランプ大統領がかねて対イラン政策の見直しに言及しており、米国によるイランへの経済制裁は一部緩和されているものの、先行きが不透明なためだ。米国は10月13日に対イラン新戦略を発表し、トランプ大統領は2015年イラン核合意再検証法(Iran Nuclear Agreement Review Act of 2015)に基づく承認(イラン制裁緩和などに関する合意内容が適切なものである旨の承認)を行わないとしており、経済制裁緩和の見通しははっきりしない。そうした状況の中、現地報道によると、10月17日にノルウェーの再生エネルギー大手サガエナジー(Saga Energy)が約25億ユーロ規模の太陽光発電所建設についてイラン側と予備契約を締結したと発表するなど、イランビジネスに積極的な欧州企業も存在している。

イランを取り巻く情勢は刻々と変化しており、イラン市場では中小企業の強みといえるスピードや柔軟性を生かすことができるとみられる。今回の出展で手応えをつかんだ企業からは、「米国の動向など国際情勢には注意を払う必要があるものの、イラン市場は長期的視点で取り組むことが必要なことを実感した」との声も寄せられた。

(藤塚理)

(イラン)

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