「TPP11」の大筋合意を歓迎、農産品の輸出拡大に期待

(ニュージーランド)

オークランド発

2017年11月20日

デイビッド・パーカー貿易・輸出拡大相は11月11日、「TPP11」〔包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTTP)〕が閣僚級で大筋合意されたことを歓迎する声明を発表し、特に農産品輸出の拡大に期待を示した。しかし、批准に向けては、労働党政権内に加え、野党との調整など課題も残っている。

協定の懸念事項も改善と評価

パーカー貿易・輸出拡大相は、加盟国の閣僚レベルで大筋合意された「TPP11」について、「11カ国でのTPPの大筋合意を歓迎する。さらなる技術的な作業・協議を要するが、協定の主な要素は合意された」と述べ、協定がニュージーランドにとって好ましい内容に改善されたと大筋合意を評価する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

特にニュージーランド産品の、日本、カナダ、メキシコ、ペルーといった海外市場へのアクセスが改善されたと評価し、それが国内の農業・農産品輸出に従事する62万人以上の国民にも裨益(ひえき)すると期待を示した。併せて、自ら所属の労働党が指摘してきた協定の懸念事項(注)に関しても、望ましい判断・改善がされたと評価した。具体的には、加盟国の中でニュージーランドに最も多く投資するオーストラリアとは2国間で互恵的協定を締結し、投資家対国家間の紛争解決(ISDS)条項が適用されないことを挙げ、他国との間でも同様の協定締結を目指す意向を表明した。また、非居住外国人による国内の農地・住居購入の自由化についても、別途国内で立法を講じることで、こうした購入を規制する権利が保持されたと評価した。

政党により大筋合意の評価に温度差

パーカー貿易・輸出拡大相は声明で、「協定の署名および批准に先立ち、何が合意され、どのような意味を持つのか、国民が理解できるように説明していきたい」と述べた。また、ジャシンダ・アーダーン首相も「TPP11」の大筋合意後、推進に向けた発言をするなど、労働党の前向きな姿勢がうかがえる。

一方、現地報道によると、労働党と連立政権を組むニュージーランド・ファースト党は、今回の大筋合意に関する立場を明らかにしていない。また、労働党と政権運営で協力する緑の党は、批准を支持しない姿勢を示している。同党のゴルリッツ・ガラーマン貿易報道官は今回の大筋合意の内容について、「(以前のTPPと)実質的な差異があるとは思えない。投資章の違反によって、ニュージーランドが外国企業から訴えられる余地を依然残している」などと懸念を表明した。

こうしたことから、政府が批准する場合には野党である国民党の協力も必要になると想定され、今後は政権内はもちろん、野党との調整など難しい政権運営が求められそうだ。

(注)現地報道によると、労働党は2017年7月時点で、(1)医薬品一括購入制度に及ぼす影響や、(2)公共の利益に基づく政策に関して私企業が政府を訴える仕組みが導入されることへの懸念のほか、(3)非居住外国人による農地・住居購入規制の導入が困難となること、(4)ワイタンギ条約(マオリ族保護関連)の維持が困難となること、(5)農民にとっての外国市場参入機会の獲得が不足していること、を挙げていた。

(林道郎、マックス・カリスターベイカー)

(ニュージーランド)

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