潜在力の大きい分野を開拓する「マイドレス」-成長が期待されるEC市場(2)-

(香港)

香港発

2017年10月16日

香港の電子商取引(EC)市場の注目企業を紹介する後編は、地場のアパレルECサイト「マイドレス(MyDress)」を展開するマイドレスホールディングスについて。

香港からアジア市場を目指す地場企業

マイドレスホールディングスは2013年に設立され、婦人服をはじめ靴、ランジェリー、アクセサリー、化粧品などのファッション・美容グッズを販売する香港地場企業だ。社員は40数人。2015年に台湾に拠点を設立し、2017年中にはシンガポール、マレーシアにも拠点を設立する予定だという。同社のECサイト「マイドレス」のターゲット層は、香港をはじめ、台湾、シンガポール、マレーシアなどの東南アジアや、欧米在住の華人で、潜在顧客数は6,500万人。「マイドレス」には毎週100万人がアクセスしており、同社のフェイスブックは20万人のフォロワーを獲得している。顧客の42%はリピーターで、そのうち女性が85%を占めている。年齢層では20代後半から30代前半が全体の47%を占め、顧客層はミドルクラスのオフィスワーカーに集中しているという。

ワンストップサービスを提供

マイドレスはウェブサイトの運営・管理(価格設定、在庫更新、発注)をはじめ、マーケティング(広告、SNSを通じたプロモーション、有名人とのコラボレーション)、物流(ストレージ、品質管理、商品の発送)、顧客サービス(アフターサービス、返品、返金)を含めたワンストップサービスを全て自前で提供している。同社は自社倉庫を所有しており、自社スタッフが梱包(こんぽう)して、香港に進出した中国系大手物流企業「SF(順豊)エクスプレス)」を利用して商品を発送している。顧客に多様な選択肢を提供することを目指し、日本の「nissen」、韓国の「chuu」「A’PIEU」や台湾の「東京着衣」など多くのアパレルブランドの商品を取り扱っており、1つのブランドに依存することは避けている。また、高いレベルの顧客満足度、アフターサービスを重視しており、顧客との信頼関係を築くために返品可能にしている。同社は現時点では実店舗を設置していないが、今後ポップアップストア(期間限定店舗)を開設する予定があるそうだ。

黎文ディレクターは「『マイドレス』は香港のファッション・美容分野のEC市場におけるメインプレーヤー」と語った。中国市場を含めると「淘宝」が競合他社となるが、香港市場内でファッション・美容グッズの販売に特化している競合他社はほぼないという。同社の課題を「自社サイトをいかに洗練されたものとし、消費者への浸透を図っていくかだ」として、日本も含め各国・地域のブランドやパートナーとの連携を模索している。

信頼できるECサイトや物流業者との関係構築が重要

地場企業が運営するECサイトが少ない香港では、マイドレスはバイヤーとして、ファッション・美容業界と消費者をつなぐプラットフォームとして機能している。黎ディレクターは海外企業との連携の経験に基づき、日本企業が香港EC市場を通じて販路を拡大するに当たり注意すべきポイントを以下のように指摘する。

(1)専属の代理ECサイトを指定する。ある日本のカタログ通販企業はマイドレスを専属の代理店として指定している。こうした関係の構築はECサイト側でも、一定の客層を確保できるというメリットがある。

(2)在庫を確保し、信頼できる経験豊富な物流業者とパートナーシップを構築し、最短時間で日本から香港に商品を配送する。

黎ディレクターは「ワンストップサービスを提供する会社と提携することは、海外での販路拡大を目指す日本のアパレル企業にとっては負担が少なく、海外展開しやすい方法の1つではないか」と話す。

香港人は海外のユニークな商品に対する関心が高い一方、労働時間が長いため、実店舗へ行く時間があまりないといわれている。4月に発表されたマスターカードの調査によると、香港での電子商取引での売れ筋商品は、アパレル・アクセサリー(41.7%)、スーパーマーケット取扱商品(37.5%)、航空券(36.7%)、旅行商品(36.2%)、ホテル(36.0%)、家電・電子機器(30.2%)、オンラインゲーム(29.3%)の順となっており、アパレルの需要が高いという結果が出ている。

(カン・カレン)

(香港)

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