投資・貿易庁の組織法成立、海外進出支援も目的に-東京に事務所を開設予定-

(ポーランド)

ワルシャワ発

2017年10月13日

ポーランド投資・貿易庁(PAIH)に関する法律が7月24日に成立した。 従来の外国からの投資誘致活動に加え、ポーランド企業の輸出や海外進出支援も手掛けるようになる。海外からの投資家に対する優遇措置の拡充や、日本を含む各国に新たな事務所を設立する予定。今後の方針について、PAIHのトマシュ・ピスラ総裁に聞いた(8月23日)。

ポーランド企業の輸出や海外進出支援に着手

PAIH〔旧ポーランド情報・外国投資庁(PAIiIZ)〕は1992年の設立以来、海外からの直接投資促進機関として機能し、対ポーランド外国直接投資(FDI)の約2割(件数ベース)を支援している。

2017年2月からPAIHに名称を変更して活動を行ってきたが、今回の組織法成立により、従来の海外企業の対ポーランド投資促進だけではなく、ポーランド企業の輸出促進・海外進出支援も正式に組織の目的となる。PAIHは、これまでも「Go グローバル」「Goチャイナ」「Goイラン」など、ポーランド企業の海外進出のための個別のプログラムは実施してきたが、今後は外国企業による直接投資に加え、ポーランド企業の海外進出もPAIHの業績評価指標として位置付けられることになる。政府が2016年2月に発表した素案に基づき、2017年2月に閣議決定された「責任ある開発戦略」では、ポーランド企業の海外展開の促進を目標の1つに掲げており、これに沿った措置だ(2016年3月4日記事参照)。

2018年は2017年のおよそ2倍の約2,000万ドル相当の予算を付け、人員も近い将来に倍増させる予定だ。スタッフの地域専門性も高め、各地域に一層特化した専門員が双方向の支援に当たる。

海外投資家への支援を拡充へ

輸出の約8割が欧州向けのポーランドは、投資・貿易の多角化を模索している。この点で、日本はポーランド企業の進出先として重要な市場となる。

また、外国企業の誘致も引き続きPAIHの重要な業務として位置付けている。日本については、2016年にマブチモーターの進出、トヨタの再投資といった大きな投資案件が発表されるなど、韓国と並んで最も重要なターゲットの1つだ。経済開発省は現在、特別経済区(SEZ)の改革や新たな補助金プログラムの策定に取り組んでおり、間もなく発表の予定。こうしたインセンティブについても、PAIHが窓口となる。

PAIHは、2,500を超える工場用地データベースを持つほか、自治体幹部とのホットラインを持つ。日本企業向けにジャパンデスクも設けており、近く日本語のできる人材も追加で採用する予定で、こうしたソフト面の支援も引き続き充実させる。ポーランドは高い教育水準や優秀な人材といった、投資に魅力的な条件を有し、今後は知識集約型産業への移行を目指す。投資案件も、投資額や雇用数という指標だけでなく、高度な知識・技術の有無や関係機関との連携など、以前よりも細かい指標で測った上で、ポーランド経済への貢献度の高いものには、より良い条件の優遇措置が取られることになるだろう。実際、英国の大手自動車部品メーカー、デルフィが自動運転の研究開発拠点をクラクフに設置するなど、製造拠点だけでなく研究開発拠点としての進出もみられるようになってきた。進出が相次ぐビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)/シェアード・サービス・センター(SSC)分野では、35カ国語に対応できる事業者もある。

海外拠点については、政府の方針により、各国大使館内に設けられ海外企業とポーランド企業の相談窓口となっている貿易投資部は閉鎖され、代わってPAIHが世界各国20カ所以上に事務所を順次設置していく予定だ。日本は重点国であり、東京オフィスも早々に開設されることになっている。

写真 トマシュ・ピスラ総裁(中央)とジャパンデスク担当者(ジェトロ撮影)

(小松理恵)

(ポーランド)

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