メイ首相、総選挙での不振を謝罪し続投を表明-保守党が年次党大会開催(1)-

(英国)

ロンドン発

2017年10月17日

与党・保守党は10月1~4日、マンチェスターで年次党大会を開催し、党員や業界団体の関係者ら約1万1,000人が参加した。テレーザ・メイ首相(党首)の去就に注目が集まったが、メイ首相は4日に行った演説で、6月の総選挙での不振について異例の謝罪を行った上で続投を表明した。保守党大会について3回に分けて報告する。

「申し訳ない」と異例の謝罪

保守党は6月に行われた総選挙で過半数の議席を獲得できず、野党・労働党の躍進を許す(2017年6月12日記事参照)など、党内ではメイ首相の引責辞任を求める声が高まっていた。メイ首相は党大会最終日の4日に演説を行い、冒頭で総選挙の結果に触れ、保守党は過去34年間で最も高い得票率を獲得できたものの、選挙キャンペーンがありきたりな内容にとどまり、国民が変化を求めていたにもかかわらず、現状維持の象徴のレッテルを労働党に貼らせることを許したと分析した。そして、キャンペーンを率いた責任を認め、「申し訳ない(I am sorry)」と異例の謝罪をした。

メイ首相は風邪で咳が止まらなくなり再三演説を中断したり、演説の途中にコメディアンの男性が首相に「P45」と呼ばれる離職証明書を手渡そうとしたりするなど、ハプニングも続いた。

メイ首相の演説前までは、党員らの間で辞任を強く求める声もあったが、首相の謝罪で会場の空気は一転し、咳で苦しむ首相に対する同情もあってか、首相続投に事実上のゴーサインを出したかたちとなった。

水面下では首相後継争いも

メイ首相は続投を示したが、「いつまで持つのか」との懸念はメディアからも党員からも消えていない。今後も水面下で後継争いが続いていくとみられている。

保守党系「コンサーバティブホーム」の保守党員1,249人を対象にした調査(10月2日発表)では、次期首相候補はボリス・ジョンソン外相が21.5%でトップ、続いて強硬派で知られるジェイコブ・リースモッグ議員(14.8%)、デービッド・デービスEU離脱相(13.1%)となった。ただし、前月の同調査とは順位に変動もあるなど、他を圧倒する後継候補は出ていない。

ジョンソン外相は、長らくEU離脱方針については沈黙を続けていたが、9月15日の「テレグラフ」紙にEU離脱について4,000語を超える長文記事を投稿して以来、再び表舞台に登場した。しかし、党大会でもサイドイベントでも、8月に訪問したリビアについて「将来、ドバイのように発展する可能性は大いにあるが、まずは死体を片付けてから」と発言するなど、国際社会の批判を招く失言も多い。支持には党内や国民の中で賛否両論があるものの、ジョンソン外相の演説は会場から人があふれる状況で待望論は根強いとみられる。

リースモッグ議員は初当選が2010年と議員歴は浅いものの、EU離脱強硬派の筆頭格として急速に頭角を現しつつある。ジョンソン外相が「エキセントリック」と評されるのに対し、同議員は「オーセンティック」と評され、奇をてらわず淡々とした口調に同調する党員は急速に増えている。EUとの離脱交渉において英国の強い立場を主張する強硬姿勢は、古株のEU強硬離脱派議員らの強い支持も得ている。

そのほか、6月の総選挙でスコットランド国民党(SNP)から議席を奪い、13議席(2015年総選挙では1議席のみ)を獲得したスコットランド保守党リーダーのルース・デービッドソン議員は、スコットランド議会の議員でありながら、若年層や女性らの圧倒的な支持を得ており、同議員が参加した党大会のサイドイベントは全て会場があふれる人気だった。同議員はスコットランド議会でやることがあるとして、中央政界進出はまだ先としているが、将来の首相候補として期待が高まっている。

(佐藤丈治)

(英国)

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