生活用品全般を扱い、3業務を展開する「HKTV」-成長が期待されるEC市場(1)-

(香港)

香港発

2017年10月13日

「ユーロモニター」の調査(1月発表)によると、2016年の香港の電子商取引(EC)を通じた小売販売額は137億香港ドル(約1,918億円、1香港ドル=約14円)だった。過去5年は年平均約15%増加しており、香港EC市場の潜在力は高いと考えられる。その香港でECビジネスを展開する2社を紹介する。前編は、生活用品全般を扱う通販サイトを運営する「HKTV」について。

「HKTVモール」は香港EC市場のメインプレーヤー

「HKTV」の前身は1992年に設立された香港地場の通信系企業「シティテレコム(City Telecom)」。同社は放送業界への参入を目指して、2013年にモバイルテレビの放送権を中国移動通信(チャイナモバイル)から取得、2014年11月19日にインターネットテレビを開局した。2015年2月にはオンラインショッピングモール「HKTVモール」を開設し、テレビショッピング事業を開始した。

「HKTVモール」は香港居住者向けのECサイトで、2017年4月時点の登録会員数は415万人を超えた。受注が多いのは、スーパーマーケットの取扱商品(食品、掃除用品、シャンプーなど)で、全体の約4割を占めている。そのほか、電子クーポンが2割超、ファッション・美容関連商品および家具・電気製品が1割超を占めているという。

「HKTV」はEC関連で主に以下の3つの業務を展開している。

(1)自社が中間業者として、オンラインプラットフォームの「HKTVモール」を出店者に提供する業務。

(2)「オンラインスーパーマーケット」の展開。各業者から商品を買い取り、消費者から注文を受けて同社物流センターから発送する業務。

(3)電子クーポン購入者が一定数に達すると割引が得られる共同購入型クーポンアプリ(HoKoBuy)を運営する業務(2月にクーポン事業を展開する「Groupon HK」を買収)。

HKTVによると、「HKTVモール」内で取り扱っている生活関連商品の数は合計で18万点を超え(10月時点)、香港、日本、韓国などの約1,300社が出店登録もしくは同社と取引している。また、自社内に配送部門を完備しており、2017年後半には自動化された物流施設が稼働開始予定となっている。香港のオンラインショッピングモール業界では「HKTVモール」に並ぶプレーヤーはないが、HKTVは、香港のEC市場はまだ整備段階にあり、今後も市場拡大が進むと予測している。

ECサイトと実店舗の相乗効果狙う

HKTVはオンラインショップとの相乗効果を狙い、実店舗を香港に10店設けている。2017年末までに店舗数を20~30店まで拡大する予定だという(NNA香港版8月21日付)。

実店舗は「コンセプトショップ」と位置付けられており、ショールームとして注目商品を展示するほか、店員がタブレットを用いて顧客に商品の購入方法やアプリの使用方法を案内する。また、食品を購入できるほか、消費者がECサイトを通じて注文した商品の受け取り場所としての機能も果たしている。同社によると、実店舗を開設した北角、サウスホライズンの周辺住民の間で同社商品の認知度が高まり、ウェブサイトの利用率が上昇したという。

同社はマーケティング戦略の一環として、毎週火曜日に「フラッシュセール」という安価で商品を販売するキャンペーンを開催している。また、お勧め商品のキーワードを「HKTVモール」のトップページやメールマガジンに掲載しているほか、購入金額に応じてポイントがたまるシステムも導入し、リピート購入を促している。

写真 「HKTVモール」の実店舗。北角店(左)とサウスホライズン店(右)(HKTV提供)

香港市場との相性の確認が重要

HKTVは香港人の消費行動パターンに基づき、日本商品を出品する際には、以下の点に留意する必要があると指摘している。

(1)ブランドが香港市場に浸透しているか

香港にない商品および香港市場に初めて登場するブランドや商品は、まず実店舗での販路を確保し、時間をかけて商品のイメージやブランド名を浸透させた上で、ECを通じた販路を確立した方がよい。

(2)香港市場で流行しているか

香港人は「トレンド」に敏感で、特にブームになっている商品の需要は急増する。例えば、韓国ブームに伴うファッションやコスメブランド、特定のゆるキャラ関連商品など。

(3)季節に合った商品か

季節により一定の需要サイクルがある商品もある。例えば、中秋節の時期には月餅、クリスマスや旧正月には季節料理やギフトなどの販売の伸びが著しい。

(4)品目数が多いか

「販売商品がユーザーの購買目的に合わない」あるいは「他社よりお得感が感じられない」と判断された場合、ストアページがスキップされる可能性が高い。「HKTVモール」のユーザーは、品目数の少ない店舗での滞留時間が短い。そのため、品目数が少ない店舗にはスーパーマーケットとの取引が推奨される。

(5)市場参入前に香港の輸入制度や品目別の小売販売制度を確認したか

食品や化粧品の中には、日本では販売が認められているが、香港では禁止あるいは規制対象になっているケースがある。

(カン・カレン)

(香港)

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