EC市場はスマートフォンの普及で大きく成長へ-中南米のeコマース事情(7)-

(コロンビア)

ボゴタ発

2017年10月19日

コロンビアの電子商取引(EC:eコマース)市場は、2015年に163億3,000万ドルと規模はまだ小さいが、スマートフォンの普及などにより市場は拡大しており、今後数年は2桁成長が見込まれる。決済システムの多様化、セキュリティー強化、配送サービスの向上や配送コストの低減などが、さらなるEC市場拡大へのカギとなる。

2015年のEC市場は2年前からほぼ倍増

国連貿易開発会議(UNCTAD)の2015年のBtoC ECビジネス指標(「B2C電子商取引指数2016年版」)によると、コロンビアのECビジネス指数(注)は44.6(100が最高点)であり、137国中72位(2014年は71位)となっており、中南米主要国の中では、ウルグアイ、チリ、ブラジル、コスタリカ、アルゼンチン、メキシコ、パナマ、エクアドルに次いで9番目となっている。

また、コロンビア通信規制委員会(CRC)が2016年7月7日~8月2日に実施した電話調査(対象は18歳以上の男女4,522人)によると、73.4%はECユーザーでないと回答しており、そのうちの49.8%分はインターネットユーザーだがECを利用していないと回答している(残りの23.6%分はインターネットユーザーでないためECを利用できない)。この国のEC市場は発展途上にあり、今後大きく伸びる可能性がある。

コロンビア電子商取引商工会議所(CCCE)によると、2015年のコロンビアのEC市場は163億3,000万ドルで、2013年の82億8,000万ドルから2年間でほぼ倍増し、取引数は4,900万回に上る。2014年下半期以降、コロンビア経済が鈍化している中、2016年と2017年のEC市場は引き続き2桁台の成長が見込まれるとしている。コロンビア政府が進める輸送インフラの整備は物流サービスの向上や物流コストの低減につながり、また高速インターネット回線が広範囲に普及すれば、EC市場は今後も拡大するとみている。

ネット利用の上位に多いサービス部門

前述のCRCの調査によると、インターネットでの物販やサービス利用状況に関しては、公共料金の支払いなど(39.5%)が最も多く、次いで、ファッション(衣類・服装雑貨など)、航空券購入(ともに27.4%)、輸送サービス(タクシーなど、22.2%)と、サービス部門が上位の多くを占めている(図1参照)。ファッション以外の物販系では、パソコン(PC)・周辺機器(18.1%)、携帯電話・付属品(17.4%)、家具・家電製品(14.3%)の購入の利用率が高い。公共料金の支払い、ファッション、輸送サービスなどが上位を占めることから、一回の利用金額は50万ペソ(約1万9,000円、1コロンビア・ペソ=約0.038円)未満が約40%を占めており、以下、50万ペソ以上100万ペソ未満が18.2%、100万ペソ以上300万ペソ未満が12.5%と続く。

図1 インターネットでの物販・サービスの利用率(複数回答)

2016年のインターネット利用端末をみると、70.4%が携帯電話と最多で、次いでデスクトップ型PC(53.2%)、ノート型PC(30.6%)、タブレット(11.4%)となっている(図2参照)。2015年まではデスクトップ型PCでのインターネットアクセスが最多だったが、2016年に携帯電話でのアクセスが急激に伸びた。この背景には、2016年の携帯電話の保有率(5歳以上の国民4,437万人が対象)が72.1%で、うちスマートフォンが63.5%(2,030万人)と急増したことがあるほか、「ラピ(Rappi)」いう名称のスマホアプリを通じた買い物代行やレストランメニューのテークアウトサービスや、その他スマホアプリを通じた宅配サービスが大きなブームとなったことも影響している。

 図2 インターネット利用端末の種類(複数回答)

コロンビアで利用頻度の高いECサイトのトップ2は、中南米地域で展開しているメルカドリブレとリニオで、ともに物販全般を取り扱うサイトだ。以下、シネコロンビア(映画チケット)やグルーポン(各種チケット)などのチケット購入サイトが続く。また、ファラベラやスーパー・エクシトなどの大型小売店のサイトも人気になっている。アマゾンやアリエクスプレスなどの越境ECサイトも幾つか存在し、コロンビア国内で販売されていない商品の購入などで利用される。一方で、コロンビアまでの商品の発送サービスがない、外国為替レートの変動、関税や輸送コストが高い、購入者のクレジットカードで支払いができない、などの問題もあり、越境ECサイトの利用度はあまり高くない。

セキュリティー強化や配送サービスの向上が課題

CRCの調査によると、ECを利用する動機としては、「時間節約になる」が45.7%、「プロモーションがある」が28.1%、「価格」が20.3%、「支払いが容易」が16.9%となっている。他方、ECを利用しない理由としては、「個人データの提供に対する不信」が52.0%、「クレジット決済への不安」が24.3%、「実物の商品が見られない」が21.6%と続く。

実際にECを利用しているユーザーに限定すると、87.9%がこれまでに不便さを感じたことやトラブルに遭遇したことはないと回答しており、不便を感じたとした人は12.1%にとどまる。不便を感じた最大の理由は購入商品の未着で、次いで、ウェブサイトやアプリケーションの不具合、商品やサービスの質の悪さ、が挙げられた。

ECに対するネガティブな先入観が先行しているため、今後のEC市場拡大に当たっては、政府やEC関連企業が連携してユーザーへのECの安全性の普及・啓発がカギとなる。CRCがEC関連企業39社を対象に同市場の問題点についてインタビュー調査を行ったところ、大きく分けて以下の4つの課題が指摘された。

(1)支払いセキュリティーの強化を推進する。

(2)インターネットの利用が少ない層に対して認知度の向上を図る。

(3)クレジットカードを保持しない層でもアクセスできる多様な決済方法を提供するほか、PayUなど、電子詐欺に遭う確率が1%を超えない決済システムをより多く普及させる。

(4)物流インフラの整備を進め、配送遅延を防止し、配送コストを削減するほか、米国など他国の優れた物流サービスを導入する。

(注)個人のインターネット利用率、クレジットカード利用率、安全なサーバーの設置台数(100万人当たり)、郵便サービスの信用度、の4つの指標を指数化し(100が最高点)、順位付けしたもの。

(マウリシオ・ゴンザレス、高多篤史)

(コロンビア)

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