日系企業29社、300拠点が進出-関心高まるグジャラート州の現状(1)-

(インド)

ニューデリー発

2017年10月26日

ナレンドラ・モディ首相の出身地であるインド西部のグジャラート州は、電力・道路などのインフラ整備が進み、工業州として発展している。日系のスズキやホンダが工場を新設するなど、新たな自動車産業の集積地としての注目度も高い。関心が高まる同州の状況について、3回シリーズで報告する。

モディ首相のお膝元、投資誘致を推進

グジャラート州には、日系企業29社(本社、本店など)、300拠点(工場、支店、営業所など。本社、本店も含む)が進出している。モディ首相の出身州でもあり、同氏が州首相時代にインフラ整備や投資誘致を推進した。インドの乗用車シェアで40%超を握る業界トップのスズキは同州に単独資本で新たな大規模生産工場を稼働させ、ホンダ(二輪)、フォード、タタなどのメーカーも同地に進出している。今後、周辺地域へのサプライヤーの進出や集積が予想される。また、州最大の都市アーメダバードとマハラシュトラ州ムンバイとの間に日本の新幹線方式を採用した高速鉄道が建設される予定で、沿線の開発が進み、新たなビジネスチャンスとなることが期待される。

ジェトロはアーメダバードに事務所を新設

この流れを受け、ジェトロは2017年11月にアーメダバードに事務所を開設する。同事務所には、日本企業の進出準備の用途に供する貸しオフィスであるビジネス・サポートセンター(BSC)も設置する。BSCは、各企業の個室にデスク、インターネット回線、プリンターなどが備えられており、常駐するアドバイザーが相談に応じ、総合的に進出を支援する。また、インドへの企業進出を日本国内で幅広く支援するため、ジェトロは東京、大阪、名古屋、横浜に相談、情報提供、商談支援機能を持つ「インドデスク」を設けることも決定した。

新たな輸出ハブとしての成長に期待

ジェトロは2017年7月、グジャラート州のJ・N・シン首席次官、M・K・ダス工業次官、D・タラ同州産業開発公社(GIDC)副会長兼社長を日本に招き、東京、大阪、名古屋、浜松の4都市で投資誘致セミナーを開催。各地で進出関心企業との個別面談をアレンジした。セミナー参加者数の合計は500人以上で、同州への高い関心を示す結果となった。

シン首席次官は「わが州は、インドで最も都市化が進むエリアだ。面積はインド全体の6%、人口は5%だが、国全体のGDPへの貢献度は8%、輸出では20%以上を誇る。何よりインフラの整備状況が他州よりも優れており、技能人材も豊富だ」と述べた。また、インドの西端に位置する同州は、長い海岸線を有し、ムンドラ、ピパバブといった主要港を有する。同氏は「グジャラートに進出すれば、国内市場向け機能のみならず、輸出向けの製造ハブとしても活用できる」と強調した。この地の利を生かし、欧州や中東・アフリカへの輸出拠点としても期待されている。ダス工業次官は同州に流入する外国直接投資額について、「この3年間で4倍に拡大した」とし、自動車だけでなく、製薬、繊維、エンジニアリング、食品加工といった分野でもビジネス機会があることを説明した。

写真 東京セミナーでのシン首席次官(ジェトロ撮影)

同州に新工場を構えるスズキは、進出の決め手として、(1)州政府の実行力、(2)整備されたインフラ体制、(3)輸出港を有する地理的な利便性、を挙げる。インフラ面では州の協力により、低コストで専用送電線引き込みが実現し、自家発電をしているハリヤナ州工場よりも電力コストを低減できているという。

アーメダバードは2017年7月に、インドで初めてユネスコの世界文化遺産(都市)に認定された。他地域と比べても治安が良く、日本人会の2017年3月末時点の会員数は79人を数える。駐在員は余暇にゴルフやテニスなどを楽しむことが多いようだ。日本食レストランも徐々に増え始めているが、同州では法律により公共の場所での飲酒は禁じられている。ただし、外国人は許可証を取得することで一定量の酒類を購入し、個人宅で消費することは可能だ。

(古屋礼子)

(インド)

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