化学肥料DAPとMAPに暫定セーフガードを発動

(ベトナム)

ハノイ発

2017年10月06日

ベトナム商工省は8月4日付で、一部化学肥料に対してWTOの規定に基づく暫定セーフガードの発動を決定した(商工省決定3044/QD-BCT号)。対象品目は、リン酸1アンモニウム(MAP)とリン酸2アンモニウム(DAP)だ。暫定セーフガード発動の理由として、中国の過剰在庫に伴い、ベトナムに安価な製品が流入していることなどが挙げられている。

8月19日から200日間実施

ベトナムでのセーフガードは、2002年5月25日付の国会常務委員会法令第42/2002/PL-UBTVQH10号において規定され、同法令ではセーフガード発動に関する調査開始決定後、利害関係者は30日以内に商工省に対し見解を述べることができる(第12条)。その後、商工省はそれらの情報、証拠、見解について検討し、6カ月以内に結論を出すこととされる(第18条)。さらに調査が必要な場合は、調査期間を2カ月延長することができる。ただし、最終調査結果の発表前でも、緊急対処が必要と認められた場合は「暫定セーフガード」を適用できる。これにより、最大200日間、関税率の引き上げが可能となる(第20条第5項)。所管は商工省競争管理局だ。

今回の化学肥料に対する暫定セーフガードは8月19日から200日間で、その後、商工省はセーフガードを正式に発動するか否かを決定する予定だ。対象品目は農作物の栽培などに使用される化学肥料(DAP・MAP)8品目で、HSコード8桁で規定されている。詳細は以下のとおり。

○対象8品目のHSコードと税率

3105.10.20(WTO税率:6%)、3105.10.90(0%)、3105.20.00(6%)、3105.30.00(6%)、3105.40.00(0%)、3105.51.00(0%)、3105.59.00(0%)、3105.90.00(0%)

暫定セーフガード関税は、1トン当たり185万5,790ドン(約9,316円、9月30日のベトコムバンクレート:1円=199.15ドン)の従量税が賦課されることになる。

今回の決定に先立ち、2017年3月31日に国営化学大手ビナケム傘下のDAPとDAP2から、商工省に対してセーフガード発動要請があった。その後、5月12日から商工省がセーフガード発動に関する調査を行っていた。

中国の化学肥料の過剰在庫が原因と分析

商工省の報告書によると、DAPおよびMAPの輸入量は2013年の107万トンから2016年に109万トンとわずかに増加した一方、輸入額は2013年の5億1,500万ドルから2016年には4億600万ドルと減少した。これら2つの国産品の価格は輸入品に比べ35.5%高く、いかに低価格で輸入されているかが分かる。

同報告書では、これら製品の世界的な需要減により、一大生産国の中国が過剰在庫を抱えたと分析している。化学肥料生産における中国の世界シェアはDAPが50%、MAPが28%となり、いずれもトップだ。

2016年のこれら2つの製品のベトナムへの国別輸入シェアは、中国が82.6%、韓国が5.4%、ロシアが2.6%で、中国が圧倒的な割合を占めている。

8月4日付の商工省決定3044/QD-BCT号については以下を参照。

2017年8月4日付、ベトナム商工省競争局ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

2017年8月18日付、ベトナム税関総局ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(佐藤進)

(ベトナム)

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