3大ECサイトが出店者の選択肢に-中南米のeコマース事情(1)-

(メキシコ)

メキシコ発

2017年10月11日

メキシコにおけるBtoC(企業と個人)の電子商取引(EC:eコマース)を考えた場合、出店者としては3大ECサイトが選択肢に入るだろう。メキシコのECでは、衣服・アクセサリーなどがよく売買され、海外からの購入に対して積極的で、アジアから購入することにもためらいはないが、越境を含むECでの決済の安全性については特に気に掛けている消費者が多いようだ。中南米のeコマース事情を9回にわたって掲載する初回は、メキシコ編(全3回)の1回目。

日本からの出店は米国販売とセットで

メキシコにおけるBtoCのECサイトとして代表的なものは、米国系アマゾン、中南米に強いアルゼンチンのメルカドリブレ(Mercado Libre)、ドイツのロケット・インターネット(Rocket Internet)がメキシコなど中南米で展開するリニオ(Linio)の3つだ。ほかにも、ウォルマート(米国)やリベルプール(メキシコ)など大手小売りが持つ自社ECサイトなどがある。それらを合わせたシェア(販売額ベース)をみると、メルカドリブレ9.5%、リニオ5.8%、アマゾン5.5%、ウォルマート5.5%程度になるようだ〔「エル・フィナンシエロ」紙3月28日、原典はメキシコインターネット協会(AMIPCI)、ユーロモニターなど〕。

日本からの出店を考えた場合、メルカドリブレについては、出店者がメキシコ居住であることを求めており、現地進出企業であるか、現地にパートナーが必要となる。リニオとアマゾンは国際配送が可能で、海外からも出店できる。リニオは中南米での展開を想定した仕組みになっている。現地進出の日系企業などであれば、リニオを使った南米展開なども考えられるが、仮に日本からの出店を考えた場合、アマゾンが使いやすいようだ。

ジェトロが問い合わせたところでは、アマゾンのメキシコ・マーケットプレイス(インターネット上に存在する物の売り手と買い手が自由に参加できる取引市場)は、米国ヒューストンで運営しており、メキシコには「FBA」(フルフィルメント by Amazon:商品の保管、注文処理、出荷、配送、返品に関するカスタマーサポートを代行し、売り上げ向上を支援するサービス)の倉庫管理機能のみがあるとのことだった。ただ、米墨間のマーケットプレイスの融合は進んでおり、メキシコへは米国のFBAからでも配送(2~3日)でき、かつメキシコの消費者には一定額〔599ペソ(約3,714円、1ペソ=約6.2円)〕以上の購入には、配送費を無料にしている。同社のセミナー資料などでは、出品者には、米国FBA10:メキシコFBA1の比率で在庫を置くことを推奨している。こうしたことから、米国、メキシコのどちらのマーケットプレイスに出店するか、また米国のFBAを使ってメキシコも対応しようとするのか、米国とメキシコのFBA倉庫双方に在庫を置くやり方をするのかで複数の組み合わせが考えられる。いずれにせよ、日本からの出店では、米国販売とセットでメキシコを捉えるのがよさそうだ。

ちなみに、アマゾンのサイトによると、日本のFBA倉庫からの海外配送はメディアコンテンツ系に絞られてしまっている。従って、日本のFBAとの契約でメキシコまで対応することは可能だが、コンテンツ以外の商品を送るとなると、結局はFBAサービスを利用しない個別配送が必要だ。サイト内の出店者を幾つか検索する限りでは、日本からの配送はEMS(国際スピード郵便)便、SAL(エコノミー航空)便が多いようだ。

アパレル・アクセサリーが出店のトップ

メキシコインターネット協会(AMIPCI)の2016年報告によると、オンライン出店者が出品するカテゴリーのトップ3は、「アパレル・アクセサリー」「スポーツ&フィットネス」「情報携帯端末およびその周辺機器」の順だった。他方、消費者側が購入する「旅行を除く」トップ3カテゴリーは、「アパレル・アクセサリー」「デジタル商品ダウンロード」「イベントチケット」の順だった。

海外からの出店、メキシコ国内出店を問わずに、幾つかのECサイトを検索してみると、日本のものとしては、定番のアニメグッズ系(例:ドラゴンボールのキャラクターのフィギュア)のほか、ウィッグやエクステンションのようなヘアアクセサリー系、菓子(例:日本製キットカット「抹茶味」)などがある。

ちなみに、オンライン購入経験者のうち「海外からの購買を行ったことがあるか」の質問に対しては、6割が「ある」と回答。地域(複数回答)では、「米国」(61%)」が首位で、続く「アジア」(41%)は「ラテンアメリカ」(13%)をはるかにしのぐ。海外購買の理由としては、「(海外から買っても)安価(61%)」「メキシコにはないユニークな商品(53%)」「ブランド商品などでメキシコに存在しない(44%)」などが挙がっている。

EC利用の決済はペイパルが主流

EC(越境ECを含む)利用の際の主な決済システムの利用割合は、ペイパル(PayPal、62%)、デビットカード(56%)、クレジットカード(51%)、銀行送金(27%)、コンビニエンスストア決済(オクソ店舗など、30%)となっている。

前出のAMIPCIの報告では、「もし出店者が改善すれば、もっとオンラインショッピングを行うだろうと思われる点」について質問したところ、回答は「決済手段の安全性(91%)」「配送無料(90%)」「返品保証(89%)」の順だった。ペイパルは金銭の授受を同社が仲介するため、取引先にクレジットカード番号や口座番号を知らせる必要がなく、消費者側にとっては個人情報リスクを減らせるメリットがある。

(中島伸浩)

(メキシコ)

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