治安改善せず、渡航前に情報収集と対策を-9会場で安全対策巡回セミナー・相談会-

(バングラデシュ)

アジア大洋州課、ダッカ発

2017年10月18日

ジェトロは9月10日から14日にかけて、首都ダッカをはじめ国内9カ所で、安全対策巡回セミナー・相談会を実施した。当地の治安や日系企業の状況、オフィス・工場での安全対策などの説明を行った。安全対策の専門家は、治安情勢は改善していないため、出張者は事前に情報を収集する必要があると指摘した。

安全三原則の徹底求める

安全対策巡回セミナー・相談会は、ダッカ市内、アダムジー輸出加工区、チッタゴン輸出加工区の計9会場で開かれ、日系企業の日本人駐在員などが多数参加した。2016年7月にはダッカでレストラン襲撃テロ事件が発生しており、日系企業の間では治安情勢や安全対策情報へのニーズが引き続き高い。

冒頭、在バングラデシュ日本大使館の担当者が、バングラデシュの治安概況を解説した。「直近も多数の日本人が当地に来訪しているが、現地の治安情勢を知らないケースも少なくない」として、出張者に対して現地の治安を十分に認識させ、安全三原則である「目立たない、行動を予知されない、用心する」の徹底を求めた。また、ツイッターなどのSNSを利用して、食事中のレストランが特定できるような投稿をしたり、日本人がよく利用する店舗などを紹介したりする行為は危険なため、滞在中は控えた方がよいと述べた。

治安は楽観視できず

リスクコンサルティング専門のCMSSの講師は、「オフィス・工場での安全対策」について、以下のように説明した。

バングラでは2018年末に総選挙が予定されているが、これに関連した政党間の襲撃や拉致事件などが起きており、今後も治安に関して楽観視できる材料は少ないようだ。

テロに関しては、軍と警察が過激派組織の掃討作戦を実施している。活動拠点からは、これまでより爆発力の高い爆薬が発見されており、今後、爆弾を使ったテロ攻撃の可能性もある。3月にはダッカ空港付近で小規模な自爆事件が起こっており、過激派が空港や付近の施設で何か起こそうとしている。空港では速やかに施設内に入ることが重要だ。

オフィスや工場でできるテロ対策として、a.安全対策を専門にするコンサルティング会社や警備会社による安全管理体制のチェック、b.入り口付近における警報機や障害物の設置、c.セーフティールームや緊急脱出経路の準備、d.安全対策関連の情報収集・分析担当者の配置などが挙げられる。特にb.では、テロリストなどにオフィス・工場に突入されてから襲撃されるまでに時間的な猶予が取れるようにしておく必要がある。

強盗や火災に備えた対策も必要

テロ以外では、銀行から戻ってきた自動車が強盗被害に遭う事件、企業役員の拉致事件などが起こっている。比較的安全といわれているダッカ市の中心部であっても、用心は怠らない方が良さそうだ。こうした事件は事前に計画されていることが多いため、通勤などの移動経路を変更したり、乗車する自動車を特定されないよう乗り換えたりするといった対策が有効だ。また、自社内に犯罪に加担する内通者がいる可能性もあるため、現金を扱う担当者を定期的に変更したり、現金の輸送時には武装警備員を付けたりするといった対策が望ましい。

さらに、漏電による工場やオフィスでの火災が多数発生している。定期的に避難経路の確認、避難訓練、消火器や消火栓、警報機の点検などを行い、従業員の防災意識を高めることも必要だろう。

増えるODA関係者の来訪

なお、ジェトロは進出日系企業の状況について次のように解説した。

バングラ進出日系企業はジェトロ調べで255社。マタバリ火力発電所の入札が終わるなどして、ODA関係者の来訪が増えていることに加え、2016年10月ごろからは新規ビジネス、既存ビジネスの拡大傾向が顕著になっている。ジェトロの2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査によると、「2017年の利益が前年より増加する」と回答した企業の割合は、バングラが20カ国・地域中1位で、「今後1年に駐在員を増加させる予定」との回答もトップだった。バングラでのビジネスを有望視する企業が多いことが明らかになっているが、一方で、政情不安・テロを不安視する企業も他国・地域に比べて多い。

(北見創、古賀大幹)

(バングラデシュ)

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