大手地場EC関連企業がビジネスモデルを主導-中南米のeコマース事情(6)-

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2017年10月18日

中南米最大の電子商取引(EC:eコマース)マーケットプレイスを運営するメルカドリブレは、越境ECの拡大に積極的に取り組んでいる。ECに関連する小口輸入の制度としては、郵便局によるドアツードア制度と、クーリエ(国際宅配便)を利用した制度の2つがある。アルゼンチン編の後編。

越境EC拡大にも積極的な取り組み

アルゼンチンには、越境ECに関連する明確なデータが存在しない。アルゼンチン電子商取引会議所(CACE)は、取引のほとんどが国内ECのものだとしている。他方、ペイパル(PayPal)の2016年の越境ECグローバル調査によると、アルゼンチンのECユーザーの41%が、過去12カ月で越境購入経験があると回答している。

中南米最大のECマーケットプレイスを運営するメルカドリブレのマティアス・フェルナンデス・ディアス氏によると、同社は越境ECの拡大に積極的に組んでいるという。メルカドリブレは、デスペガル・ドット・コム(中南米最大のオンライン旅行代理店)、OLX(インターネット広告)、グロバント(ソフトウエア開発)とともに、評価額10億ドルを超えるアルゼンチンが誇るベンチャー企業だ(表参照)。中南米18カ国に拠点を持ち、2016年の総売上高は8億4,440万ドルに達し、前年比29.6%増加している。

表 アルゼンチンの主なECプラットフォーム

ディアス氏によると、越境ECの課題として、物流、決済、関税手続き、情報セキュリティーなどが一般的に挙げられるが、他国の商習慣や言語などカルチャーの違いも加わるという。そのため、同社のECマーケットプレイス内では、翻訳サービスや購入保護プログラム、ブランドの知的財産保護にも取り組んでいる。また、決済ソリューション事業の「メルカドパゴ」や輸送事業の「メルカドエンビオス」もこれらの課題解決に向けて取り組んでいるとする。さらに、中南米市場では、特にアジアの製品やブランドが多く不足していると語る。例えば、ユニクロの製品を見掛けるのは極めてまれだとし、中南米の消費者は日本ブランドを強く信頼していることから、将来に向けて大きな可能性を秘めていると話す。

ECを用いた輸入には2つの関連制度

工業生産省技術・生産サービス庁によると、アルゼンチンにおける主なEC関連規制は、ECに限定したものではないが、消費者保護法(法律第24240号)や個人情報保護法(法律第25326号)、電子署名法(法律第25506号)などがある。法律上、サーバーをアルゼンチン国内に設置するという義務は基本的にはない。また、個人情報保護法によると国外への情報移転に関しては、当該国が個人情報の適切な保護措置を講じている場合に限るとしている。

ECを用いた輸入には、関連制度が2つある。1つ目はドアツードア制度。アルゼンチン郵便局が配送し、個口当たりの上限が重量2キロもしくは価格200ドルまでとされ、商品価格の50%相当が課税される(書籍を除く)。2つ目はクーリエ制度。年間の購入回数上限5回、個口当たりの重量上限50キロ、商品価格上限が1,000ドルとされている。関税は商品によって0~35%と異なる。付加価値税(IVA)は課税されるが、商品によって10.5%もしくは21%と異なる(注)。

輸出の場合は、2017年5月に簡易輸出制度(工業生産省決議4049-E)が制定され、1回の重量上限300キロ、取引価格上限1万5,000ドル、年間の取引価格上限60万ドルとされた。

アルゼンチンは、ECを含めた他国・地域との貿易協定を締結していないが、今後の交渉の中には含まれていく予定と、技術・生産サービス庁は説明している。2017年12月にアルゼンチン・ブエノスアイレスでWTO閣僚会議が開催され、その場においてECに関する議論も含まれる予定だという。

(注)書籍や切手などは課税の対象外。基本税率は21%で、牛肉、野菜・果実などは10.5%。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 39fee9b6d1de53f1