ハノイ中心部へのバイク乗り入れ禁止-市人民委員会が2030年からの実施計画を決定-

(ベトナム)

ハノイ発

2017年10月20日

ハノイ市人民委員会は8月24日、市内における交通管理強化に関する決定5953/QD-UBND(以下、決定5953)を採択した。同市において、交通渋滞と環境汚染の軽減を目的に公共交通機関の改善と道路交通管理の強化を進め、2030年から市内中心部へのバイク乗り入れを禁止する計画だ。

個人車両の急増と交通インフラの未整備が渋滞の要因

ハノイ市では、車両の急速な増加に伴うさまざまな問題が顕著になっており、過去にも個人車両の通行規制などが検討されてきた。これまでは市民の反発を受けて実施が断念されてきたが、今回は2030年までに個人車両に代わる公共交通機関の整備が可能と市が判断し、決定の採択に至った。

2017年7月のハノイ市人民委員会の発表によると、同市における自動車の登録台数は50万台弱、バイクは500万台強で、2011年から2016年にかけての年平均増加率は自動車が10.2%、バイクが6.7%となっている。個人車両の増加に対策を講じない場合、2020年までには自動車は約80万台、バイクは約600万台、2030年までには自動車は約200万台、バイクは約750万台にそれぞれ増加すると予想されている。

一方で、市内の交通インフラ整備は個人車両の増加に追い付いておらず、市内の個人車両の60%が同時に走行すると、中心部では道路のキャパシティーの3.72倍にまで達する計算となっている。同市によると、2016年後半から市内の交通渋滞は深刻で、ラッシュ時は主要道路の平均移動速度が時速約10~12キロとされる。過剰な交通量は深刻な大気汚染も引き起こしており、排ガスが市内の大気汚染原因の約70%を占めるとの報告もある。

このほか、ハノイ市人民評議会(注)においては、交通事故の原因の70%はバイクと関連があり、交通事故減少のためにも市中心部におけるバイクの走行制限・禁止が必要との議論も行われてきた。

バイク関連業界への影響を懸念も

決定5953では、ハノイ市内における自動車およびバイクの個人車両の走行を段階的に制限し、2030年から市内中心部のバイクの走行を禁止としている。同時に、バスによる輸送効率の向上などにより、市内中心部の輸送需要に占める公共交通機関の割合を2020年までに30~35%、2030年までには50~55%に引き上げることを目標としている。

実施スケジュールは3つの段階に分けられており、まず2017年から2018年までに登録車両の種類や製造時期などの統計を作成し、管理を強化する。続いて2020年までに公共交通機関の整備に関する施策を集中的に進めるとともに、日常的に深刻な渋滞が発生している道路や地域においては、奇数日か偶数日で個人車両の通行を制限する措置を導入する。さらに2030年までに地域や時間帯によって自動車とバイクの個人車両の走行を段階的に制限し、市内中心部のバイク走行禁止に必要な条件を整えるとしている。

現地報道によると、同決定を立案した市交通運輸局のブー・バン・ビエン局長は、2030年までに市民の移動需要を満たす交通インフラを整備し、バイク走行禁止の条件を整えることは可能だと述べ、実施に自信を示している。一方で、生活に支障が出るなどの理由で禁止に反対する市民の声があるほか、建設中の都市鉄道2A号線と3号線は資金不足や土地収用の遅れなどが原因でたびたび完成時期が延期され、当初の予定を大幅に過ぎたにもかかわらず、いまだに完工していない。肝心な公共交通機関の整備が計画どおりに進捗しておらず、目的の達成には懸念も残る。

今回の措置について、日系関連企業からは「渋滞はインフラの未整備による面が大きいにもかかわらず、本決定はバイクに厳しい措置となっている。計画どおり実施されれば市民や関連業界への影響は大きく、市に対しバイクの重要性を示していく必要がある」と懸念を示す声も聞かれ、今後の計画の進捗には注視が必要だ。

(注)地方議会に相当し、各種計画の決議や、執行機関である人民委員会の監督などを行う。

(グエン・ラン、佐々木端士)

(ベトナム)

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