日本の農業技術スマート化に向け投資促す-インド企業向けにセミナー開催-

(インド)

ベンガルール発

2017年09月15日

ジェトロは8月29日、インド南部カルナタカ州の州都ベンガルールで、農業をテーマとした対日投資セミナーを初めて開催した。セミナーでは、農業とテクノロジーの融合であるアグリテック分野の事例紹介や、日本の農業技術高度化にインド企業が果たす役割などの紹介があった。参加した企業からは、日本でのビジネスを考える良い契機となったとの声が聞かれた。

農業の担い手不足を新技術でカバー

本セミナーであいさつした在ベンガルール総領事館の北川隆行総領事は、日本再興戦略を例に挙げ、「日本は人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、ロボット技術などの新技術を使い、農業を活性化させ、経済成長のエンジンとなる産業に育てようとしている」と紹介。参加したインド企業に対し、日本の農業分野における新技術活用に貢献してほしいと訴えた。

続けて、ヤンマー・アグリ事業本部の伊勢村浩司・新規事業推進グループ部長は日本の農業が抱える課題に触れ、「農業従事者の高齢化や引退により、各農業従事者が所有する土地面積が拡大している。ノウハウの継承のみならず、業務の負担感やコストの増加が問題だ」と指摘。今後、日本が持続可能な農業を実現する上でのカギとして、「GPSや通信端末により管理された無人機などのロボット技術や、過去の気象情報や土質の調査結果など大量のデータを収集・解析し、初心者でも最適な判断ができるプラットフォームの発展が重要だ」と述べた。同氏によると、2022年までに日本の農業分野における新技術の需要は3億5,000万ドル規模に拡大すると見込まれており、インドは日本における同分野の最大の協業先となる可能性が高いことを示唆した。

日本農業の将来にインド企業の力を

インドでアグリテック企業を調査するフューチャーベンチャーキャピタルの阪口史保調査員は、この分野で起業した地場のスタートアップ企業に対し、「投資やアクセラレータープログラム(注)を提供し、将来的に日系企業との協業を促進する」と紹介。さらに、トキタ種苗インド法人のシャシャンク社長は「農業の効率化には、空間を最大限に活用する『垂直農法』や『農業の自動化』が有効」と見通し、「新技術に強いインド企業は日本の新たな農業の発展に大きく寄与できる」とした。

本セミナーには、日本の農業市場に関心のあるインド・アグリテック関連企業から約100人が出席した。参加者からは「日本の農業分野でのビジネスチャンスが感じられる有益な情報を得られた」「日本が農業分野で新技術を求めていることを知った」などのコメントがあった。本セミナーはインド企業に対し、日本の農業の抱える課題を共有し、これをインド企業がどのようにビジネスチャンスにつなげるか問題提起する機会となった。

写真 講演するヤンマーの伊勢村部長(左)とセミナー会場の様子(右)(ともにジェトロ撮影)

(注)斬新なアイデアを持つスタートアップ企業に対し、大手金融機関がスポンサーとなり、2~6カ月程度の期間を設け、一緒に働くオフィススペースやメンターシップを提供するもの。

(土田葉)

(インド)

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