法人税率を段階的に25%まで引き下げ

(フランス)

パリ発

2017年09月22日

エドアール・フィリップ首相は9月11日、企業の投資と成長を活性化するための政策を発表した。法人税率の段階的引き下げや、社会保険料の事業者負担の軽減などが柱となる。同政策はエマニュエル・マクロン大統領が選挙公約に掲げていたもの。マクロン大統領は、法人税と社会保険料の負担軽減による企業収益の改善を、生産設備投資、イノベーション、職業訓練という3つの不足が原因で衰退する製造業の再生につなげたい考えだ。

大幅減税で企業投資の活性化図る

企業投資活性化に向け、EU加盟国の中でも比較的高い法人税率を、現行の33.3%から2022年までに段階的に25%まで引き下げる(2015年EU平均:25.6%)。EU離脱を決めた英国の国民投票の結果を受け、オランド前政権は在英外国企業の誘致対策として2017年予算法の中で2020年に法人税率を28%まで引き上げる措置を組み込んでいたが、「それでは不十分」(首相府)として追加減税を決めた。

9月末に閣議決定する2018年予算法に、2022年までの税率引き下げの実施スケジュールを組み入れる(表参照)。まず、2018年に全企業を対象に、50万ユーロ未満の収益に対し28%の税率を適用、50万ユーロ以上の収益分には現行の33.3%が適用される。2019年には50万ユーロ以上の収益にかかる税率を33.3%から31%に引き下げる。2020年からは収益総額に対し28%を課税。2021年はこれを26.5%に、2022年には25%に引き下げる。

なお、中小企業(売上高763万ユーロ未満)を対象とした軽減税率(3万8,120ユーロ未満の収益分に15%課税)は、これまでどおり継続する。

表 法人税の段階的引き下げスケジュール

今回、フィリップ首相が発表した企業減税は、企業の配当金支払いに3%課税する特別拠出金制度の廃止を含め、今後5年間にGDP成長率を1.5ポイント押し上げる効果があると試算されている。

年間で210億ユーロの社会保険料負担が軽減に

社会保険料の軽減措置については、法定最低賃金(SMIC)の2.5倍以下の賃金総額を法人税から税額控除する「競争力・雇用税額控除」を2019年に廃止し、SMICの2.5倍以下の給与にかかる社会保険料の事業者負担の軽減措置(6ポイント軽減)に置き換えて恒久化する。これに加え、SMICの1.6倍までの低賃金にかかる社会保険料の事業者負担軽減を強化する。SMICにかかる社会保険料をさらに4.1ポイント軽減し、SMIC2.5倍以下の社会保険料軽減措置と合わせると、軽減分は10.1ポイントとなる。首相府によると、社会保険料の企業負担分は2019年から年間で約210億ユーロ軽減される見通し。

また、個人投資家の投資意欲を刺激し、貯蓄から投資への動きを後押しするため、資産総額が130万ユーロを超える高額所得層に課税される「富裕連帯税(ISF)」を2018年から廃止する。保有不動産のみを課税対象とする新たな富裕税を導入する一方、株式譲渡益、配当金、金利など動産から生じる所得にかかる税率を一律30%と、EU主要国並みに引き下げる(首相府発表資料によると、資産所得税はドイツ26.4%、イタリア26%、オランダ25%)。

今回、フィリップ首相が発表した企業投資活性化は、マクロン大統領がフランスの製造業再生プログラムの一環として公約に掲げていたもの。大統領は、過去20年間にわたるフランス製造業の衰退が「生産設備投資不足、イノベーション不足、職業訓練不足」という3つの不足により引き起こされたと説明し、製造業の高付加価値化に向けた企業投資拡大の必要性を主張していた。

(山崎あき)

(フランス)

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