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日系EC専門サイトはブランド力強調も厳しい市場環境-シンガポールのeコマース業界(2)-

(シンガポール)

シンガポール発

2017年09月19日

ジェトロの調べによると、シンガポールのeコマース(電子商取引:EC)市場に参入している日系ECサイトは26サイトに上ることが分かった。このうち、実店舗を持ちながらECサイトを運営するものと、ECサイトのみを運営するものがほぼ同数だった。ただし、同国のEC市場参入は容易ではなく、既に撤退している事例も散見される。連載の後編は日系ECの参入状況を報告する。

日本産のコメや水などに特化したサイトも

シンガポールEC市場への日系企業の参入状況を、各種資料や報道、各社ウェブサイト情報などから一覧にまとめた。前編(2017年9月15日記事参照)で紹介したキュー・テン(Qoo10)やラザダ(Lazada)など他社ECサイトへの出品を除き、ジェトロが把握できた日系企業が運営主体とみられる(あるいは日系企業が関与・連携し、シンガポール現地企業などが運営しているとみられる)シンガポール市場向けECサイトは26サイトあった(添付資料参照)。

これらは2つに大別できる。1つは、実店舗を持つ小売事業者がECサイトも運営するタイプだ(14サイト)。百貨店では伊勢丹、高島屋、スーパーマーケットでは明治屋、フィッシュマートさくらや、専門店ではベスト電器などがシンガポールで店舗展開しつつ、ECサイトも運営している。また、ドクターシーラボなどの化粧品ブランドもある。知名度を生かし、ECサイトで購入することを好む消費者にも対応している企業が多い。

一方、実店舗を持たずECサイトのみ運営するタイプもある(12サイト)。これらEC専門サイトでは、「日本」ブランドを目玉に、日本の食品や飲料などを日本から輸入・販売しているサイトが多い。日本産コメ、冷凍水産物、水などの特定商品を中心に販売しているケースが目立つ。食料品・飲料以外では、山田養蜂場の化粧品に特化した専門サイトや、ブシロードのトレーディングカード関連商品を扱う専門サイトなどもある。賃料や人件費の高いシンガポールで実店舗を持たないことでコスト競争力を付け、特定商品のみを扱うことで効率性を高めているようだ。広告費を節減し、口コミだけに頼っているサイトもある。

決済方法はクレジットカードが中心

サイトの言語対応については26サイトのうち、英語のみが12サイト、日本語・英語で運営しているサイトが10サイトだった(表1参照)。日英のほかに中国語にも対応している(高島屋、紀伊國屋書店)、日本語のみ(稲造米穀店)などの対応もあった。また、表1を言語別に整理すると、英語対応が25サイト、日本語対応が13サイト、中国語対応が3サイトとなった。基本的にシンガポールでのECサイトは英語となっているが、日系ECサイトの半数が日本人マーケットを狙い、11.5%が同国で7割の民族構成比を占める華人系も対象としている。シンガポール人をはじめとする非日本人マーケットを中心とするか、シンガポール在住の約4万~5万人とみられる日本人マーケット(注1)も対象とするか(あるいは日本人マーケットに注力するか)で、その対応は分かれるだろう。

表1 日系ECサイトの言語

決済手段については、VISAやマスターカードなどのクレジットカード(デビットカードを含む)、PayPal、銀行振り込み、小切手郵送、代金引き換え(現金・小切手)など多くの選択肢があった(表2参照)。このうち、クレジットカード決済のみは10件だった。また、クレジットカード決済と他の決済手段を組み合わせている場合も含めると、クレジットカード決済が利用可能なサイトが8割に上った。地場系ECサイトにヒアリングした際も、効率性の観点からクレジットカード決済のみとしている事例が複数みられた。シンガポールではクレジットカード決済のみであっても、ある程度はECサイトが成立するということを示唆している(注2)。

 表2 日系ECサイトの決済方法

日系ECサイトの撤退も相次ぐ

多くの日系ECサイトがシンガポールに設立されたのはこの4~5年とみられるが、同国のEC市場(または広く小売市場)への参入は決して容易ではない。2014年1月の楽天のシンガポールEC市場参入は話題を呼んだが、2016年2月末に閉鎖した(注3)。これにより、日系のマーケットプレイス(CtoC形態)はなくなった。また、アパレルウェブの関連会社AWSGが運営していた複合型日本ブランドショップ「JRunway」は実店舗のほか、オンラインストアも運営していたが、2016年9月に店舗閉鎖とともにオンラインストアも閉鎖した。さらに、ブルーテーブル(BlueTable)も2016年11月に日本食品を販売するEC専門サイトを立ち上げ、サービスを開始したが、2017年8月に撤退を発表した。競争が激化するシンガポールのEC市場に新規参入するためには、「日本」を売りにするだけでは十分ではなく、先行企業との差別化、独自性、価格競争力が欠かせないだろう。

(注1)外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、2016年10月1日時点でのシンガポールの在留邦人は3万7,504人だった。

(注2)シンガポール情報通信メディア庁(IMDA)の調査(2015年)では、オンラインで購入したことがある人が使用した決済手段の71%がクレジットカードだった。ただし、35歳以上の世代では7割以上がクレジットカード決済を利用したものの、15~24歳では代金引き換えが59%でトップ、25~34歳ではデビットカード決済(銀行口座を利用した決済)が60%でトップだった。販売対象の年齢層によっても、決済手段を使い分ける必要がありそうだ。

(注3)楽天は、海外販売向けのサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでシンガポールも対象としている。

(小島英太郎)

(シンガポール)

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