ネブラスカ州知事、投資環境の良さを売り込み－ジェトロと東京でビジネスセミナー－

ビジネスの視点を大切に州政府を運営

冒頭あいさつに立ったジェトロの赤星康副理事長は、ネブラスカ州の魅力として、優れたインフラ設備、発達した交通網、労働者の質の高さを挙げ、素晴らしいビジネス環境が整っている州だと紹介した。

続いて、ネブラスカ州知事のリケッツ氏が基調講演を行った。2015年に州知事に就任したリケッツ氏は企業経営者から政治家に転身したこともあり、「ビジネス的視点を大切にしながら州政府を運営している。日本からは2010年から合計44億ドルの投資があり、重要な関係と理解している。ネブラスカ州はビジネスフレンドリーな環境を有し、州政府へのアクセスも容易なので、投資先としてぜひ検討していただきたい」と呼び掛けた。

リケッツ知事はまた、全米屈指の失業率の低さ（6月2.9％、全米平均4.4％）や教育水準の高い労働者を有する点などを紹介するとともに、企業成長の土台づくりに寄与する人材育成への投資や、州政府の迅速な意思決定も強みだと強調した。

投資環境や労働力に高い評価

ネブラスカ州は米国の中西部にあり、2日あれば全米人口の90％に配達できる物流上の強みを有する。「フォーブス」誌が選ぶビジネス環境の良い州で3位、「チーフ・エグゼクティブ」誌による良質な労働力ランキングでも3位になるなど、その投資環境や勤勉で真面目な労働力は高く評価されている。登壇したコートニー・デントリンガー州経済開発局長官によると、州の産業は先端製造業、物流、食品加工、農業機器など幅広く、米国の主要鉄道会社2社、大手トラック会社2社が州内に本社を構えている。人口1人当たりの運送業者数も全米最多で、他州に比べて安い住居費や質の高い生活環境を有し、税控除、雇用創出や学生のインターンシップへの補助など多様な投資プログラムを提供しているという。

農業州としても知られるネブラスカは、穀物の一大生産地であるほか、赤身牛肉の生産、乳製品や牛肉の輸出に力を入れている。2016年の輸出額は1,350億ドルと、1996年の600億ドルから20年間で2倍強に伸びており、日本には主にトウモロコシ、牛肉、豚肉、大豆、卵および卵製品を輸出し、輸出額は7億7,890万ドル（2015年）に達する。同じく登壇したマット・ハブロック州農務局副長官によると、州人口の25％が農業に従事しており、農業就労者は近年、全米でも珍しく増加しているという。

物流拠点としての魅力も

8月までジェトロのシカゴ事務所長を務めた曽根一朗大阪本部長は、米国中西部12州の特徴として、農業生産額の合計が全米の約半分を占める一方、先端製造業の中心地でもあり、日系企業が多数進出している点を挙げた。また、対日感情が良好で、リケッツ知事をはじめ各州知事は、日本と米国中西部は価値観を共有していると口をそろえるという。

労働環境と質の高い労働力がネブラスカ州の大きな魅力の1つというのは、州都リンカーンでオートバイと鉄道車両の製造を手掛ける川崎重工だ。同社車両カンパニー最高経営責任者（CEO）で執行役員の岩崎宏治氏は「2002年の操業から15年が経過した鉄道車両製造部門600人の平均勤続年数は10年で、多くの人材が定着し、熟練工になっている。また、ニューヨーク州の工場と比べて手先が器用な人材が多い。州政府の強力な支援や治安の良さ、生活費の低さなどもこの地で操業する大きな理由だ」として、「モーターサイクルと鉄道車両の2部門で製造するのは強みだ。受注の有無に応じて従業員を機動的に配置換えでき、安定した経営に寄与できる」と話した。

丸紅は同州最大都市オマハの穀物大手ガビロンを傘下に置き、同社から米国内および中国・アジア市場、中東市場に穀物を供給する。米国内に複数の拠点を有する中で、ネブラスカ州からは主に米国内の加工業者および西海岸の輸出ターミナル、カリフォルニア州、メキシコへ供給しており、同州の物流拠点としての強みを生かしているようだ。また、同社は食品大豆やホワイトコーンなどスペシャリティーと呼ばれる商材を取り扱っており、丸紅の穀物本部長執行役員の水本圭昭氏は、同州の灌漑設備を活用することで高品質な商材を安定して供給できていると述べた。

講演の最後にリケッツ知事は日本人登壇者に感謝状を贈り、参加者との名刺交換に気軽に応じるなど、同州が日本を重要な貿易・投資のパートナーと位置付けていることがうかがえた。

（仁平宏樹）