品質やサービスの要求が越境EC市場の発展促す-中国大手の「京東(JD.com)」に聞く-

(中国、日本)

北京発

2017年09月07日

急速に拡大している中国の電子商取引(EC)市場で販路拡大を図ろうと、日本企業は越境ECの活用に注目しつつある。ジェトロは8月10日、中国EC大手の京東(JD.com、以下JD)の広報担当者に、越境ECの取り組みなどについてインタビューした。

携帯端末からの注文が主流に

(問)中国のEC市場の概況は。

(答)1人当たりGDPや所得の増加により、正規品や品質の良い商品に対する中国人消費者の需要が引き続き高まっている。JDは設立以来、一貫して正規品を取り扱っている。

市場調査会社イーマーケッター(eMarketer)の予測によると、中国のEC小売額は2018年までに1兆ドルに達し、世界EC市場の40%を占めるとみられている。またアイリサーチ(iResearch)のデータでは、中国の2016年のインターネットショッピング市場における販売額は前年比31.6%増の2兆6,000億元(約41兆6,000億円、1元=約16円)となり、同市場販売総額の55.3%を占めた。EC市場の成熟に伴い、商品の品質やサービスのレベルが消費行動に影響を与える重要な要素となりつつある。中国人消費者による商品の品質やサービスに対する要求は、EC市場の持続的かつ急速な発展を促し、ネットショッピング産業発展の推進力となる。

携帯端末を用いたネットショッピングが主流となりつつあり、2016年にJDが受けた注文の8割は携帯端末経由だった。また、ネット大手テンセント(騰訊)との戦略提携によって、JDの潜在顧客は9億3,800万人に達している。

EC市場は年々拡大しており、中国の人々にとって重要な消費のプラットフォームになっている。2017年の「JD618」セール(6月1~18日に実施)の取引額は1,199億元となり、7億超の商品を販売した。同セールでは1世帯当たり1.6個の商品をJDで購入したことになる。2017年の消費データによると、女性消費者向け商品、例えば衣類、宝石類、ベビー用品などの販売が大幅に増加した。女性による消費がメインである家庭用繊維製品(布団、カーテン、テーブルクロス、タオルなど)は、快適性や質感が注目され、高付加価値商品が売れるようになってきた。「JD618」セールにおける家庭用繊維製品全体の単価は前年比25%上昇した。

日本製品は品質に強み

(問)日本から出品されている商品ではどのようなものが人気か。

(答)中国人消費者の日本商品に対する需要は旺盛で、商品の品質により注目するようになっているが、日本商品の強みはまさに品質だ。2016年のJD「全球購」(越境ECプラットフォーム)において、日本製品の販売額は3桁増となった。

JDのプラットフォームにおける日本の人気商品としては、健康食品、ベビー用品、化粧品などがあり、このほかにも、魔法瓶、鍋、温水洗浄便座、収納用具、米びつなどが売れ筋だ。

また、連携している日本企業には楽天、花王、コーセー、ユニ・チャーム、TOTO、パナソニックなどがある。

日本企業との協力に期待

(問)越境EC取引に関する課題と、解決に向けた取り組みは。

(答)日本企業はJD「全球購」を通じて、越境EC取引の手続きを簡素化できる。日本ブランドや日本企業は中国で会社を設立しなくても、「全球購」を通じてJDの2億3,600万人以上のユーザーと直接接することができる。「全球購」のプラットフォームを活用することで、中国本土で運営する場合に必要となる人的・物的コストを大幅に削減できる。JDは日本企業との協力に大いに期待している。ワンストップで越境ビジネスに関する運営、物流、宅配サービスに特化したマーケティングなどのトータルソリューションを提供する。日本企業の中国市場でのブランドイメージ構築や認知度向上に協力し、日本ブランド、日本企業と一緒に中国市場における新たなビジネスチャンスを探りたい。

(問)日本からの出店・出品、商品調達に関する注意事項は。

(答)日本企業の強みはブランド力と品質だ。ECプラットフォームに偽造・模倣品が出品されていたり、商品の発送が遅れたりすると、その商品・企業に対するイメージに悪影響を与えてしまう。JDは良好なサービスと正規品の提供に力を入れている。これはJDが長年信頼されている重要な要素でもある。ブランドの知的財産権などの権利保護にも取り組んでいる。ブランドの権利はJDに侵害されないことを保証する。JDは強い自前の物流ネットワーク、優れたサプライチェーン、先進的なネット技術を武器に、中国の消費者に最良のユーザー体験を提供している。また、中・高所得層を主とする2億5,800万人のアクティブユーザーを有しているので、日本企業が素早く中国の消費者と触れ合えるようお手伝いできる。

なお、日本からの出店・出品、商品調達に関してのコンタクト先は以下のとおり。

〇担当部署:国際業務開拓部

担当者名:張雲澤(広報&BD担当、日本語・英語可)

電話:070-4323-1267(日本)、+86-150-2185-1729(中国)

Email:zhangyunze@jd.com

〇担当部署:家居日用部―誘致部

担当者名:阮靖

電話:+86-139-1160-3206(中国)

Email:ruanjing@jd.com

(張敏、宗金建志)

(中国、日本)

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