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政府・産業界が大枠合意を歓迎、輸出拡大に期待

(オーストリア、EU、日本)

ウィーン発

2017年08月15日

日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意(7月6日)について主要メディアは、G20の開催を前に合意されたことは、世界の自由貿易の原則を維持するという強いシグナルを発信したと評価している。政府関係者や産業団体は日EU・EPAを歓迎し、特にオーストリア企業の対日輸出の拡大に期待している。その一方で、投資裁判所の設置問題など時間を要する課題が残されているとの指摘もある。

解決すべき問題が多いとの指摘も

日刊紙「デア・スタンダード」(7月6日)は、今回の合意は、両者の経済関係を促進するだけでなく、世界における自由貿易の原則も強化すると報じた。しかし、大枠のみの基本的な合意のため解決すべき点が多く、「例えば、投資家対国家の紛争解決手続き(ISDS)のための専門裁判所の設立については、EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)でも争点になった(2016年7月25日記事参照)が、まだ合意に至っていない。また、互いに市場を開放し、持続可能な成長をしていくために、環境や労働に関する法令や国際的な約束を順守することが重要で、双方がこれに合意した」と伝えた。

ハラルド・マーラー科学・研究・経済相は7月20日、オーストリア通信社(APA)のインタビューで、日EU・EPAの大枠合意を歓迎すると同時に、日本の貿易相手国としての重要性を強調した。合意に至っていないISDSが今後の山場になるとし、「今後の交渉の中でも特に投資家保護や規制協力について交渉内容が共有されることを望み、われわれの基準・価値観に合致した合意内容となるよう注視していく」と述べた。基本的に日EU・EPAはオーストリア企業にとって、日本市場で活動を拡大するチャンスだとする。同相によると、観光、農林業、人工知能、環境技術などの分野で、日本企業がオーストリア企業のノウハウに興味を示しているという。

連邦産業院(WKO)の金融・貿易課のクラウディア・ストーワッサー氏はジェトロの問い合わせに対し、大枠合意は最終的な交渉結果ではないので、現在のところオーストリア企業への影響についてきちんとした評価は不可能、と回答した。WKOは企業を代表して、当初から協定交渉の過程に関わっており、会員企業との継続的な意見交換に基づいて、要求や懸念を交渉団に伝えてきた。結果として、オーストリア企業の要求はおおむね取り入れられたので、WKOは交渉結果を歓迎しているとみられる。オーストリア企業は、日EU・EPAにより主に財やサービスの貿易または投資における障壁が撤廃され、輸出が拡大することを期待している。積み残された論点の交渉はまだ続くが、最終的にはEU加盟国が全て賛成するに違いない、とストーワッサー氏は予想する。

WKOは、2017年5月にウェブサイトに公開した日EU・EPAファクトシートにおいて、EPAの利点として、(1)財やサービス、投資の取引の簡素化の実現、(2)法令や他の技術的規則の透明化および関税などの行政手続きの簡素化、(3)不当な貿易障壁の消滅、(4)公的事業への参入の改善、などを挙げている。

オーストリア産業連盟(日本の経団連に相当)のクリストフ・ノイマイヤー事務局長は「当連盟は、EUと日本の自由貿易協定を歓迎する。この協定は双方に多くの成長と雇用をもたらすことになり、他方ではグローバルな貿易システムの重要な土台となる。大枠合意は今後の交渉を活発にする重要なシグナルになるだろう」と述べた。さらに、「協定の評価は最終的な内容を精査してからになるが、オーストリアはEUがこれまで締結した36の自由貿易協定から大いに利益を得たことは確実だ」とした。

主要輸出品目は豚肉・牛肉とワイン

オーストリア農林省はジェトロの問い合わせで、日EU・EPAに関して、「オーストリアは農産物の輸出を重要視している。人口1億2,700万の日本は、規模が大きく購買力の高い市場だ」と答えた。同省によると、現在、農産物・食料品の輸出先として日本は22位で、その貿易収支は大幅な黒字(7,100万ユーロ)だ。日本への主要輸出品目は、豚肉、牛肉およびワイン。日本の酪農製品市場の開放はEU全体では重要だが、オーストリアへの影響は少ない。輸入では、EUの食品基準が採用されることが大切だとし、今後とも成長ホルモン使用肉の輸入が禁止され、遺伝子を組み換えた作物の輸入もEUの表示規則が適用されることになっている。農林省は、日EU・EPAの大枠合意に含まれている環境保護および被雇用者保護も高く評価している。

大きなメリットは非関税障壁の軽減効果

ウィーン比較経済研究所(WIIW)エコノミストのユリア・グリューブラー氏は、ジェトロの問い合わせに対し、オーストリア経済への影響について以下のように述べた。

日本はオーストリアの輸出先として金額では1%にも満たないが、EU域外の貿易相手国のトップ5に入っており、対日輸出のシェアは少しずつ拡大している。その一方、日本からの輸入は横ばいだ。現在、日本もEUも、同じ品目(農産物、酪農品、飲料品、繊維および衣類)を関税で保護しており、特に酪農品の関税が高い。また、衛生植物検疫措置(SPS)や数量規制(QRs)などの非関税措置が農産品の対日輸出量を低く抑えているという分析もある。ドイツのシンクタンク、ベルテルスマン財団の世界経済動向の研究プロジェクト(GED)によると、日EU・EPA発効後10年間のオーストリア経済への効果は、年間GDPの0.05%(韓国・EUのFTAとほぼ同じ)と試算され、主に非関税障壁の軽減効果によるという。

グリューブラー氏は、関税だけがEPAの対象となる場合は、オーストリアにはむしろマイナス効果が発生することを指摘する。ただし、非関税障壁軽減の効果については、品目別により詳細な研究が必要、とした。

(エッカート・デアシュミット、田中由美子)

(オーストリア、EU、日本)

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