日本の輸出が2桁の伸び、貿易赤字は縮小-2017年上半期の日中貿易を分析-

(中国、日本)

中国北アジア課

2017年08月17日

ジェトロが財務省貿易統計と中国海関統計を基に、2017年上半期の日中貿易を双方輸入ベースでみたところ、総額は前年同期比9.1%増の1,552億6,298万ドルとなり、半期ベースで2年ぶりに増加に転じた2016年下半期より6.3ポイント伸びが加速した。日本の輸出(中国の対日輸入、以下同じ)は15.8%増の768億6,747万ドル、輸入は3.3%増の783億9,551万ドルで、日本の対中貿易収支は15億2,803万ドルの赤字となったが、赤字幅は前年同期比83.9%縮小した。

輸出:機械など主要品目が軒並み増加

日本の輸出(中国の輸入統計、注)は、前年同期比15.8%増の768億6,747万ドルだった。主要品目で軒並み増加し、中でも構成比21.0%の機械などは2桁増となった。2016年下半期に続いて2期連続の増加となり、伸び幅は2011年上半期以降、6年ぶりに2桁となった。品目別の特徴は以下のとおり。

(1)機械は、金額で前年同期比23.4%増となった。スマートフォンやデータセンター向けサーバーの需要拡大による中国国内の設備投資を受け、半導体、集積回路など製造用機器が35.7%急増した。

(2)車両は、金額で前年同期比30.6%増となった。乗用車では高級車の輸出が好調で、自動車部品はその68.1%を占めるギアボックス・同部品が37.0%増となり牽引した。

(3)電気機器は、金額で前年同期比7.4%増となった。スマートフォンや自動車の電装化向け需要の拡大により、集積回路のうち記憶素子などの輸出が牽引したほか、半導体デバイスや接続用の機器など主要品目が金額、数量ともに増加した。

(4)有機化学品は、原油価格の上昇を受けて単価がアップし、金額では2016年通年の11.7%減から18.2%の増加に転じた。中国のインターネット通販の急成長に伴い、梱包(こんぽう)用発泡スチロールの基礎原料となるベンゼンの需要が伸びて輸出が拡大したことが寄与した。

輸入:タブレット型端末や通信機器が好調

輸入は前年同期比3.3%増の783億9,551万ドルと、半期ベースで3年ぶりに増加に転じた。電気機器や機械などの主要品目で拡大した。品目別の特徴は以下のとおり。

(1)電気機器は、金額で前年同期比3.6%増となった。スマートフォンなどの携帯端末は金額・数量ともに減少したが、通信用の送受信装置、通信機器の部分品、基地局などが増加したことで、全体としての伸びは加速した。

(2)機械は、金額で前年同期比4.9%増となった。40.4%を占めるタブレット型端末などの自動データ処理機械が、数量の増加と単価の上昇により12.1%増となった。

(3)衣類および衣類付属品、履物は金額が減少した。これら製品の輸入先として中国は依然最大だが、東南アジアなどへの生産拠点の移管が進み、中国のシェアは低下傾向にある。

(4)玩具、遊戯用具および運動用具は、金額で前年同期比19.1%増加となった。ビデオゲーム用のコンソールまたは機器が78.0%増と急増した。

中国は貿易総額と輸入額で1位

日本の対世界貿易において、中国は貿易総額と輸入額で1位を維持した。輸出額では2位となったものの、2013年以降1位を維持している米国との差は0.8ポイントだった。

ジェトロの分析によると、2017年通年の対中輸出、輸入の見通しの特徴は以下のとおり。

○輸出

(1)電子部品や半導体製造装置類は、中国での米スマートフォン大手の新型機種生産に伴う特需が上半期でピークとなり下半期には落ち着くものの、生産拠点である中国において、自動車の電装化、省エネ型サーバー、製造現場における自動化ニーズなど用途が拡大することにより、輸出拡大が継続すると見込まれる。

(2)機械は、中国でIT関連投資に加え、電気自動車(EV)関連の設備投資、住宅やインフラ開発向け建設機械の需要が継続するとみられることから、工作機械の日本からの輸出が下半期も堅調に推移することが見込まれる。

(3)車両は、高級車を中心とする輸出がしばらく続くとみられる。また、中国での環境規制に伴い、プラグインハイブリッド車などの需要が増加すれば、完成車や関連部品の輸出の拡大が期待できる。

○輸入

(1)電気機器は、下半期には米スマートフォン大手の新型機種の発売が予定されていることから、上半期は減少した携帯端末の輸入が増加に転じ、電気機器全体の伸びも拡大すると見込まれる。

(2)衣類は、中国での人件費上昇に伴い低価格品を中心に東南アジアなどへの生産移管が進んでおり、輸入の減少傾向は変わらないものと見込まれる。

(3)化学品は、中国における環境規制の強化や法令順守の厳格化に伴い、化学品生産工場の操業環境が厳しくなりつつあることから、輸入を下押しする可能性がある。

なお、調査レポートの全文はジェトロのウェブサイトを参照。

(注)この分析は、日本の対中輸出を中国の輸入統計でみる「双方輸入ベース」となっている。これは貿易統計が輸出を仕向け地主義、輸入を原産地主義で計上しており、香港経由の対中輸出(仕向け地を香港としている財)が、日本の統計では対中輸出に計上されないため。中国の輸入統計には日本を原産地とする財が全て計上されることから、両国間の貿易は双方の輸入統計のデータがより実態に近いと考えられる。なお、中国の輸入統計はドルベース、日本の輸入統計はグローバル・トレード・アトラス(Global Trade Atlas)によるドル換算値を用いている。

(黄海嘉、小宮昇平、田中琳大郎、清水絵里子、楢橋広基)

(中国、日本)

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