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EU離脱が経済に影響、英中銀が成長見通しを下方修正

(英国)

ロンドン発

2017年08月10日

イングランド銀行(中央銀行)は8月3日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利の据え置きを決定した。また、通貨ポンドの下落や家計消費の減少に加え、企業活動が停滞するなどEU離脱(ブレグジット)に係る経済への影響が具現化してきたとして、2017年のGDP成長率見通しを5月時点の1.9%から1.7%へ、2018年を1.7%から1.6%にそれぞれ下方修正した。


ブレグジットに伴う不確実性で企業投資が消極化

中銀は8月3日のMPCで、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。前回(6月15日)のMPCでは、委員8人のうち3人が利上げを支持した(2017年6月28日記事参照)が、今回は利上げ支持が2人にとどまるなど、利上げの機運は後退した。成長見通しについては、家計実質所得の減少により引き続き消費が減少するとして、GDP成長率を下方修正した。

マーク・カーニー総裁は記者会見で、EU離脱プロセスは「スピードや程度は異なるが、金融市場、家計部門、企業活動それぞれに影響を及ぼしている」とし、特に英国内の供給サイドについて、ブレグジットに伴う不確実性が企業の設備投資や新規市場開拓への投資判断を遅らせていると指摘した。中銀が実施した1,000社に対する調査結果では、約4割の企業がEU離脱に係る不確実性により、サプライチェーンや消費市場で何らかの影響があると回答するなど、英国経済は2016年6月の国民投票実施以降も比較的好調を保ってきたにもかかわらず、企業投資はそれに比べて消極的なものだったとしている。

2017年6月の総選挙以降、通貨ポンドは徐々に回復基調にあり、MPC前日の8月2日には11カ月ぶりの高水準となる1ポンド=1.3223ドルまで上昇した。しかし、今回の中銀の経済予測を受けて金融市場は即座に反応し、3日は1.3138ドルに、4日には1.3040ドルにまで急落した。カーニー総裁は、ブレグジットの影響により、ポンドの下落傾向は続くと見通している。

英国自動車製造販売者協会(SMMT)が8月4日に発表した統計では、ブレグジットなどの不確実性を要因として、7月の新車(乗用車)登録台数は前年同月比9.3%減と、4カ月連続の減少になった。その内訳をみると、事業用(23.8%減)、フリート(10.1%減、注)、個人用(6.8%減)ともに大幅減で、個人消費や企業活動など全般に影響が出つつある。

中銀の見通しは「楽観的過ぎる」との声も多く

エコノミストの間では、今回の成長見通しの下方修正について、中銀の見通しは楽観的過ぎるとする声も多い。英国商工会議所(BCC)はMPCの結果を受けて8月3日、「英国経済の短期的見通しについて、中銀の予測はいまだ若干楽観的過ぎる。われわれは年内にインフレ率が中銀の見通しより高い3.4%に到達すると見込んでおり、企業からはコスト上昇により収益が圧迫され、投資意欲にも影響が出ているとの声が上がっている」とのコメントを発表した。

英国の調査会社ファソム・コンサルティングは英国の家計部門について、2016年の消費の堅調さがあだとなって、貯蓄が減少し家計が圧迫されているとして、実質所得の減少に適応する余力がほとんどなく、2016年の英国経済の堅調さは痛みの「先延ばし」だった、と分析した。同社はGDP成長率の見通しについて、2017年を1.3%、2018年を0.4%と中銀より大幅に低く予測している。

今回発表した成長見通しについて、カーニー総裁は「EU離脱がスムーズに行った場合」を前提としたものだ、と述べた。そして、EUとの将来の経済関係に関する不確実性が企業や家計の判断に影響し、需要と供給がともに成長を引き下げるとして、離脱交渉が決裂して協定の空白期間が生じる事態(クリフエッジ)とならないよう、移行協定の重要性を訴えた。

(注)フリートは、自動車会社自身またはリース会社に何十台かまとめて販売されて、企業にリースされる車両。なお、事業用はばら売りで、企業が直接購入してビジネスに使う車両。

(佐藤丈治)

(英国)

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