欧州委、在英2機関の移転候補地評価に着手

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年08月02日

欧州委員会は8月1日、英国(ロンドン)所在のEU専門機関である欧州医薬品庁(EMA)および欧州銀行監督局(EBA)の移転候補地について、加盟国からの申請を評価する手続きを開始すると発表した。申請した23都市が公表され、注目されるEBAについては、フランクフルト、ルクセンブルク、パリ、プラハなどが名乗りを上げた。欧州委は評価結果を9月30日に公表、11月には最終決定する予定だ。

誘致を申請した23都市が明らかに

欧州委は8月1日、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴い、本拠地となっているロンドンからの移転が想定されているEMAおよびEBAについて、加盟国からの受け入れ申請を評価する手続きを開始したと発表した。申請は7月31日に締め切られ、下記の23都市から誘致の希望が出ている。

【EMAおよびEBAを申請した都市】

ブリュッセル(ベルギー)、ダブリン(アイルランド)、ウィーン(オーストリア)、ワルシャワ(ポーランド)

【EMAのみ申請した都市】

アムステルダム(オランダ)、アテネ(ギリシャ)、バルセロナ(スペイン)、ボン(ドイツ)、ブラチスラバ(スロバキア)、ブカレスト(ルーマニア)、コペンハーゲン(デンマーク)、ヘルシンキ(フィンランド)、リール(フランス)、ミラノ(イタリア)、ポルト(ポルトガル)、ソフィア(ブルガリア)、ストックホルム(スウェーデン)、ザグレブ(クロアチア)、マルタ(都市名記載なし)

【EBAのみ申請した都市】

フランクフルト(ドイツ)、ルクセンブルク(ルクセンブルク)、パリ(フランス)、プラハ(チェコ)

ブレグジット交渉とは無関係に評価

欧州理事会は候補地としての妥当性を測る基準として、(1)ブレグジットと同時に当該機関として機能できることの保証、(2)適切な交通アクセス(EU加盟国の首都からのフライト接続、宿泊能力など)、(3)機関職員の子女に対する適切な教育施設、(4)機関職員の家族などに対する社会保障、医療水準の確保および労働市場へのアクセス、(5)業務継続性、(6)地理的分散(特定国にEU機関が集中しないこと)の6条件を示している。

欧州委は、この申請評価手続きはブレグジット交渉とは無関係としており、英国を除くEU27カ国の協議で決まるとしている。EU27カ国は6月の首脳会議で、これら2専門機関の移転手続き開始を了承(2017年6月23日記事参照)しているが、欧州委は(英国のEUからの離脱完了が想定される)2019年3月以降の業務停滞を回避するため、迅速な決定を求めるとしている。

欧州委は評価結果を9月30日に公表する予定で、10月のEU一般問題理事会(ルクセンブルク)での協議を経て、11月の同理事会で最終決定することにしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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