EU首脳会議、2つの在英EU専門機関の移転を了承-受け入れ国を7月末まで公募-

(EU、英国)

ブリュッセル発

2017年06月23日

フランスの大統領選挙や英国の総選挙の実施以降で初めてのEU首脳会議が6月22日からブリュッセルで開かれ、「英国のEU離脱(ブレグジット)問題」「テロ対策」「防衛協力」「パリ協定」「ウクライナ情勢(ロシアに対する経済制裁措置)」などについて協議した。英国のテレーザ・メイ首相がブレグジットをめぐる政府の方針を説明するなど、ブレグジット問題について時間が割かれ、英国を除くEU27カ国首脳は英国に本拠を置く欧州医薬品庁(EMA)と欧州銀行監督局(EBA)の2機関の移転先選定手続きを進めることについて了承した。

2017年秋までに受け入れ国を決定へ

欧州理事会(EU首脳会議)が6月22日から2日間の日程でブリュッセルで開催された。欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は初日の会合後に開いた記者会見で、「EU首脳会議はブレグジット交渉のための準備フォーラムではない。このことははっきりさせておく」と指摘し、ブレグジット問題に質問が集中することを牽制した。ただ、トゥスク常任議長は同時に、「(ブレグジット問題に関わる)今夜の目標は、英国(ロンドン)に本拠を置く欧州医薬品庁(EMA)と欧州銀行監督局(EBA)の移転先選定手続きについてのEU27カ国首脳の了解を得ることだ」とも語った。

欧州理事会は6月22日深夜に、「現在、英国に本拠を置くEU専門機関の移転手続きに関わる決定」を発表した。EU27カ国の首脳から、ブレグジットに伴い、ロンドンに本拠を置くEMAとEBAの2機関の移転先選定手続きを進めることについての了承を得たことを明らかにした。

欧州理事会の発表によると、当該2機関についての受け入れ(ホスト)国選定は、各機関の運営実務に即した要件・基準を定め、公正で透明性の高い手法によって行うとしている。全てのEU加盟国に応募の資格があり、7月31日までに受け入れ提案を行うことを求めている。当該2機関の両方について応募することも可能だ。欧州委員会が各加盟国からの提案を審査、要件・基準に照らして適性を判断し、2017年秋までには移転先を決定する見通しだ。2017年11月開催のEU一般問題理事会で決定する予定としている。

EUでは伝統的に専門機関をEU域内で分散する傾向があるが、(1)英国のEU離脱の日までに、当該専門機関を設置・稼働させることの保証(情報通信セキュリティーの確保など立地条件も評価される)、(2)適切な交通アクセスの確保(EU加盟国の首都からのフライト接続、宿泊能力など)、(3)当該専門機関職員の子女に対する適切な教育施設の整備、などの基本要件を満たす必要がある。

なお、2専門機関のうち、EMAは約900人、EBAは約200人の職員を抱えている。

英仏の主要選挙実施以降初の首脳会議

今回のEU首脳会議はフランスの大統領選挙と国民議会選挙、英国総選挙の実施以降で初めての開催となったことから、「テロ対策(主に国境管理に関する情報共有システム構築など)」「防衛分野での協力」「温暖化対策に関するパリ協定」「ウクライナ情勢とロシアに対する経済制裁措置」など多岐にわたった。しかし、メイ首相が直接、ブレグジットをめぐる英国政府の方針を説明するなど、交渉が始まったブレグジット問題(2017年6月20日記事参照)が、EUにとってもとりわけ重要な局面を迎えていることがうかがえる。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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