スチレン・ブタジエンゴムのAD調査を開始-日本や米国など4カ国産が対象-

(メキシコ)

米州課

2017年08月21日

メキシコ経済省は8月10日、米国、ポーランド、韓国、日本を原産国とするスチレン・ブタジエンゴム(SBR)に対するアンチダンピング(AD)調査を開始する決定を官報公示した。SBRはタイヤや防振ゴムなどの原料として広く用いられる合成ゴムで、日本からの輸入も比較的多い。AD税が導入された場合に影響を受けると想定される利害関係者は、所定のフォーマットで経済省に対する意見書を作成し、必要に応じて根拠書類などを提出することができる。

タイヤや防振ゴムなどの原料となるSBR

今回のAD税の調査対象となるのは、HS4002.19号に分類されるSBRおよびカルボキシル化スチレン・ブタジエンゴム(XSBR)のうち、国際ゴム製造者業界(IISRP)のコード番号1500シリーズのコールドSBR、1700シリーズのコールド油展SBR、1900シリーズのハイスチレンゴムの3種類。SBRは、タイヤや防振ゴム、履物、シール材などさまざまな工業製品に用いられる合成ゴムだ。

経済省は、メキシコで唯一これらのゴムを製造するネグロメックス(Negromex)からのAD調査開始申請の内容を分析した結果、調査の開始を正式決定した。ネグロメックスはメキシコの大手財閥クオ・グループ(Grupo Quo)の傘下にある合成ゴムメーカー。石油化学産業の集積地であるタマウリパス州アルタミラに工場を持つ。1999年にクオ・グループの化学部門とスペインのレプソルが合弁会社ディナソル(Dynasol)を設立したため、そのメキシコ工場の位置付けとなる。アルタミラ工場のゴム素材の生産能力はSBRとニトリルゴム(NBR)を合わせて年間13万トン。

経済省はネグロメックスが提出した情報を分析し、米国、ポーランド、韓国、日本からSBRのダンピング輸入が行われている可能性および同輸入が国内産業に損害を与えている可能性があることを認め、2015年11月1日~2016年10月31日をダンピング輸入の調査対象期間とし、国内産業への損害を分析する調査期間は2013年11月1日~2016年10月31日とした。

日本からの輸入量は2016年に減少

メキシコの通関統計でHS4002.19号に分類されるSBRおよびXSBRの輸入をみると、最大の輸入相手国は米国で、ドイツ、日本、スペイン、タイ、ポーランドと続く(数量ベースの順位)。なお、同HSコードに分類されていても、今回のAD調査の対象となっていないものもあることから、近年、輸入が急速に伸びているドイツやタイなどはAD調査の対象となっていない。

日本からの輸入は2013~2015年に大きく伸びたが、2016年は2,401トンと前年比41.3%減少した(表参照)。輸入平均単価をみると2016年は1トン当たり2,278ドルで、他の調査対象国と比べると高い。

表 メキシコの主要国別合成ゴム(SBR・XSBR)輸入

利害関係者は9月18日までに意見書の提出が可能

日本産のSBR輸入が今後の経済省の調査でダンピングと判定されない可能性もあるが、AD判定された場合のビジネスへの影響を懸念する利害関係者は、調査開始の官報公示から5営業日後(現地時間8月17日)から、その後23営業日以内(同9月18日の午後2時まで)に、経済省の国際通商措置ユニット(UPCI)に対し、所定のフォーマットで意見書を作成し、根拠書類などとともに提出することができる。

想定される利害関係者として、経済省は、42のメキシコの輸入業者、59の外国の輸出業者と4カ国の在メキシコ大使館を現時点で認識しており(8月10日付官報で公示されたAD調査の開始を公示する決定文書の19)、意見書の提出機会を通知する文書をそれぞれに送付している。42の輸入業者の中には、進出日系企業としてブリヂストン・メキシコが掲載されており、59の外国の輸出業者のうち日本企業および在外日系企業としては、JSRトレーディング、三井プラスチック(在米拠点)、白石カルシウム、東京材料、ゼオン・アジア(在シンガポール)、ゼオン・ケミカルズ(在米)の6社が掲載されている。

経済省に対する意見書のフォーマットは、輸入業者用PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)輸出業者用PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で分かれており、両方ともメキシコ経済省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロードできる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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