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EU関税同盟離脱後の2つの選択肢を公表-暫定的な関税同盟も提言-

(英国、EU)

ロンドン発

2017年08月17日

政府は8月15日、EU関税同盟からの離脱後の関税制度についての考え方を明らかにした。英国・EU間の関税上の諸手続きを最大限に簡素化する案と、新たな関税上のパートナーシップを構築する案を示したほか、離脱直後の時限措置として暫定的な関税同盟を結ぶことも提起している。


通関書類の免除などを想定

将来の関税制度についての考え方は、財務省とEU離脱省が共同で公表した。テレーザ・メイ首相が、EU離脱後にはEU単一市場に加えEU関税同盟を離脱すると主張する一方で、残留を求める声も根強く残り、大きな争点となっていた。

今回公表された将来のパートナーシップに関する文書では、関税同盟離脱後の英国・EU間の関税制度について2つの選択肢が提起されている。1つ目は、最大限に簡素化された関税上の取り決めについて合意することだ。この案では、英国・EU間の貿易のために、現在のEU域外国との手続きを継続するという前提に立ち、関税についての諸手続きを可能な限り簡素化しようとする。例えば、英国・EU間の製品の移動に対しては搬入と搬出の略式申告を免除することなどが想定されている。また、港湾・空港などでの通関手続きの時間短縮のために、手続きの優遇を受けられるAEO事業者を相互認証することなども提言された。これらの実現には、英国・EU双方の協力が不可欠だが、英国独自の取り組みとしても関税額の自己評価などの簡素化により、事業者が両地域での貿易を行いやすい環境を整備する考えが示された。

英国経由の製品の取り扱いはEU制度に準拠

2つ目の案はEUとの新たな関税パートナーシップの構築だ。前述の通関手続きの簡素化があくまで第三国との貿易を前提として対策を講じようとしているのに対し、この案では英国とEU間で特別な関係を構築することを志向している。具体的な手段として挙げられているのが、英国経由でEUに入ってくる第三国製品の取り扱いについてのEU制度への準拠だ。EU加盟国内での最終消費を想定して第三国から英国経由で輸入される製品に適用される関税や原産地規則などは、EUが第三国に対して適用している制度をそのまま英国にも取り込む。これにより、英国経由でEUに入ってくる第三国製品も英国国境においてEU制度上求められる手続きを経たことになるため、英国からEUへの移動に当たっての手続きが不要になる。

その一方で、英国を最終消費地として第三国から輸入される製品に適用される関税などは英国が独自の貿易政策として決定できる。ただし、この新たなアプローチの実現には、エンドユーザーまでを対象とする追跡メカニズムなどの支援制度の充実が求められ、作業には時間を要するという見方も示されている。

離脱直後の暫定的な関税同盟も提案

関税上の手続きの簡素化、新たなパートナーシップ構築のいずれの案を採る場合でも、産業界に必要な移行期間を設けることも提起された。すなわち、EU関税同盟からの離脱直後に適用される新たな関税同盟を結ぶというもので、同盟は期間を限ったものとし、この期間中は無関税貿易と共通対外関税が維持される。

今回示された考え方について、デービッド・デービスEU離脱相は「EUにとっても英国にとっても便益となるだけでなく、関税制度の激変を緩和することで双方の企業・市民を『崖っぷち(クリフエッジ)』に追いやることを回避する」と述べ、フィリップ・ハモンド財務相も「英国の企業が引き続きEUのパートナーと貿易を行いつつも、EUにとどまらない市場開拓を進めることに資するもの」と評価した。

産業界の反応をみると、将来的なEUとの関税の取り扱いについての政府の統一方針が明らかになったことや、暫定的な関税同盟の設定が提起されたことを歓迎する声が目立つ。英国産業連盟(CBI)は「暫定期間まで関税同盟を延長するのは極めて重要な第一歩で、この明確化は長期的な投資判断に不可欠」とコメントした。また、英国経営者協会(IoD)は「EU離脱後の関税上の取り扱いの方向性が具体的なかたちで明らかになったことを極めてポジティブに捉えている」と述べた。他方、英国商工会議所(BCC)は「関税の取り扱いについての政府としてのより詳細な考え方が示されることを期待するとともに、EU側がどのように反応するか注視している」と、産業界に対する一層の説明を求めつつ、EUという交渉相手が存在することを見落としてはならない点を強調した。

(佐藤央樹)

(英国、EU)

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