北京市の最低賃金、9月から2,000元に5.8%引き上げ

(中国)

北京発

2017年08月09日

北京市人力資源・社会保障局は、9月1日から最低賃金を月額1,890元から2,000元に引き上げると発表した。上海市(2,300元)、広東省深セン市(2,130元)、天津市(2,050元)にほぼ並ぶ高水準となったが、上昇率は5.8%と前回(2016年9月)の改定率9.9%より大きく鈍化した。

上昇率は5.8%と大きく鈍化

北京市人力資源・社会保障局は7月10日、「北京市の2017年の最低賃金基準の調整に関する通知」(京人社労発[2017]149号)を発表した。同通知によると、9月1日から北京市の正社員(全日制労働者)の最低賃金基準が月額1,890元から2,000元(約3万240円から約3万2,000円、1元=約16円)に引き上げられる。時給換算では10.86元から11.49元に引き上げられることとなる。

中国新聞網の7月16日付の報道によると、同時点において北京市、天津市、上海市、江蘇省、山東省、福建省、陝西省、貴州省、甘粛省、湖南省、青海省の11省・直轄市および深セン市で最低賃金の改定が行われた。そのうち、北京市は上海市(2,300元)、深セン市(2,130元)、天津市(2,050元)に次ぐ高水準となった。

北京市の最低賃金の上昇率をみると、2010年と2011年は20%以上の水準で、2012年から2016年までは10%前後の水準で推移してきたが、2017年は5.8%と大きく鈍化した(図参照)。

図 北京市の最低賃金推移

北京市のほか、上海市(5.0%)、天津市(5.1%)、深セン市(4.9%)の最低賃金上昇率も5%程度に鈍化している。

また、2017年上半期に最低賃金の改定を発表した11省・直轄市のうち、福建省、陝西省、貴州省、甘粛省、湖南省は2016年に改定を行っておらず、青海省にいたっては2014年以来3年ぶりの引き上げとなった。

中国の第13次5カ年規画では、2020年の都市住民・農民の1人当り収入を2010年の2倍にする目標が打ち出されており、今後も一定の上昇が続いていくとみられる。しかし、経済成長が鈍化しているため、企業の人件費増加に配慮した最低賃金改定が行われている。

なお、北京市の同通知では、これまでの引き上げ時と同様に、以下の4項目は最低賃金基準の構成要素ではないとしている。

(1)「中班」(昼過ぎから夜にかけての勤務)、夜勤、高温、低温、地下、有毒有害物などの特殊な作業環境・条件下での手当

(2)残業、時間外賃金

(3)労働者個人が納付すべき社会保険料と住宅積立金

(4)国と北京市の規定により最低賃金基準に算入しないと決められたその他の収入

パートタイムの時給は22元に

パートタイム労働者(非全日制労働者)の時給の最低賃金の基準は21元から22元に、休日労働の最低賃金の基準は49.9元から52.6元に引き上げられた。これらの基準には、企業と労働者本人が納付すべき養老・医療・失業保険料が含まれる。

そのほか、出来高払い形式の企業については、労使対等の協議を通じて労働ノルマと出来高単価を確定し、労働者に法定労働時間内の正常な労働の提供が前提であることを保障し、賃金が北京市の最低賃金基準を下回ってはならないとしている。

さらに、経営が正常で利益が増加している企業は、労働者が法定労働時間内に提供する労務に対し、原則として最低賃金基準以上の賃金を支払うべきだとした。経営が困難で、最低賃金を全労働者または一部ポストに支払う必要がある場合、賃金集団交渉または従業員代表大会での議論を行わなければならないとする。

労働契約の中で、労働者が労働ノルマあるいは請け負った仕事を達成できなかった場合、企業は最低賃金基準より低い賃金を労働者に支払うことができる条項を設けたとしても、その条項は法的拘束力を持たないとしている。

(張敏)

(中国)

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