低配当企業の実質的な法人税率が37.5%に拡大-2017/2018年度税制改正と日系企業の見方(2)-

(パキスタン)

カラチ発

2017年08月01日

2015/2016年度から導入された内部留保税は、配当金額などが一定条件を下回った企業が対象となり、企業の内部留保金に対して10%が課税される税金だ。同税は日系企業も問題視していたが、今回の改正により、課税対象は内部留保金ではなく税引き前利益に変更となった。税引き後純利益の40%以上を配当していない企業は同税の対象となるため、実質的に法人税率が7.5%分、上乗せされるかたちとなる。連載の後編。

免税条件の1つが撤廃に

内部留保税は、正式には「未配当の剰余金に対する税金(Tax on Undistributed Reserve)」という名称で、公開株式会社による配当性向を高めることを目的としている。

内部留保税の課税対象者は上場企業で、決算後6カ月以内に配当を行っていない会社、または配当後も、払込資本金と同額以上の内部留保を持つ会社だ。ただし、(1)当該会計年度の税引き後純利益の40%相当以上を配当した会社、または(2)払込資本金の50%以上に相当する額を配当している会社は、同税の対象から除外されていた。

ジェトロの調べでは、2015/2016年度、2016/2017年度とも、当地日系企業はいずれも免税条件を満たしており、同税を納付した企業はない。しかし、2017/2018年度からは、(2)の条件は撤廃となり、残る免税条件は(1)のみになった。そのため、課税対象となる日系企業が出てくる可能性もある。

課税対象項目は内部留保金から税引き前利益に変更

今般の税制改正で、課税対象項目も変更された。これまでの課税対象は内部留保金の一部だったが、2017/2018年度からは課税対象が当該会計年度の税引き前利益となる。よって、法人税と同じ金額を基に算定される。これに伴い、本税の名称は「未配当の剰余金に対する税金」から「未配当の利益に対する税金(Tax on Undistributed Profit)」に変更された。

内部留保税が導入された当初、当地日系企業は同税に対して大きな懸念を示し、政府に対して撤廃を提案した。日系企業が反対した第1の理由は、2016/2017年度までの内部留保税の課税対象は、法人税など全ての税金を納付した後に留保された資金であり、二重に課税される結果になるからだ。その問題は今回の改正により、解消されることとなる。

第2の理由は、内部留保には設備投資のための資金が計上されており、もし課税されれば投資計画に大きな影響を及ぼすからだ。特に自動車産業のように、メーカーが再投資を繰り返して成長していく業種の場合、中長期的な投資計画は重要になる。企業が成長しなければ、産業や市場全体の拡大も阻害される。今回の改正により、内部留保に直接課税されることはなくなった。

税率を7.5%に引き下げて法人税に上乗せ

一方、内部留保税率の税率は10%から7.5%に引き下げられた。同税の納付義務が発生する事業体は、税引き前利益に対して法人税率(30%)との合計37.5%を納税する必要がある。

なお、前年度までと課税対象項目などが大きく異なることから、前年度までの内部留保税は撤廃され、全く新しい税制が導入された、と考える専門家もいる。税制が改正されてから日が浅く、今後の対応などについて日系企業の意見がまとまっているわけではないが、同税を引き続き問題視して撤廃や軽減などの減免処置を提案する企業や、免税条件を満たすよう配当性向を高める企業などがみられる。

(久木治)

(パキスタン)

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