スタッフとトップマネジメントの離職率が上昇-第11回賃金実態調査(2)-

(インド)

ニューデリー発

2017年08月01日

インド日本商工会(JCCII)とジェトロが実施した「第11回賃金実態調査」報告の後編。スタッフとトップマネジメントの離職率が前年を上回った。各社とも昇給や昇格、さらには業績給の導入などを通じ、従業員のつなぎ留めに必死になっている。採用では日系よりも地場系の人材紹介会社を重用している企業が多いことが分かった。

エンジニアとワーカーの離職率は低下

2016年実績の離職率を職位別にみると、トップマネジメント(部長級以上)が2.8%、管理職(課長、係長級)が6.6%、スタッフ(セールス担当者、秘書、受付、事務員)が11.5%、エンジニアが7.0%、ワーカーが8.0%となった(表1参照)。他社との接点が多いセールス担当者を含むスタッフは例年、他の職位に比べ離職率が高くなる傾向があるが、2016年は前年実績の10.2%よりさらに上昇した。トップマネジメントの離職率も前年実績の1.3%から2.8%に上昇している。一方、エンジンニアとワーカーについては、前年実績に比べわずかに低下した。

表1 職位別の離職率

昇格や昇給などでモチベーション維持向上図る

離職率が高止まる中、従業員のモチベーション維持向上を目的とした施策として重視する項目(上位3つ)を聞いた設問では、「昇格」「昇給」が圧倒的多数を占めたほか、「業績給の導入」「キャリアパスの提示」「表彰制度」なども挙げられた。

業績給の導入状況については、「導入済み」(35.9%)が最も多く、「現時点で未導入だが、検討している」(31.1%)を含めると、回答日系企業の3分の2強が業績給を導入済みまたは検討中という結果になり、関心度の高さがうかがえた。導入済み企業の業績反映対象は、「賞与」が48.1%、「給与」が43.3%、「その他」が8.6%で、俸給総額に対する業績給の配分割合は、管理職、非管理職ともに7割以上の企業が「20%以下」という結果になった。

福利厚生制度について、スタッフ向けに最も普及しているのは「有給休暇」(88.2%)で、「医療保険」(76.4%)、「携帯電話支給」(64.9%)、「通勤費支給・補助」(64.3%)、「医療費支給・補助」(52.8%)などがこれに続いた。

職位別にみると、ワーカー向けはトップが「有給休暇」(87.9%)で、続いて「医療保険」(80.8%)、「通勤車・バス手配」(76.8%)、「食事手当」(64.6%)、「医療費支給・補助」(52.5%)となった。そのほか、「住宅手当」や「社員寮」「住宅ローン・利子補給」など、従業員の住居面をサポートする福利厚生制度を有している企業も数多く見受けられた。

採用手段の多様化が進み、教育機関と連携も

採用手段では、トップマネジメント、管理職、スタッフ、エンジニア、ワーカーのいずれの職位においても「地場の人材紹介会社」を活用している割合が最多となった(表2参照)。そのほかでは、トップマネジメント、管理職、スタッフの採用については「日系の人材紹介会社」や「口コミ」「インターネット」が多く活用されている。一方、エンジニアとワーカーの採用については、「日系の人材紹介会社」の割合が比較的低く、新聞や雑誌などの「求人広告」が活用されている。また、将来有望なエンジニアやワーカーを確保するため「大学・高専」などの教育機関と連携して採用活動を行う企業も多く、ワーカーの採用には「職業訓練校」の活用も進んでいる。

 表2 職位別の採用手段

日本人駐在員の増減を聞いた設問では、各社の従業員に占める日本人駐在員の平均割合は12.1%と前年実績の12.6%から微減だった。一方、2017年の日本人駐在員増減の方針をみると、「変更なし」と回答した企業が66.2%に上り、「増加」の割合は22.6%(前年実績25.8%)と、「減少」の11.2%(前年実績14.0%)を上回る結果となった。

(山本直毅)

(インド)

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